古東組織委員会にて
世界の終焉。そんなに遠いわけではない。あなたの終わりは、世界の終わり。
「ようやく妙な動きを見せている者たちの情報が入ってきたようです。」メガネをかけ、如何にも仕事が出来そうな佇まいをした男が話す。古東組織委員会総務部長だ。
「ふむ。早かったのか遅かったのか、それが分かるのはこれからだからね。まあ、よしとしようかね。」こちらは、古東国の事実上のトップ、内閣統括大臣。かなりの高齢であることは分かっているが女性だけに正確な年齢は公にはなっていない。
「今後は、指導部でヤツらを監視し場合によっては処分いたします。」古東組織委員会指導部長である筋骨隆々の男がその相貌に似つかわしくない丁寧で落ち着いた口調で話す。
「ところで、例の計画の進捗を聞かせて貰おうか。」
「はっ。私の補佐官からの報告によれば、9割以上の憑鬼を各所精神世界に隔離、同割合の保護者、児童、憑鬼祓いを多魔の精神世界に保護完了しました。また実験区域、相王子、街舵においては憑鬼祓いによる対応実験遂行中とのことです。」
「む…そうかい。ならば順次、継続で頼むよ。」
「はっ」
誇らしげに報告する指導部長とは対照的に総務部長であるメガネの男は思案を巡らす…あまりにも順調すぎる。また街舵の主任憑鬼祓いの動きの不自然さ。それより何よりも、上には報告を省いた件…相王子にいる筈の自分の元部下の動向が最も気にかかる…指導部には通さず、総務部だけで少し調べてみるか………拭いきれない不安に総務部長は冷静に対処を試みる…あの男がもし、いや…脳裏に浮かぶのは元部下の過去の姿、自分では、いや他の誰であれ、御しきれないだろうあの狂乱怒涛のあの男の姿だ。




