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ファンタスティック・ツアー3210  作者: ヒロっぴ
時の彼方へ
17/19

梅鉢紋様








『前田殿~。』




街道を歩いていると、後ろから声をかけられた。




反射的に全員が振り向くと、走りながら声をかけてきた武家らしき男が、『ややっ!』と声をあげてぎょっとしたように立ち止まった。




どうやら、先程交換した陣羽織を着ているロジャーさんに声をかけたらしいのだが、振り返ったロジャーさんが黒人だったので、驚いたようだった。




『ま、前田殿は異国から養子に来られたのか!』




この人は一体何を言ってるんだろう?





そう思っていると、レイコさんが冷静に対応した。





『なぜ彼を前田殿と?』




『その梅鉢紋様は前田家の家紋。利久殿が養子を迎えられたと聞いて、てっきり……』




『いえいえ、この者は確かに異国の者で、前田様ではありませんが、ひょっとして、先程の方がその前田様では?』




この時代の人に話しかけられて、レイコさんの口調はすっかりこの時代のものになっていた。






『先程の方というのは?……』




『先程この服を着ていた方が、この者が着ていた異国の装束を大変気に入った模様で、交換してくれと……』





『なんと!

武家の陣羽織をやすやすと……』




その人は驚きの声をあげた後、



『……豪胆なんだか、ただの阿呆か……計り知れぬお人のようだ……』




そう言って首を振った。





『いや、済まなかった。そちらの異国の方も、その陣羽織、大切にして下され。』





『はい。大切にします。』




ロジャーが流暢な日本語で話すと、その男は『なんと!』と驚いていたが、すぐに気を取り直すと、『では、後免!』と一礼してそそくさと去っていった。




みんなでそれを見送った後、雅はロジャーに向き直ると、




『ロジャーさん、良かったね。それ、かなり貴重なもんみたいだよ。』




と言って笑った。




それを受けてロジャーさんも嬉しそうに笑うと、『そうですね。』と言った後、



『レイコさん、あの人誰なんですかね?』



と聞いた。




『ちょっと待ってね……』





レイコさんは空間に操作パネルを表示させると、何やら操作して目を閉じた。





『この年には、荒子城の前田利久という人の元に、利益って人が養子に入ってるわね。』



どうやら、目を閉じたレイコさんには何かが見えているらしい。




『前田利益?聞いたことないですね。』




『他にも利貞、利太とか色々名前があったみたいね……あら、20世紀には漫画や小説の影響で人気があり、前田慶次という名前で知られている。ですって。』





『前田慶次!』





俺は思わず声を上げていた。




『やっぱり知ってるの?』





『勿論知ってますよ。傾奇者の前田慶次。……あの人が……サインもらっときゃ良かった。』




『サインはないでしょ。』





レイコさんはそう言って笑った。





『そんなにすごい人なんですか?』




ロジャーさんがそう言って目を輝かせていた。





『いいなぁ。』





ケントさんとパンダさんが、ますます羨ましそうな視線を送っていた。





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