十九話 裸の付き合い
やばいやばいやばい。
心臓の高鳴りが抑えられない。ここで死ぬんだ。
「ヨイヤミくーん…………」
重圧。声のトーンは同じなのに、マレインさんが怖く感じる。神様、許してください……!
「一緒に入ろう?」
「…………え?」
というわけで。マレインさんとお風呂に入っています。向かい合わせになっています。
「なんか疲れたでしょ。ヨイヤミくんの肌汚れてるー」
「そう、ですか」
マレインさんが俺の頬を指でつつく。
上機嫌のマレインさんは俺がまじまじと見ていることに気づいてない。鼻歌を歌っている。
細く整ったスタイル。Fカップくらいの大きさの胸。マレインさん、タイプです……!
「鼻の下伸びてる。さては変態だなー、もー!」
マレインさんが俺の頬をぐりぐりしてきた。そうされている内に、大切な部分の様子がおかしくなった。
それに気づいたマレインさんは笑顔でこう言った。
「男の子だねぇ……」
「ふーん。そんなことしてきたんだー」
今日一日の出来事をマレインさんに話す。ちなみにマレインさんが体を洗ってくれている。
「まさか今日だけで三人会うなんて」
「だよねー。お互いのことは知らないんだけどさ、偶然ってあるんだ」
ところでマレインさんはどうして俺の家がわかったのだろう。
「マーメイド族はね、人魚族だったんだ」
「同じじゃないんですか? 人魚も、マーメイドも」
「二十年前、リネールが滅んだのをきっかけにして大戦が勃発したの。多数の種族が死んで、生活も何もかもガラリと変わった。生き残った種族は進化しようとしたけど……失敗した」
後ろ向いてーと言われるがまま後ろを向く。体全体を洗ってくれるのか?
「あの、マレインさん」
「進化しようと無理した結果、また種族が減った。人魚族からマーメイド族への進化は唯一の成功例なの」
マレインさんがシャワーで俺の体を流していく。
「進化したことで水に入らなくても生活できるようになった。けど、しばらく入らないとおかしくなるからそこは一緒かなー」
前置きが長くなったね、と言いつつ俺の質問に答えを出す。
「水が教えてくれたんだ」
マーメイド族になったから、なのか? パッとしない。とりあえず湯船に浸かれと促すマレインさん。
また向かい合わせになる。
「水滴を一つ垂らせば導いてくれる。人魚族からあり得ないくらい進化したのがマーメイド族なんだ」
「そう、ですか」
恥ずかしい。直視できない。健全な心が悲鳴を上げているっ……!
「ではヨイヤミくん。君が洗う番だ」
唾をごくりと飲む。
やらせていただきます。
「さっぱりしたね」
「そうですね」
マレインさんと一緒に風呂場を出ると、いい匂いが鼻をつく。
ファルンが作った料理が並んでいた。
「美味しそうだねー」
いつの間にか着替えていたマレインさんが席に座る。
「泊まるんですか?」
「うん。泊っていくよ」
……WOW。ビッグサプライズだ。
俺も席に座る。すると、レイルが俺の耳元で言った。
「クソ男」
「え」
レイルの言葉の意味がわからず聞き返そうとするも、既に料理を食べ始めていた。ヨイトも俺を見てニコニコしている。
ファルンの食べないのかという冷ややかな視線が、俺を食事に引き戻した。
「俺、部屋ないんですよ」
「そうなの? 二人で寝ましょー」
自分の部屋がないことを伝えると、レイル達がよく使うベッドにダイブするマレインさん。
なんかこう……、うん。可愛い。
「ヨイヤミくんもおいでー」
ベッドに上がる。毛布をかけて、俺達はそのまま眠りについた。
翌朝。マレインさんが俺の腕を掴んで離さなかったせいで、レイル達にあらぬ誤解をされてしまったのだった。




