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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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  4 稲田 カモン

 永禄(えいろく)元年(1558年)三月。


「この度は、伊勢守(いせのかみ)家との戦に御声掛(おこえが)け頂き、誠に(かたじけ)なく」


 稲田掃部助(かもんのすけ)景継(かげつぐ)

 元織田伊勢守家家老、稲田大炊助(おおいのすけ)貞佑(さだすけ)の次男だ。

 稲田氏は代々家老職についていたのだが、父の貞佑が信長に内通したと疑われて切腹させられてしまい、長男もその後を追った。


 自身は伊勢長野氏の客将となっていたが、今回の憎き伊勢守家との戦に参加するためにやって来た。

 まあ、切腹を命じた織田信安は美濃へ追放されてしまうんだけどね。


「掃部助殿、よくぞ参られた。今だ戦端は開かれてはおらぬが、今夏には戦う事になろう。亡き大炊助殿の無念、存分に晴らされよ」


 掃部助殿は十五歳と若く、親父も多少気を使っているようだな。

 元伊勢守家家老である祖父の修理助(しゅりのすけ)殿と連絡を取ってもらい、内通を取り付けてもらえれば、少しは楽になるからな。


 下手な鉄砲で数撃った手紙の中で当たったのは、これだけだった。

 岩倉攻め(けん)秀吉対策に放ったダメ元の一手だったのだが、まあ良かった。


 掃部助の弟が、蜂須賀小六(ころく)の家老になるので、その邪魔をするために兄を呼んでみたのだ。

 なので、まだこの策はまだ全然成功してはいない。これからだ。

 もっとも、蜂須賀小六が秀吉の家臣にならなければ、あまり意味はないのかもしれないが。


 全く未知数な武将だけど、森家のためにも頑張って活躍して欲しい。



 しばらくして、掃部助殿から祖父の修理亮殿の文が届いたと報告があった。


「祖父より知らせが参りまして、伊勢守は次男を溺愛し嫡男を廃そうとしているようで。最早伊勢守と嫡男の左兵衛(さへえ)の仲はどうにもならぬと」


 なんでも、織田伊勢守信安が、あまり仲の良くなかった嫡男の左兵衛信賢を廃して、次男の久兵衛信家を後継にしようと考えているらしい。


「まず清須に、知らせを送るべきでしょうな」


 掃部助殿の知らせを聞いて、古参の青木次郎左衛門行秀が、普通の、本当に普通の意見を言う。

 次郎左衛門は、亡くなった祖母の甥にあたる。普通のことを言う普通の武将だ。

 武藤五郎右衛門とは違う真面目で堅実な普通の男だ。


「左兵衛殿に何か瑕疵はございましたか?」


 長田(おさだ)又左衛門が理由を考え出す。

 信安も信賢も斉藤義龍と結んでるから、方向性に違いはない様に見えるけどな。

 長田又左衛門成広は、最近仕官したまだ若い武将だ。津島の大橋家と、少し繋がりがあるらしい。

 爺ちゃんの後妻も大橋家の出だから、その繋がりでウチにやってきたようだ。


「左兵衛殿を煽って、伊勢守殿を追い出す様仕向ければ、家中が混乱して面白いですね」


と、歴史的にあった出来事を、さも策略を思い付いたように言ってみる。

 言うだけならタダだし、俺の評価が上がるのなら楽なものだ。

 周りの者はギョッとしたり、考え込んだり、頷いたりしていたが。


 六月になって、織田信賢が信安、信家を追放した。

 俺の意見が通った訳ではないだろうが、稲田修理亮殿も、それに協力したそうだ。

 それも史実通りだから、俺の言葉で影響が出たのか出なかったのは分からないが。


 そして、その混乱を見逃すような信長ではない。

 翌七月に、従弟の織田信清に姉を嫁がせ同盟を結ぶと、 戦を仕掛ける。


 親父も、掃部助殿も、ついでに五郎右衛門達も皆、戦に出掛けていった。


 戦は始め岩倉のやや優勢だったが、途中信清率いる犬山勢が加勢したことで、一気に信長有利となり、見事勝利を収めた。

青木次郎左衛門行秀はオリキャラです。森可成の母方の祖父の青木秀三の子、娘婿の青木次郎左衛門秀重の父ということで。

稲田景継の掃部助は、父親が大炊助若しくは掃部助とあったので、そのまま掃部助としました。

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