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タイムトラベラーの生誕

「えー、シンラーヴェル・アイシー・コルガーさんとツルシアス・スカルチアさんですね。今後とも頑張ってください。武器屋はここを出て左にございまーす」

(どうしてこんなことになったんだ!ぶっちゃけこの人メチャクチャ可愛いから少し幸せだし...)


 そうじゃない、なんで俺はこんなことになってしまったんだ!


「なんでお前はそんな点数が取れるんだよ?俺なんか今回のテスト70点だぜ。いくら地方とはいえうちの学校は国内屈指の難関高校だぞ。それでも全教科80以上だもんな、やっぱり木村はすごすぎるよ」

(なんだ、あいつらそんな点数で喜んでんのか。本当にみんな頭悪いなぁ。俺なんか全部95点なのに。80で喜ぶとかハードル低すぎない?)

「僕なんか全然だよ。でも菅原くんなんて全部95だよ」

(お、木村のやつ俺のこと話してるな)

「ふ~ん」

(うわ! めっちゃ微妙な顔してる)

「あいつやったんじゃね?」

「まさか。そんなこと菅原くんがするわけ無いじゃん」

「絶対あいつしてるって。あいつの点数から考えて絶対して...ゴニョゴニョ」

(はーぁ。小さい声でしゃべって聞こえないなぁ。まぁ。振りだけどね。聞こえなかった振りをしなきゃここはめちゃくちゃ気まずい)


 と、同じ班の加藤と木村と俺は高校生にもなってほうきで埃を払っている。昨日、定期テストの答案が全て返却され絶望に墜ちる者や勝利に呻き騒ぐものが多数出現した。俺は毎回のことながら勉強なんか何もしてないから達成感なんてものはないし高得点が当たり前だから勝利を喜ぶこともない。当然授業は受けるけど、それは建前で、ほとんど隠れて他のことを考えている。


(考えてること?それは魔力のことだ。誰にも教えてないし誰も信じない。もし言ったとしても当然のようにキッパリと魔力は小説のなかにしかないって言われる)


 俺は自分の魔力を感じたことがある。たぶん現代の地球では俺だけだろう。しかしラノベの世界で描かれるような魔法を使うことは出来ない。出来たらいいなと思うことはあっても無いものは仕方がない。神様は俺に魔法を授けずに魔力のみを授けたのだろう。きっとこれには意味があると思いずっとずっと悩み考え続けた。それがまだ短い俺の人生の問題なんだろうとずっと考えてた。しかし人生の問題は、高校受験が終わった帰り道で思いついたのだ!それも、考えながら帰路に立っていた訳でもなく普通に歩いていたときにふと頭の中を横切った。とっさに


「これだ!」


 と、叫んでしまい魔力を頭に集中させた。そしたら。


 何も起こらなかった。


 そう。何も起こらなかった。俺はまず自分をチェックした。俺は確かに自分だった。と、スマホの鏡で確認した。次は某地図サイトを見て何も変わっていなかったことを確認する。結局何も変わっていないのか……しかしあるものに気付いた。何に気付いたかってただ、さっきまで完全に夜だったのに今は完全に夜...ではなく朝であった。完全に朝だった。


 少し鳥肌がたってきた。おそるおそる俺はもう一度スマホを確認し時間を見た。時間が今日の朝に戻っていたのである。


 これって...


「俺は()()()()()()()()になってしまったのか!?」


 正直心のどこかで魔力なんてものはない、と自分を否定する自分がいた。けれど…


「魔法を使えた……」


 今まで信じるのみでしかなかった魔法というものが本当に存在した、そんな事実に心が躍る。高鳴る好奇心に俺は力を試し続けた。頭に力を思い浮かべるたびに時間が逆戻りしていた。



 この能力を使えば大抵なことは全て良い結末を迎えられる。俺はそう考えていた。だが全ては上手くいかなかった。俺は小さい頃から皆に嫌われていた。親からもだった。故に俺は愛情や、友情を知らなかった。俺には人を寄せ付けないオーラがあるのだと思っている。人の感情など変えることは出来ない。タイムトラベルは自分がいる時間を動かすだけであって人の感情を動かすマインドコントロールではない。実際こんな能力があっても上手くいかないことのほうが多いのだ。


 高校生活では友達はゼロであり部活動にも参加していない。周りからは『頭がいいだけの独人主義者』と呼ばれていた。唯一頭の良さは皆から認められているが、俺自身頭の良さは本当に自分の力なのか、或いは能力の力なのかもう分からなくなっていた。故に幸福とは程遠い生活を送っていた。


 将来はこの能力を使って学者になって自分の魔力を調べたい、机上の空論ではあるが進路に関してはしっかり考えている。そう考えることによって俺はどうしてこんな能力を得たのか考えるようになった。その結論は最終的に......


 「神が俺に授けたんだ!」


という結論に至るのと同時に


 「神なんていない」


という自問自答に陥った。


 そう思った時、俺の視界は一瞬暗闇に覆われた後に神々しいほどの光に包まれた。

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