宿に泊まりました。
あれから数分光輝と紫音は男達から話を聞いていた。
「つまり、この世界ではLvがあって、そのLvは王都のアルカディアに行かないと測れないと言うことか。」
光輝がまとめると、紫音は
「でもそこまで行くには早くても六時間はかかる…。」
と男達に確認すると、男達は頷くことでそれを肯定した。
紫音は眠たそうに目を何回か擦るとふあぁと一回あくびをした。
そんな紫音をみて光輝は
「出るのは明日の朝にしよう。ここの村にも一応、宿はあるしな。」
と光輝は男達を見て言うと、
「じゃぁ、俺達は急ぐから有り金全部。渡してくれるよな?」
と笑顔で男達に手を差し出した。
それを見た男達は少し目に涙をためながら
「せめて、半分にしてくれ!この金がないと俺達が暮らしていけなくなっちまう。頼む。お願いだ。」
と光輝に頭を下げた。だがしかし光輝は
「俺達は自分の命を賭けたんだ。命を奪われないだけいいと思え。
それにもし、俺達が負けてお前たちにそうやって頼んだとしてもお前達は俺達を逃がすか?」
光輝が問いかけると男達は口を閉ざし、悔しそうに頭を下にさげる。そして光輝に渋々お金を渡した。
光輝はお金を受け取ると、
「あ、そのフードもくれ。俺達、目立つからさ。」
と、光輝は男達のフードを奪った。
男からフードを貰う(奪う)と飲み屋を出て、近くの宿に泊まることにした。男達から貰った金は金貨16枚と銀貨618枚が入っていた。男達が言うには、ここの宿は一泊食事付きで銀貨3枚。金貨一枚は銀貨100枚と同じ価値らしい。
光輝は一泊食事付きの銀貨三枚を払うと、紫音と一緒に部屋へ入った。
部屋は少々汚れているが隅々まで掃除が行き届いており、想像していた部屋よりもまともな部屋だった。
紫音はフラフラとべットへ行くとボスンと音を立ててべットに飛び込んだ。
それから数分が経つとスースーと静かに寝息が聴こえてきた。
光輝は紫音を起こさないようにそっと毛布を被せるとソファーへと向かう。一日でいろいろなことがあっ
た。紫音はそれでも愚痴一つこぼさずずっとついてきてくれた。全く良くできた妹だと、光輝は常々感じていた。
光輝は自分の毛布を取りに紫音の近くまで行くと、髪の毛を少し撫でる。
それから、「紫音ありがとな。」とぼそっと呟いた。
光輝が紫音の髪の毛を撫でるのをやめソファーに行こうとすると紫音の手が光輝の手をそっと握り
「うぅん…。お兄ちゃん?」
と、少し目を開けた。
「ごめんな。紫音、起こしたか?」
「どこかに…行くの?」
「いいやどこにも行かない。ソファーで寝ようと思って、毛布取りに来ただけだ。」
光輝は首を横に振った。しかし、紫音は寝ぼけているのか
「行っちゃ、だめ。紫音の…側にいて。」
と、光輝の手を強く握り締めた。
「紫音、寝ぼけてるのか?明日は朝早くから王都へ行くからしっかりと寝ておけよ。」
と、光輝は紫音の髪の毛を撫でる。
「光輝も、一緒?」
紫音に久しぶりに自分の名前を呼ばれたことに光輝は少し驚いた。
初めてあった頃、紫音は光輝をお兄ちゃんではなく『光輝』と呼んでいた。
それがある出来事をきっかけに『お兄ちゃん』と呼ぶようになった。
紫音は少し目に涙を浮かべながら光輝をみていた。
「あぁ。俺も行く。」
と光輝が返事をすると紫音が
「よかった…。それなら、紫音もついてい…く。」
と、紫音は光輝から手を離すとまたスースーと寝息を立て寝始めた。
光輝は近くにあった椅子を持ってくるとそこに座り、毛布を掛け紫音の側で寝ることにした。
そして、「おやすみ、紫音。」と紫音に声をかける。だが返事はもう返って来なかった。
太陽の光で光輝は目をさました。隣を見ると紫音はまだスヤスヤと寝ていた。
光輝は紫音の頭を撫で、「おはよう。紫音。朝だ起きろ。」
と髪の毛をワシャワシャ掻き回すと紫音は目を覚ました。
「お兄ちゃん。おは…よう。」
と言って大きくあくびをした。
光輝と紫音は朝食を取り、支度を整え宿を出ると真っ直ぐに王都の方角へ進んだ。