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痛い婚約者

 俺は窓から飛び降りると上から不器用に飛び降りるシンラーさんの下敷きになった。おかげで大きな音が出てしまったのでとっさに目の前の茂みに隠れた。


「どうしたらあんな降り方になることやら……」

「ごめんなさい……」


 シンラーさんは赤面になっていた。いやそんなに攻めてる訳じゃ……


「これから、どうする?」

「どうするって言われても……」

「俺は伯爵たちを助けたい!」

「私も同じよ。見捨てるなんてできないわ」

「じゃあまず、マーレイちゃんたちと合流しないと。安全を確認したい」

「あ、すっかり忘れてたわ。マーレイちゃんたちも無事だといいんだけど」

「とりあえず俺の足踏まないでくれるかな?」

「……あ、ごめん」


 俺とシンラーさんはマーレイちゃんたちと合流するため、庭の隅を走った。すると、なにやら男の声が聞こえてきた。同時に剣が交わる音も……急がないと


「くぅ……」

「面倒なやつめ、これで終わりだ!」


 男が兵士に斬られそうだ。どうすればいいんだ。こうして考えている時間にも刻一刻と時間は過ぎもう手遅れになりそうだったとたん、一人の男が今にも剣を振り下ろされそうとしたとき、前に入って自分の剣で抑えた。間一髪だった。それにしても誰なんだろう。その人は赤髪で背の高く、黒い服を着ていた。


「あ、ありがとうございます。あなたは……」

「話は後にしましょう、ここは私が引き受けるので一旦下がっておいてください。体制を建て直しましょう」

「は、はい」


 彼はとても冷静だった。男が去っていくと、彼はなにやら詠唱をした。


「神聖たる 光よ!」


 その途端、剣が光りだした。とても眩しく前に見たあの光りに劣らないぐらいの光だった。彼はそのまま前に剣を突きだし、兵士は倒れた。


「す、すごい。なんなのよ、あれ」


 シンラーさんは思わず口にしてしまった。俺だって良くわからなかった。


「君達、そこで何をやっているんだい?」

「「え?」」

「上手く、隠れているつもりなのだろうけど私には丸分かりだよ」


 ばれてしまった。結構注意したつもりだったのだが……やはり、何者なのだろう。


「あなたは誰なんですか」

「なんだい?私から名乗るのか?怪しいのは君らの方だと思うけどな」

「お互い様ですよ。俺はツルシアス・スカルチア。さっきの人の仲間で、リーセントアルツ辺境伯さまの日雇い近衛兵です」

「私も、同じくシンラーヴェル・アイシー・コルガーです」

「私はグレイト・リトヴァイアー。リトヴァイアー家の次男で、今はミソルハイム王国第三騎士隊の隊長をしている」

「ミソルハイム王国?」

「知らないのかい?ここの東にある国だけど……」


 知らなかった。そんな国があったんだ。世界についてもう少し調べなきゃいけないなぁ。


「それで、ミソルハイム王国の騎士様がどうしてここに?」


「おい、こっちだ!」


 ヤバいまた兵士が来た。今度は十人ぐらいで来ている……


「話は後にしましょう。今は切り抜けないと。あなた達はどうするんですか?」

「早く行かないといけないところがあるんです……」

「なら、早く行くといい。ここは私がおさえておくよ」

「いいんですか?ありがとうございます。じゃあ行こう、シンラーさん」

「そ、そうね。行きましょうか。ありがとうございます。騎士様」


 ミソルハイムがどういうところなのか、正直わからない。でも、状況が状況なだけに頼みざるを得なかたった。人はいい人そうだが、シンラーさんの彼に対する挙動かおかしかったのでなんともいえない。今は、マーレイちゃんの安全を確かめるのが先だ。


 あれだけ、マーレイちゃんのことを心配したが、結局は杞憂だった。今となってはあの気持ちを惜しみたいくらいだ。うれしいことではあるが、マーレイちゃんは、馬車の中ですやすやと寝ていた。安心したというかなんというか……


「まぁ、無事で何よりね……」

「あ、あぁそうだね……」


 苦笑いするしかない


「……おはよう」


 マーレイちゃんが起きてしまった。寝顔可愛かったのに残念……


「ごめんね、マーレイちゃん」

「いえ、大丈夫です」

「でも、マーレイちゃんの安全を確保できるところ、無いかな……」

「……やっぱり街に潜伏するしか……」

「そうだね……行こうか。おじさん、馬車はここに置いていこう」

「分かった、マーレイ様を頼みます」

「はい」


 俺とシンラーさんはマーレイちゃんを連れて何人かの人と街に逃げようとしたとき……


「ちょっとあぶな…い……」


 突然、前に白馬が通った。乗っていたのは金髪で口髭を生やした三十代ぐらいの男の人だった。。青い服に赤いマントを着けていて、いかにも貴族な人だった。そして少し、痛い……


「あなたは……」


 俺はそう聞くと彼は


「遅れてすまない。私はデクレイト・アーメイル・リーセントアルツ、リーセントアルツ辺境伯様の嫡男です。」


 この人があの人のご子息……ということはマーレイちゃんの婚約相手なのか……マーレイちゃんは俺の背中に引っ付いている。怯えているのだろうか。


「本当は父上に内緒に来たかったんだが、そちら……のお姫様」


 彼は金髪の──否、彼から見ると白髪のシンラーさんを指した。シンラーさんはなにか察したようだが。なぜ、彼はシンラーさんがシンラーヴェル王女だと見抜けたのだろうか……


「君は疑問があるようだね……当ててみようか……私がなぜ、王女様だと見抜けたか……かな?」


 言われた瞬間、ドキッ!としてしまった。なにも知られて困ることはないのだが。


「その反応を見るに当たったようだね。まぁ、なんでかって聞かれると、私も『チェンジメスト』を使えるからね。いや、使えないのかな……」


 いや、どういうことだよ。


「私はスキルを持っているんだよ。ありがたいことにね。いや、授かったと言うべきかな……」


 はぁ……


「まぁ、その話は後ででも良い……いや、今の方が良いのかな……」

「後で大丈夫です!」


 キッパリ言ってやった。いや、言ってしまったの間違いだろうか……あれ?俺にもその口癖うつっちゃったかな……多分マーレイちゃんはこの人に苦手意識を持っているんだろう。だって俺もそうだもん。


「そうかい……まぁ、ここに来た理由は父上を助けてからにしよう」

「そうですよ、早く助けないと!」


「おい、いたぞ!」

「こっちだ!」


 うわ、またかよ。もうこなくていいのに……そう、心のなかで言って俺は刀を抜き、シンラーさんはそこら辺に落ちているような木の棒を拾った。毎回思うのだ、それ、ステッキ的なものを買ってはいないのだろうか。


「やるしかないか……」

「そうね」

「ここは私が行かせてもらうよ……いや、私が小手調べをしてあげましょう!」

「もう、どっちでも良いよ!」


「大いなる神に愛されたこの心技は今、森羅万象の根源となりて集いし光を我らに照らしたり!永遠ならざる我が身を持って彼のものに厚き弾劾を降らせ!」

「森羅万象の 光を降らせ!」


 なんだこれ……あれ、少し前に聞いたことのあるような声が聞こえる……あっという間に六人の衛兵は二つの雷に打たれ倒れた。そういえば今の言葉、全然違うのに魔法はほとんど同じだし、威力は短い言葉をいった方が高いようだ……おいおい……

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