11 信長上洛
二月になって、信長が急に上洛するって言い出したらしい。
斯波氏を追い出して尾張を手に入れた事を、将軍に正式に認めてもらう為のようだ。
ここで普通の転生主人公なら一緒に上洛して、一色義龍からの刺客を撃退したりしながら点数を稼ぐところだが、勿論留守番だ。八歳の子供に何が出来る。
いや、今まで結構色々やらせて貰っている気はするが。
美濃との国境にある我が家は、当然城を空けられないはず、たぶん。岩倉城の包囲も続いているからね。
俺は信長に会ったこともないので、誘われることもない。
ひょっとしたら、正徳寺での信長と道三の会見で、二人は最後に蓮台で別れているから、こっそり赤ん坊の頃会っている…はずもないな。流石にないない。
以前、灰を適当にぶちこんで造った酒は、数種類出来たのだが、前世でみたような透明には届かなかった。
まだ少し白かったり、琥珀色だったり、赤っぽかったり、ピンク色だったり。
何かが悪かったのだろうが、まあいいや。
色々な種類の酒を親父に提出すると、何種類か殿に持っていくと言って没収された。
信長って、お酒苦手だったような。あんなに持っていって大丈夫だったのかな?
後日、親父に何処かで造らせるから造り方を教えろと言われたので、素直に教えておいた。
完全版の清酒を造りたかったのだが、まあ仕方ない。
後のことはプロに任せて、上前を撥ねることにしよう。
その酒を上洛時に持って行くみたいだが、将軍への貢ぎ物にでもするのかね?
色々手配をしている親父だが、あんたは上洛しないよね?
取り敢えず信長からは、結構褒美が貰えたそうだ。
話は変わるが、この戦国時代には、正室の他にも側室というものがいる。
この森家にも、六男四女生んでいる正室の母の営の他に、当然側室がいる。
全然話題に上らないのは、子供が出来なかったか、女ばかりで資料がないのか。はたまた、資料が間違っていて、別の人とごっちゃになっているのか。於仙ちゃんにハブられているのか。
ともかく、側室の種さんは、前田長定という人の妹だ。
前田長定さんは、あの前田利家とかの前田家の本家筋らしい。
信長の筆頭家老だったのに弟の信勝に付いた林秀貞の与力だったのが災いして、稲生の戦いの後、領地は没収され、分家筋の前田利昌(前田利家の父)に与えられてしまった。
本家と分家が逆転してしまった形だ。
なかなかの運の無さだが、滅んでないだけましなのか。
現在は、佐久間信盛の配下となっている。
ちなみに種さんの姉は、佐久間信盛と結婚している。
佐久間信盛と親父も義兄弟ということでいいのかな?
さて、その種さんだが、今年めでたく娘が生まれた。
名前は、麦に決まったようだ。
未来の知識に、側室の子供たちの情報は何もないが、正室の子供以外に娘がいるのは間違いないはず。
後の五奉行の一人、増田長盛の正室は、親父の娘のはずだし、嫡男が正室の子であるならば、時期的に妹たちの再婚相手という線もないはずだ。
養女や嫡男が正室の子ではない可能性はあるが。
果たしてこの子がどうなるのか、サッパリわからん。
信長が上洛から戻ってくると、いよいよ岩倉城の包囲も終わりを迎える。
あっという間に岩倉城も陥落し、城主の織田信賢は降伏、甲斐国へと追放されていった。
戦も終わり、親父達も何事もなく無事に帰ってきた。
さあ、求人の時間だな!
浮野の戦いの前から誘っていたんだし、一人くらい頼ってくれてもいいのよ?
そのために銭を稼いでいたのだから。
側室の名前は、父親の前田種利から引っ張ってきました。
娘の名前は、適当です。
 




