二十五話 紅い世界の戦い
「潰せ潰せッ! 同胞よ、恐怖を思い知らせてやれぇい!!」
ヴァンパさんの声に、コウモリが一斉にエルフを襲う。
体を押し倒し、装備を砕き、腐った肉を食いちぎる。
悲鳴など上げられない。一瞬にしてエルフは殺された。
コウモリが消える。
ヴァンパさんはふらついたと思うと、地面に落ちてきた。
慌ててキャッチ。力を使いすぎたようで眠っていた。
「呆気ないな、なんか……」
でも倒してくれたんだ。
ヴァンパさんにお礼を言おうとしたけど、気になって振り返る。
「負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた……また負けたああああああぁぁぁぁ!!!!」
五体満足のエルフが、奇声を上げながら地団駄を踏んでいた。
「嘘、だろ」
コウモリが、殺したのに。どうして生きてるんだ……!
「やっぱりそうだ似合わないんだ戦いはだからこんな場所を選んだのにどうして! どうして王であるのに殺されるんだああああああッッ!!!!」
体をくねらせて叫ぶと、突然俺に本の表紙を見せる。
目が開く。ギロリと睨まれた。
少しして目が閉じる。
「やっぱりそうだったか、そうだったかそうだったか……。ヨイヤミ! お前は愛されていていいなぁ~。だ、か、ら! お前は殺さない」
エルフはゲートを開くと中に消えた。
「なんだったんだ、あいつ」
俺はそんなことしか言えなかった。
紅い空も元通りになり、イアさんがヴァンパさんを介抱してくれるので俺の出番は終わった。
お礼としてイアさんが転移で家まで送ってくれた。
レイルの部屋に入る。
起きてた。ベッドに座って足をぶらぶらさせていた。
「今までどこほっつき歩いてたぴょん」
「吸血族のとこだけど」
「……」
俺の腕をぐいと引っ張って無理矢理横に座らせた。
「寂しかった」
「ごめん」
「……バカ」
レイルの頭をポンポンする。
レイルは嫌がらなかった。
珍しいからもっとポンポンする。
それでも嫌がらずに受け入れていた。
ご飯を食べてお風呂に入ってゆっくり寝よう。
ファルンもヨイトも、大丈夫だ。きっと大丈夫だ。
無人の屋敷。ファルンとヨイトがベッドで寝かせられていた。
佇むのは影。影は闇に溶けるように姿を消した。
二日後。ファルンとヨイトはギルド本部の精兵部隊に発見。保護された。
誰が運んだのか、治療したのかは定かでない。
ヨイヤミ達に無事が報告されるまで、更に二日要したのだった。




