神の存在と異世界トラベル!
俺は目に映ったこの世の物とは言えない光に見とれてしまった。こんなものは初めて見た。その美しさ、神々しさに気をとられ、どういう状況にいるかの思考を完全に放棄してしまった。普段から慎重な行動を心掛けて過ごしているつもりだったが、そういう意味では自分らしくなかった。
眩しいほどの暗闇に包まれた空間を俺は本能的な衝動に促され歩き始めた。そこは道や建物など現実的なものは一切なく、ただ永遠と続く暗闇とただ一点の神々しく、また美しい光だけの場所(?)であった。これは夢なのか?死んでしまったのか?などと考えながらただ光の方に歩いた。
しばらく歩いた時、時間が止まったように感じた。その瞬間、俺の見ていた遠くにあるはずの光は知らぬ間に俺の目の前に現れた。とても強い光度なのだから当然目を開けることは出来ない。だが、目を閉じていてもその光はまぶた越しに伝わってきた。このままでは目が焼けそうだ。
すると光は直接俺の脳に話しかけてきた。根拠はないがそう感じた。
「我は時を操る神、時空神である。久しぶりだな」
「マスタークロノスだと?お前なんかに会ったことはないし、知らない!なんのことだかさっぱりだ!」
「ツルシアス!知らないとは言わせない..ぞ...」
(そうか。奴は自分の記憶を消されて今はツルトと言う名前だったか。本当に何も知らないわけだ。)
「まぁいいさ。教えてやろぅ。我は時空を操る神だ。人間どもの時間を変えるなど造作もない。今回は人間の時間を歪めて我が停止してやった!停止したとき、普通の人間はこんな所には来ないがお前が来るということは、そういうことなんだ。しかし我がこのようなことをするのは特定の場合のみだ。どんな時だと思うか?」
「…」
俺は黙り込んだ。
「お前が我と会うのはこれで最後じゃろうから特別に教えてやろう。良く聞くがいい!」
『地上で誰かが時空を歪めすぎた時だ!』
と、神は告げたのだった。
「俺が使ってるのが……お前には分かるというのか?」
「言ったであろう?我は時空を操る神。我が時間を止めてお前がここにいるのだからそういうことだろう。時間を歪めるとその世界に時空のロスタイムが生まれるのだ。それを直すのが我の仕事なんだが、最近は時空が歪みすぎて我の仕事が多すぎるのだ。いくらの魔力を使うと思っている?」
「…」
「もう良いだろう。今度こそさよならだ。何か最後の言葉でも吐くんだな」
俺は呆気にとられ最後の言葉とやらは言えずに固まっていた。
(む。最後の言葉は言わなくて良いのか。まぁ良い。さっさと送り飛ばしてやる。)
「久しぶりに天神術式魔法をやるとなるとワクワクするなぁ!」
いきなりなんなんだよ?何が起こるんだ?
「最後に我からの忠告だ!」
〖お前は魔王ではない!〗
『天神術式魔法 天神式送還転移!』
もう俺は死ぬのかななどと考えながら俺は意識を手放そうとしたとき、奴が俺に言った忠告とやらが頭に浮かんだ。
「俺は魔王ではない...か。」
数多の魔法陣が混ざり合う中、中心にいた鶴斗はその魔法陣が収束するとともにその暗闇の中から消えた。残るものは神々しいばかりの光一つ。時空神である。
やれやれ、嘘をつくのも大変ですね。さすがに気づかなかったようですが……わざわざあんな風にしたのに全てパーになるところでした……
さてと。現状は予定通りでしょうかね。
俺は目覚めた。目を少しずつ開けると見えたのは壁だった。頭を動かし周囲を見渡すが、見たことのない場所だった。ここは天国なのかとまだ意識が朦朧としてる中、少しずつ意識を取り戻そうとしたとき、少女らしき人の声が聞こえた。
『召喚士であるシンラーヴェル・アイシー・コルガーが命じる。彼の者、名を申し我と契約せよ!』




