黒幕
仮にこの世の全てに意味があるとして、仮にその全てを知ったとして、仮にその全てを壊したとしても、結末は変わらない。そう、何一つだ。
「沈め、潰れよ、鎮魂の宴ー呪」
予想外の言霊を発する。
言霊にも、種類があり、効果や威力も様々だが、系統として、一般の憑鬼祓いが使わない「黒」の系統の言霊がある。
いま、この主幹が放ったのはまさに、その「黒」の系統。簡単に言うと言霊は、自身の心を反映するもの。つまり「黒」の言霊を使う時点で、普通の憑鬼祓いではなくなったということになる。
気が楽だよ、全く。30年以上にわたって、相王子の子供達を守り続けた目の前の元主幹に対して、やはり多少の躊躇があったのは事実だ。
しかし、もう目の前で、喚いているのは、元のじいさんではない。俺は、ゆっくりと言霊を紡ぎ出す。
「沈め、潰れよ、鎮魂の宴…
「な、な、な、な、なんたることか、これは前のような冗談では済まんぞ!まあよいわ!これで貴様も、こちら側、あの方も、さぞお喜びになり、またワシの評価も上がろうというもの……」
「少し黙れよお前。もうお前は俺の部下でもなんでもねぇんだ。」
…呪」
「イギャァァァァ〜なんだこれはなんだこれは…ギギギギギャ…」
「消え失せろ」
「お見事です、副校長先生。」先に行ったはずの3人がそこにはいた。不甲斐ない上司を案じて戻ってきたようだ。
「副校長先生の、能力のヒトツ「上位複写」相変わらずエゲツないですね。一度目にした相手の技を完全再現するだけでなく、上位つまり相手より一段階以上能力を増すか、加えるかした技として使う、チート級の能力ですね。」
「お褒めにあずかり光栄だがよ、相手がめちゃくちゃ弱い場合には、本当に泣きたくなる能力とも言える。ま、俺の持っている能力のうち、使い勝手は普通の方だけどな。というか、何度も言うが俺が言霊やら能力をいくつも使えることはここだけの話だぜ、ロクなことにならないんだからよ。」
「詠唱せずに言霊を使えることも普通じゃないですけどね」と養護教諭がさらに余計なことを言う。
さ、先に進むぜ。次は那蛾山だ。




