ライバル
いっそ全て壊して仕舞おうとした時、ようやく自分の周りには何もなかったことを思い出す。
「用意はいいか?」
「さっさとやれよ、相変わらずチキンな野郎だ。」
いよいよ、俺達は「鬼」を初めて見る事になる。この口の悪い、いや悪いのは口だけじゃないが、主任憑鬼祓いに憑く、「鬼」をいまから現出させる。幸い、俺の言霊はこちらの意志で現出もその逆もコントロールできる…筈だが、何しろ初めての相手だ、うまくいくとも限らない。最悪の場合、2人ともやられる可能性もある。
「行くぜ!」
「諄い!行け!」
「照らせ、現せ、破城の燈…在」
眩い閃光とともに、そこには、想像以上の「鬼」が。
禍々しい、凶々しいそのオーラ。1等級以上??確かに間違ってはいない、しかし1等級と比べるには蟻と象を比べるよりも、はっきりと違う。本能的に俺は言霊を解除した…筈だが、解除できない。相手のチカラなのか、なんなのか、もうやるしかない。主任憑鬼祓いは当然意識を失っている状態だ。……やってやるよ。
竦む脚、しかし動けないわけじゃない。それにこの感じ、この感じ………………まさか、まさか、まさか、まさか、あの時の…全く同じとは言わない。個体は違うんだろう。しかし、やっと見つけたぞ。見つけたぞ、見つけたぞ、見つけたぞ、見つけたぞぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!。
「うぉォォ!」
「参ぜよ、重ねよ、忘却の武士…圧」
超重力が「鬼」を圧殺すべくチカラを凝縮する。
「ふははっ…」
……笑った?このクソ鬼が…
「媚びよ、平伏せ、虚空の塔…壊」
ぐぅぅ、身体も、何もかもがバラバラになりそうだぜ、死の一歩手前だ。しかし、勝ったぜ、ギリギリだけどな。
「媚びよ、…」
「よせよ、一発で俺を仕留められなかったなら、終わりだ。惜しかったな。」
行くぜ?
「媚びよ、平伏せ、虚空の塔…壊」
「アガがガガガが…アガがガガガがががががががががががあ」
ふう、やれやれ今ならできるな。
「解除」すると鬼は、主任憑鬼祓いの中に戻っていく。
やれやれ、危なかったぜ。全く‥‥『ゴツッ!!!』
俺は拳骨で、ヤツの顔面に一発入れた、うん。八つ当たりだ。
「グァっ!?な、なんだ、まるで殴られたような衝撃だぜ⁉︎……おい、勝ったのか?」
「ああ、勝ったのかな?けど殺し切れず、お前の中に戻したよ。」
「そうか。勝ったか。…にしても、顔面がやたらと痛むんだが?」
「そうか?後遺症じゃないかな、うん。とにかくお前に憑いてる「鬼」は見たぜ。あんなのが際限なくでたらお前の言う通り終わりだな。」
まだ鼻をさすりながら主任憑鬼祓いは、続ける。
「とにかく、部長補佐官殿に今後の計画について相談に行くか。現状は概ね把握できたからな。」
行くか。




