告知
分かりきっていても抗えず、不意をうたれて、また倒れるのだろう。次はない。
「お前にさ、『鬼』って憑いてるらしいぜ?知ってたか?」俺は主任憑鬼祓いにポップな感じで聞いてみる。
「…まさかとは思っていたが、そこまで脳味噌が腐っていやがったとは、お気の毒にな。せいぜいお大事にしてくれよ。」
「まあ、そう言うと思っていたけどな。お前の十八番の言霊って、どう考えても『黒』系統だろ?」
「ッ!、そ、そんな事はあるまい。」
「『唸れ、叫べ、死人の洞穴…滅』完全にそうじゃねぇか。逆に今までよく誰にも言われなかったもんだぜ。」
「だったら、どうだというのだ!」
「だから言ってるだろ?『黒』の系統の言霊は憑鬼達が使う言霊で、憑鬼修羅より上級の憑鬼が使う言霊なんだって。」
「口から出まかせをペラペラと五月蝿いやつだな。じゃあお前は、憑鬼修羅、憑鬼王、皇帝憑鬼とやり合ったとき、一度でも俺の言霊を使うヤツらを見たことあんのか?おい?」
「ない。全くない。お前以外には全く。……だからこそ今まで誰にも触れられて来なかったんだな。」
「しつこいな、中華料理かテメェは?」
「あっ、そういうのいらないんで…」
「…やっぱり、今日中にあの世に送ってやるよ…」
「良い加減に話を、聞けよ。お前は『鬼』と戦ったことはあるのか?」
「ない。あるわけがない。1等級を超える存在の憑鬼なんて実感がわかないぜ。もし居たとしても、何匹もいないだろうぜ。そんなのが際限なく現れたら、1000年前に俺たちの先祖サマが勝てなかったろうよ。」
「はい、ご名答!『鬼』は現在5匹しか確認できてないそうです!その内の1匹がめでたく君に憑いているのです!本庁では周知の事実らしいよ。」
「な…んだと…?」
だいぶショックを受けているみたいだな。ちょっとだけ同情するな。
「あっ、でも、先輩も同じらしいぜ?」
「!!!えっ!?そうなのか?ほう、ほう、なるほど、選ばれし者ということなのなら、それはそれでいいかもしれん。いや。いい!」
よかった、なんか知らんが前向きに捉えてくれたようだ。しばらくは俺もその5人の内の1人だとは言わないでおこう。
…… そんなのが際限なく現れたら、1000年前に俺たちの先祖サマが勝てなかったろうよ……アイツの言葉が、俺の中の警報を、鳴らす。
皇帝憑鬼は1200匹。鬼は現状5匹だが、もし、もしもだが鬼も際限なくとは言わずとも1200匹居たとしたら、どうにもできない。
…だが、先輩は鬼も含めて滅ぼすのではなく「それは不自然な調和です。私が言うのは、憑鬼達の権利や気持ちも全て込みで調和をするべきだと考えています。」と言っていた。やはり、引っかかる。5匹しか見つかっていないってのもあくまで、先輩達が言っているのを聞いただけだ。5匹でなく1200匹だったら、というより5匹の時点で、俺達人間は負ける、5匹ともが憑鬼側だったなら。




