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ファンタスティック・ツアー3210  作者: ヒロっぴ
時の彼方へ
11/19

強制移動






          ー1ー



歩き始めてからふと振り返るとバスか無くなっていた。



『あれ?』




俺が不思議そうな顔をしていると雅が『どうしたの?』と言った。





『バスが無いんだけど……』




『あれ?ほんとだ?』




『ちゃんとあるわよ。』




レイコさんがそう言って腕時計をさわると、空間に操作パネルが映し出された。




そのパネルを操作すると、さっきバスがあった場所の上空にバスが現れた。


宙に浮いているのに音もしない。




『あそこにあるんだけど、見えないようにしてるだけ。』




そう言ってまた操作パネルをさわると、見えなくなった。




『さぁ、お団子お団子♪』




レイコさんがそう言って歩き出すと、雅も『お団子お団子♪』と言いながら着いていった。







しばらく歩くと街道に出た。



『わぁ!』




雅が感嘆の声をあげる。





今の東京では見られない光景。




舗装されていない街道に遠くまで見渡せる風景。




『水戸黄門でも歩いてそうだな。』




俺がそういうと、雅もウンウンと頷く。




『ミトコウモンて何?』




レイコさんが不思議そうな顔をした。




『えーと……俺達の時代の有名な時代劇で、水戸光國が世直ししながら日本各地を回るやつです。』




『水戸光國?』



『徳川光國かな?』




『でも、時代が違うんじゃない?』




『そうですね……』





レイコさんとは未来の技術のお陰で普通に話せるが、やはり千年も未来の人だから、色々と噛み合わないことも多い。




『こっちね。』




レイコさんは自信満々で歩き始めた。




『なんでそっちだって分かるんですか?』




『これよ。』





レイコさんはそう言って首筋のアクセサリーを指差した。




『私の目には今、色んな情報が写ってるの。』




『ナビみたいなもんですか?』




『そうね。』





レイコさんは楽しそうに笑った。




きっと俺達がいちいち驚くから楽しいのだろう。





しばらく歩くと寺院の門前にある茶店が見えてきた。




『あれ?街道の茶店じゃ無かったんですか?』



『この時代はまだ街道の茶店は少ないのよ。これから街道もどんどん整備されてくから、江戸時代中期にかけて街道の茶店も増えてくみたいね。』




『詳しいですね。』





俺がそういうと、レイコさんはウインクしながらまた首筋のアクセサリーを指差した。




はぁ、ホントになんでも出来るんだな。





俺はため息を着いた。





雅は、そんなことどうでもいいというように『お団子♪お団子♪』と目を輝かせて、茶店を見つめていた。




『いらっしゃーい!』




茶店に入ると、元気な娘が迎えてくれた。




雅はキョロキョロと店内を見渡して、



『これが喫茶店の原点だね。』




と言った。




『俺達の仕事の原点てことかぁ。』




俺も感無量だった。





『あなた達、中でいいの?イメージしてた茶店は外じゃないの?』




レイコさんに外から声をかけられると、俺は雅に聞いた。



『どうする?中でいい?』



『ううん、中はもう見たから、外がいい。その方が茶店っぽいもん。』




店内スペースがあるとは意外だったが、やっぱりレイコさんの言う通り、イメージ的には外だろう。



俺達が外の長椅子に腰かけると、レイコさんがお茶を3つ頼んだ。




『あれ?お団子は?』



雅がレイコさんに訴える。




『大丈夫よ。お茶とお茶菓子はセットなの。このお店では新しくお団子を開発して、それが着いてくるらしいわ。』




『お団子って定番なんじゃ?』




『それは江戸時代の話でしょ?ここはまだ江戸時代に突入したばかりで、つい最近までは安土桃山時代だったんだから。』




『そうなんですね。』





俺は歴史には疎かった。



そんな俺が身をもって歴史を体験しているとは不思議だ。



出てきた団子は素朴な味で旨かった。



『おいしーい!』



雅も素直に喜んでいる。




『なるほど……』




レイコさんは味わっているというより、分析しているようだった。




うちの店に来てくれた時は、素直に喜んでくれていたようだったが、この時代の素朴な味は感動するほどではないらしい。




もっとも俺達も味そのものより、この雰囲気の中で食べることで、美味しく感じているのかも知れないが……




『ごちそうさまです。』



看板娘に挨拶して店を離れると、ものすごい勢いで馬が駆け抜けていった。



その馬上では背中に矢を受けた男が、必死の形相で馬を操っている。



それを見送っていると、大きな蹄の音を轟かせた集団が近付いてきた。


馬に乗った五人の侍だ。



口々に何かを叫んでいる。



現代社会ではまず遭遇することのない状況に、避けることも出来ずにいた俺達の目前に馬が迫る。



俺達は目を閉じてその場にうずくまってしまった。



.



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