老夫婦と馬
おじいさんとおばあさんは今日も一生懸命に農作業をしていました。二人とも最近は腰も曲がり気味です。膝や腰がカラスのようにうるさく鳴くのは耕す時でした。去年の鳴き声といったらそれはもうひどいものでした。だから今年から一頭の馬を買い、それに耕させることにしました。しかし、毎日馬を村はずれの草場へ連れて貪らせなければなりません。
ある夜、二人は話し合いをしました。おじいさんはおばあさんよりも体力に自信がありました。そこで、おじいさんが馬を草場へ連れていくことになりました。
次の日、おじいさんは馬にまたがり胸を張って村の道を歩きます。草場について馬が満足するまで待っているとそこにいる村のおば様たちがこちらをみてひそひそと話をしています。気になったおじいさんは走り込みをしている男が一人近くにいたので何か知っていないかと思い、彼に話しかけてみました。おじいさんがあの人たちはどうしてひそひそ話をしているんだい。私に何か変なことでもあるのかと問うと男はこう言いました。
「おじいさん、おじいさん。あのおば様たちはあなたがここに馬を連れてきていることを不自然に思っているんです。おじいさんが村はずれのこんな遠くまでその馬を連れてるだなんて、かわいそうだとね。それからおばあさんは何してるんだ。私たちは夫に楽してもらおうと牛や馬をここに連れてきている。それなのに、あの家のおばあさんは本当に怠け者で冷たい人だと言ってるんですよ。」
慌てたおじいさんは男に事情を説明しました。すると男は憤然とこう言いました。
「人のことを事情も知らずに悪く言うだなんて信じられませんよ私は。まったく、ひどい人たちだと思います。」
おばあさんが悪く言われていることに心を痛めた二人はその日の夜話し合いました。そして、明日はおばあさんが馬を連れていくことになりました。
次の日、おばあさんは自信満々。もう私は怠け者でも冷たい人間でもないぞと胸を張って馬にまたがり、とうとう草場につきました。おばあさんが馬の満足する様子を見て微笑んでいると、何やら若い女たちがこちらを見てひそひそ話をしています。気になったおばあさんは近くにいた野鳥観察をしている老人一人に声を掛けました。おばあさんが彼にどうしてあの子たちはひそひそ話をしているのですか、私に何か変なところがありますか、と聞くと彼はこう言いました。
「おばあさん、おばあさん。あの子たちはあなたがここに馬を連れてきているのがおかしいと思っているんですよ。今のご時世に女に仕事を押し付けているなんてと。今は男女平等だと学校で習った。それなのに、女に馬をここに連れてこさせている。おじいさんも女のことを低く見ている差別者だ、家でおばあさんに暴力をふるっているに違いないと話しているんですよ。」
慌てたおばあさんは老人に事情を説明しました。すると老人は憤然とこう言いました。
「人のことを事情も知らずに悪く言うだなんて信じられませんよ私は。まったく、ひどい人たちだと思います。」
おじいさんが悪く言われていることに心を痛めた二人はその日の夜話し合いました。そして、明日は二人で馬を連れていくことになりました。
次の日、二人で馬に乗って自信満々に話をしながら乗って進みます。二人は足腰が悪く馬に乗らずに草場まで行くと体が悲鳴を上げるからです。たくましい馬に乗ってもう安心。これで私たちは冷たい人とも差別者ともいわれずにすむと。馬はいつものように草場につきました。しかし、二人で馬がゴロリと寝そべるのを見て腰を下ろしていると、何やら野鳥観察にきている一団がこちらを見てひそひそ話をしているのに気が付きました。二人は気になって近くにいたおば様一人に尋ねました。二人がどうしてあの双眼鏡を持った人たちはこちらを見てひそひそしているのか、私たちに変なところでもあるのか、と聞くとおば様はこう言いました。
「おふたりさん、おふたりさん。あの人たちはあなたたちが二人でここに馬を連れてきたことを不自然に思っているんですの。あの老夫婦は馬一頭に二人もまたがっていたぞ、動物虐待だ。どうして、そんなつらいことを家族同然の動物にさせるのだろう。私たちは家のペットを何の負担もかからないように育てている。それなのに、二人もまたがるなんて、あいつらは馬を苛め抜いているに違いないと言っているんですのよ。」
慌てた二人はおば様に事情を説明しました。するとおば様は憤然とこう言いました。
「人のことを事情も知らずに悪く言うだなんて信じられませんよ私は。まったく、ひどい人たちだと思います。」
自分たちが悪く言われていることに心を痛めた二人はその日の夜話し合いをしました。そして、明日は歩いて馬を連れていくことになりました。
次の日、二人は胸を張って歩きます。馬の横にいる二人は体はつらいけど仕方がない。これで、動物虐待などといわれのない誹謗中将を受けないだろう。そう安心して息も絶え絶えに草場につきました。二人が馬が草場で悠々と駆け回るのをへたり込んで見ていると、何やらランニングをしている男たちがこちらを見てひそひそと話をしているのがわかりました。疑問を抱いた二人は近くにいたピクニックにきている若い女一人に挨拶をしました。そして、なぜあの男たちはこちらを見てひそひそ話をしているんだい、私たちに何かおかしいところがあるかね、と声をか細く発しました。すると女はこう言いました。
「ふたりとも、ふたりとも。あの男たちはあなたたちが馬に乗らずにここに来たことを不自然だといっているんですね。あの老人たちは息も絶え絶えで年も食っているのに馬にも乗らずに来たぞ、ぼけてしまったのだな。馬はあんなに元気そうだ。これではどちらが飼われているかわからん。俺たちはへとへとになる前に毎日馬に乗ってここまで来てトレーニングしている。それなのに、馬に乗らずにへばるなんてよほどの馬鹿に違いないと言ってます。」
慌てた二人は女に事情を説明しました。すると、女は憤然と
こう言いました。
「人のことを事情も知らずに悪く言うだなんて信じられませんよ私は。まったく、ひどい人たちだと思います。」
ある朝、二人は話し合いをしてとうとう馬を手放しました。




