十五話 魔法女王
逃げ惑うエルフ達をかき分けながらシェルさんに追いつく。スズメバチのような大型のモンスターが暴れている。
「下がっていろ」
シェルさんの言う通りに下がる。すると、俺を水色の膜が包み込んだ。
「これは?」
「防御壁だ。戦えるか?」
……わからない。でも、逃げたくない。
「戦えます!」
「わかった。アレは私がやる。お前は皆を安全な場所に送り届けてくれ」
力強く頷き反対方向へ駆け出す。俺の動きをモンスターが見逃すはずなく、小さいハチを飛ばす音が聞こえた。
「皆こっちだ!」
逃げ遅れたエルフ達を誘導する。残り一人になった時、ハチの群れに追いつかれた。エルフの少年は怯えて俺の後ろに隠れる。
ハチの一体が針を飛ばすが、防御壁に当たり地面に落ちる。行ける!
「はあっ!」
いつの間にか持っていた剣でハチを斬る。集団の動きが手に取るようにわかる。攻撃を避け、少年も守りながらハチの集団を蹴散らした。
「もう大丈夫だ」
「ありがとうお兄ちゃん!」
少年は礼を言うと森の奥へ逃げた。シェルさんの加勢をしよう。
「アイアンストーン」
シェルさんの声が聞こえ、ハチに隕石が降りそそいでいるのが遠目でもわかる。
「シェルさん!」
「終わったか」
「はい」
「あの針が弱点だ。そこ以外はあまり攻撃が通らない」
シェルさんはこんな少しの時間でも相手の弱点を見つけていた。
「ボルゲーノファイア」
ハチの目の前で大きな炎がちらついた。動揺したのか、俺に突っ込んでくる。
「瞬閃」
頭に出て来た言葉を言って剣を振り下ろす。ハチは旋回してシェルさんに向かうが、途中で真っ二つに切れて墜落した。
「…………」
戦えた。今までのが嘘みたいに。でもどうして? いや、今は気にしないでおこう。
「シェルさん、大丈夫ですか」
「ああ、大丈夫だ……」
声が弱々しくなり、俺の顔から目を逸らす。戦う時は大丈夫なのか……。シェルさんに戻りましょうと促す。
猛スピードで去っていくシェルさん。また慌てて後を追いかけた。
「シェルさん……ちょっと、速いですって」
「ごめん」
謝るシェルさん。家から丁度ヨイト達も出て来た。
「俺達もう帰るんで」
「また来てくれ。今度は料理でも作ろう」
反対を向いていても見送りはしてくれる。シェルさんってやっぱ……。
「ヨイヤミー、帰るよー」
レイルの声に返事する。改めてシェルさんとカイルズさんにお礼を言うと、エルフの里を後にした。
どうやら大量のお菓子をもらったようで、ヨイトとファルンは仕分けに苦労していた。
レイルは食べればいいと言っていたがファルンはそんなことを許すわけなく、お昼が出来るまで拘束される羽目になった。
「男衆。拘束を解くのだ」
「わかんないよ俺は」
「妙な術だ。僕もわからない」
俺は普通にわからないのに。やっぱりすごいなヨイトって。
チャイムが鳴った。ヨイトが出ようとしたが俺が出る。
「どちら様で」
「貴様がヨイヤミだな」
小さい女の子がいた。そうだけど、と言うと女の子は手紙を渡して来た。
「よく読んでおくのじゃぞ」
そう言うと女の子はワープするように消えた。…………じゃぞ?
「まさか」
手紙を見る。
決闘を申し込む。明日の好きな時間に来い。のじゃ。 吸血族代表より
俺は受け取ったことを激しく後悔した。




