鬼が憑くということは
何にでも変われるなら、きっと本当の自分を見失うはずだ。
やれやれ、やれやれだぜ。
何が悲しくて今まで、仇の様に打ち滅ぼしてきた憑鬼と俺が融合してるとは。やれやれだぜ。
「キミ。そもそも融合という言い方は、どちらかと言えば仮の言葉だと思ってください。単純に言えば、キミは憑鬼に憑かれている状態と言う事になります。」
相変わらずだぜ、この先輩は。丁寧に傷口に塩を塗り込んでくる。
「先輩。だからそれが嫌だと言ってるんですよ。」
「何故です?」
「いえ、やっぱりいいです。すんませんでした。」このやり取りになったら諦めるしかないのだ。
「アドバイスになるか分かりませんが、我々憑鬼祓いも、憑鬼の等級が上がれば上がる程、祓うのは難しくなるでしょう?皇帝憑鬼ともなれば、校長クラスが複数人で祓うのが一般的です。つまり、祓えなかったんですよ、我々に憑いた『鬼』を今まで。人間でも精神的に強い者は、憑鬼が憑いていても、その支配から自然に脱却し、憑鬼の能力を有したまま人間として暮らしているんです。一般的な人間とは隔絶した能力をもったままね。例えば、プロスポーツ選手なり、棋士なり、天才的だと言われている人間には、ほとんど憑鬼が憑いています。いろんな特性をもつ憑鬼達ですから、どんな能力になるかは選べませんが、少なくとも、憑鬼の精神的支配を受けずにいられる時点で特別とも言えますがね。参考になりましたか?」
珍しく多弁になった先輩。少しは、心配してくれているようだ。
「ええ、もちろんです。因みに覚えていらっしゃいますか、キミの学校のNo.4のことを。」
「ええ、爺さんですね、ていうか、サラッと人の考えを読み取らないでほしいですが。」
「彼は、憑鬼王ランクを自分から憑けたんです。しかし、半分以上人格を乗っ取られてしまってね。残念でした。」
なるほど、先輩と話すと今まで全然気が付かなかったことすら、当たり前のように理解できる…これは昔からだな。




