表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TRJ〜教師の本当の仕事  作者: おみき
第1章 日常から非日常へ
17/67

多魔

愛の形は知らないが、それが存在しないことは知っている。

中規模。比較的新しく出来た街、多魔。俺が、本庁を辞めた直後に赴任した街でもある。


新しく、中規模、しかしながら、複雑怪奇、今でも原因不明の事件や、事故が絶えない魔都。


俺は何かあるのなら、この街、多魔にあると踏んでいた。


ハッキリ言って俺はこの街が嫌いだ。油断ならないこの空気、相変わらず気が滅入るぜ。


部下達が気を遣って「ここは我々だけで、情報収集に参ります。」そう申し出てくれた。養護教諭は1人、俺の側に付くと言う。


養護教諭は、特に俺の過去を深く知っているからな。


「いや、有難いが、そういうわけにもいかん。もちろん君たちなら大丈夫だとは思うが。嫌な予感がするのだよ。」

俺は、極力冷静に伝わるよう努めてビジネスライクに伝えてみたものの、3人には無理しているようにしか見えなかっただろう。しかし3人は、俺の指示に従ってくれた。


この多魔は、地区内に3つの中心街がある。しかしながら

その1つ1つが公共交通機関で直接つながっておらず、行くなら徒歩か自転車となる。ちなみに我々教師は車通勤は基本的に禁じられている。


それ程大きくない街に3つもの中心街をもち、それぞれが連携が取れていない。ますます、よくわからない街だよ。


まずは第一の中心街、多魔中央(たませんたー)に行ってみるか。続いて、那蛾山(ながやま)、そして最後に聖蹟(せいせき)へ。


懐かしいはずだが、ちっとも感傷の情が湧かない。やれやれだぜ。………うむ、どうやら当たりだ。この気配。どうやら無事だったようだ、残念ながら。


「副校長!よくきたな。」すでに呼び方に敬意すら消えたか。「爺さん、生きていたんですね。別に、来たくて来たわけじゃありませんよ」何故だろう、俺はこの主幹と関わるのが特に面倒くさく感じてしまう。上司としてはいけないね、反省反省と。


「ここは俺1人でやらせてくれ。ちなみにもうわかってしまったが、あとの2つの中心街に、教諭の同期2人がいるだろうな。」

「ういっす。そいつらは俺に任せて下さい。主任にも手伝ってもらいやすから。」


「おまえね、そういう時は1人で行きますって言ってから、俺が1人じゃ無理だ、俺も行こうってなるところだろうが!」


「すんません、面倒だったんで、端折りました。よろしくお願いします!」


「ふう、大物になるよ、お前は。」


「あざっす!」


「養護教諭、すまないが2人について行ってくれないか?」


「しかし、それでは…」


「すまない。でも、そろそろ吹っ切りたいとも思ってるんだよ。もしもの時は頼むよ」


「…わかりました。でも必ずですよ。前みたいな事、私絶対に嫌ですからね。」


「ああ、わかってるよ。ありがとう……と久しぶりに養護教諭の本当の名前を呼ぶ。」


「…………行きます……。」


あ〜あ、また女を泣かせちまったよ。やれやれ。


さて、いくかね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ