二十四話 紅夜の吸血鬼
「……」
変わらない風景。血とホコリの匂いが鼻をつく。
家に戻ろうとすると、建物の陰から女の子がひょっこり顔を出していた。
俺はすぐさま駆け寄る。
「どうした?」
「…………」
女の子は無言で俺の腕を掴んで引き寄せる。
「こっち」
俺の手を引いて走り出す。普通逆じゃね?
ハイネストから離れた場所の建物に入ると、コウモリが女の子に集まる。
ヴァンパさんが姿を見せた。
「遊びたくて様子を見に来たのじゃが、何なのだこれは」
「俺の方が聞きたいですよ」
ヴァンパさんは腕組みをして壁に寄りかかる。
「仲間は?」
「レイルは家に。二人はどこ行ったのかわからなくて…………」
通信魔法を使うヴァンパさん。レイルの様子をチェックした。
「ちゃんと寝とるぞ、あのウサギ。しばらく借りても大丈夫じゃな」
ヴァンパさんの足元に魔法陣が現れる。俺の手を掴むと、一瞬にしてかき消えた。
「緊急事態じゃ。今からわらわ達の戦場を作る」
ヴァンパさんの口調が変わり、イアさんにそう告げる。
イアさんは城の外で何やら準備を始めた。
俺は黙って立っていたが、モンスターとは違う気配を感じて外に出る。
「ゴブリン……?」
黒いゴブリンの群れが城に近づいている。
「ヨイヤミ。一人で我らを守れ。男ならばそれくらいの覚悟と技量を見せてみろ!」
イアさんの激励に身を引き締める。
槍を取り出し、電撃を纏わせ打ち出す。
「サンダーボルト!」
群れに当たり吹き飛ばす。
槍を半分に折って二刀流にする。飛び込んで二匹斬る。
「アイスボンバー!」
氷の塊を打ち出して頭を潰す。右に炎、左に雷、大気に残る氷を混ぜ合わせる。
「トライアングルスマッシュ!」
回転斬り。群れを一掃。
「…………」
イアさんを見ると、頬が緩んでいた。
イアさんは城に戻る。
俺も戻ろうと思ったその時
「やるなぁ~。さすがは闇のお方が認めるだけある」
奥から男の声が響く。
「力を得たから世界を滅ぼすなんてどうでもいいんだ。ただ復讐がしたいだけなんだよなぁ~……」
分厚い本で煙をはらいながら千鳥足で現れたエルフ。体の腐りを補うように装備がつけられているのが見て取れる。
「カイルズはここにいないよなー。まあいいや。傲慢だから油断して負けると思うと痛い目に遭うかもなぁ~」
俺の前に立つと、俺を指差して宣戦布告する。
「お前、殺してやるよ」
「そうはいかんな」
振り向くとヴァンパさんが城の頂上に立っていた。
「ここは我らの世界。人を襲うことをせん良識ある吸血族の住処を潰されるわけにはいかんのじゃ」
ヴァンパさんは両手を広げ、唱えた。
「紅夜の世界」
赤い空が広がる。ハイネストも、エルフの里も覆っていく。
「同胞よ、姿を見せい」
城の壁に赤い目が光る。
「我らは夜を統べる。世界に闇がある限り、我らは永遠」
木々に、大地に、赤い目が映る。
「夜の帳を始めよう」
大量のコウモリが人の形になる。
「わらわは紅夜の吸血鬼、ヴァンパ。宴じゃ宴じゃ……、戦いじゃああああああ!!」
コウモリがズラリと並ぶ。
エルフは気だるそうにコウモリを見て、笑う。
「ヒヒッ。ああいいねぇ…………殺ろうか」




