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ファンタスティック・ツアー3210  作者: ヒロっぴ
時の彼方へ
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不思議な人達








それは、とても不思議な雰囲気の人達だった。






新婚二年目。

最愛の妻であり、恋人であり、親友であり、または兄妹のようでもあるみやびと一緒に、かねてから念願のコーヒーショップを開いてから約半年。




その人達は現れた。





この店はコーヒーショップとフラワーショップが併設してあり、店内からも移動出来るようになっている。



コーヒーショップの店内にはいたるところに花々や観葉植物が飾ってあり、気に入ったお客は、購入出来るようにもなっている。




また、フラワーショップで五千円以上の買い物をすると、コーヒーショップでコーヒーなどのサービスが受けられる。




それが中々の好評で、開店時からかなりの盛況を博していた。





基本的に、コーヒーショップは店主の俺、小山内博人おさないひろとが勤め、フラワーショップは妻の雅が勤めていた。




開店時こそ、それぞれ一人でこなしていたが、思いもよらず好評を博したため、二人では対応しきれず、すぐにアルバイトを雇うようになった。





とはいえ、二人とも初めての自営業なので、アルバイトは経験者を募集したところ、それぞれとても良い人材に恵まれた。


人柄もよく、またコーヒーショップやフラワーショップにもそれぞれ精通していて、ともすれば俺たちよりもプロ意識が高かった。




特にフラワーショップで雇った二人は、仕入れや経理までまかせられるほどの人材だった。




そんな彼女達、姫野ひめのユキと坂上輝美さかがみてるみ、そしてコーヒーショップの店員である九条隼人くじょうはやと田中聖美たなかきよみとも一緒に飲み会や、レクリエーションなどの交流も行っていたので、連帯感が生まれていた。




そんな中で、俺達夫婦の仲の良さも当たり前のように認識され、『二人が別々にいるのはなんか見てられない』と姫野ユキが言い出した事から、『やっぱそうだよね。』ということになり、雅はほとんどの時間をコーヒーショップの看板娘として過ごすようになっていた。






そんな時、あの不思議な人達は現れた。







店内に入るなり、子供のようにキラキラしたまなこで店内を見渡し、雅がテーブルに案内すると、とても喜んで『ありがとう』と言っていた。




俺が不思議な人達と感じたのは、まずその多様性だった。




ファッションもバラバラで……といっても、変なわけではなく、それぞれがちゃんとしているのだが、フォーマルな人もいればカジュアルな人もいる。それが同じ団体という事が面白かった。





団体といっても、15人程なのでそれほどでもないのかもしれないが、うちの店にとっては過去最多の団体だ。




たまたま午後の一番空いている時間帯だから良かったものの、カウンター席五人、テーブル席20人のうちとしては、結構な人数だ。





そして、その人種。



聞いていると全員日本語を話しているようではあったが、半数近くが外国人に見えた。




流暢な日本語を話しているので、皆さん在日の方なのかもしれない。




そして一番目を引いたのが、様々なファッションに身を包んでいるにも関わらず、全員が同じタイプのアクセサリーをつけていたことだった。




しかも、俺が今まで見たこともない変わったアクセサリーだった。



ピアスのように埋め込み式になっているのか、全員が首の後ろ辺りに小さなブローチのようなアクセサリーを着けていた。





デザインは様々であり、見ていても変ではなく『へー、こんなアクセサリーがあるんだ』『お洒落だな』という感じなのだが、全員が同じ場所に着けているのが、ちょっと不思議だった。






その人達は提供された飲食に、目を丸くして語り合い、各テーブルや窓際に飾られた植物を興味深げに眺めては語り合っていた。






そして帰り際、雅がサービスの花を1輪ずつ手渡していくととても喜び、握手を求めたりハグしたりしていた。


中には涙ぐむ人までいた。



料金を支払っていた引率者っぽい人が、最後に『ぜひ今度私たちのツアーにも参加してください。』と言って、名刺を置いていった。





その名刺もとても不思議で、まるで液晶画面のような3D加工がしてあり、思わず二度見してしまった。




裏を返すと、小さく『21st Century 』と書かれていた。





そんな彼らを店の外で見送った雅は、店に戻ってくるなり俺のところに来ると、目をキラキラと輝かせながら、





『すーごく綺麗なバスだったよ!』




というので、手を休めて見に行くと、はるか彼方に後ろ姿が見えるだけだったので、何でも感動しやすい雅がまたオーバーに言っていただけなんだろうなと、そのときは思っていた。





不思議な人達が乗るそのバスに自分達も乗ることになるとは、まだ夢にも思っていなかったのだ。

















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