441 権六殿には味方になってもらいます
「御苦労であった傳兵衛。此度の働き、天晴れ。褒美は浅井家との決着後に与える故、もう下がって良いぞ。権六も御苦労であったな」
「「はっ!」」
さて、不安だった殿への報告も何事もなく終えたし、後は播磨へ帰るだけだな。
志賀の陣を防ぐ事には成功したし、もう此処に居る意味もないしな。
他の織田家の将達も、これ以上俺に活躍して欲しくはないだろうしな。
それに流石に領地を放ったらかしにしておくのも何だし。
自分で言うのも何だが、今回はちょっとばかり派手に動き過ぎたからなぁ。
多分、色々偉い人達にも睨まれている事だろうし…
暫くは自重して、派手な動きは控えないと。
権六殿と共に、殿の前を辞して京の自分の屋敷へと戻る。
「さて、用事も済んだ事に御座いますし、一献如何に御座いますか?」
権六殿に酒を飲ませて、今回の俺の行動が何も問題の無いものだと理解してもらわないとな。
次席家老の権六殿の理解が得られれば、厄介事に巻き込まれる事もないだろうし。
要らぬ嫉妬や誤解から守ってもらわないと。
「おお、済まぬな傳兵衛。相伴に与ろう」
権六殿もその積もりだったから、俺の屋敷まで付いてきたんでしょ?
取り敢えずありったけの酒を用意して権六殿を迎え撃つ。
「しかし傳兵衛よ、本当のところはどうなのだ?お主は以前より浅井備前守(長政)を疑っておったらしいではないか」
権六殿と酒を酌み交わしながら暫くは雑談をしていたが、いよいよ本題に切り込まれる。
待ってました!
「備前守というよりは、北近江の国人共がに御座いますな。北近江の国人衆は朝倉家に従っておる者も多い。彼奴等からの突き上げを備前守は拒む事は出来ますまい」
浅井長政がどう思っているかは知らないが、国人衆からの圧を押さえ付けて、朝倉家と敵対するなんて事は、長政には出来ないだろう。
殿はもう少し出来る男だと思っていたんだろうけど、六角承禎や足利義昭、朝倉義景の下っぱ程度が限界なんだろうな。
「それで朝倉家が南侵すると読んでおったか…。色々と策を練っておった様だしな」
「追い詰められれば、三好家と結んで逆転を狙うのは予想しておりました故」
本当は、そうなるのを知っていただけだけど。
「その為に延暦寺を焼いたか」
「それは某がやった事では御座いませぬ。焼き討ちを行ったのは園城寺に御座る」
最低そこだけは否定しておかなきゃ。
「お主が園城寺を唆したのではないのか?」
「滅相もない!確かに園城寺とは近江の事で色々と相談に乗ってもらいは致しましたが、あくまでも頼んだのは延暦寺の静謐に御座います。まさか延暦寺に火を掛けようとは…」
俺は園城寺に、延暦寺の大切な宝物を保護してくれとは頼んだが、延暦寺に火を掛けろなんて頼んでない。
延暦寺にはな。
坂本は知らん!
「ところで、浅井攻めの事に御座いますが…」
権六殿への釈明…じゃなかった、理解が得られた後、浅井家への戦の話に移る。
「何じゃ?お主はそのまま播磨へ戻るのであろう?」
「左様に御座いますが、一つ言い忘れておった事が御座いまして」
「…ほう。聞こう」
何故か俺の言葉に身構える権六殿…
いや、そんな大層な話じゃないよ?
浅井家攻略の事で忘れていた事があったので、それを話しておこうと思っただけだよ?
播磨へ帰る俺にはもう関係のない話だから、役立ててもらおうってだけだから。
約束もあるし。
「近江伊香郡の国人、東野左馬助(政行)と大谷伊賀守(吉房)を調略しております。丁度、敦賀への退路を塞ぐ事も出来ますれば、浅井家攻略の一助となるやもしれぬかと」
「なんだと?何故に今頃?殿は御存じなのか?」
「いえ、今し方思い出しました故。それに確実に寝返るとは断言出来ませぬし」
いや~、コイツら調略してから少し経ってるし、抑思い付きの口約束だったし。
それに浅井家攻めなんて大分と先の話だと思っていたからさぁ。
忘れちゃっても仕方ないよね?
「ええい、分かった分かった。殿には儂から申す。お主は今暫く屋敷に留まっておれ!」
権六殿は怒った様な呆れた様な表情で俺を睨むと、足早に屋敷を出ていった。
何でやろ?
何か問題発言でもあったっけ?




