1 よくある転生
書いてみたくなったので、やってしまいました。
「父上。ご武運をお祈りいたします」
俺がそう言うと、
「家の事は頼んだぞ、小太郎」
と、頭を撫でてから馬に乗り去っていった。
(まあ、勝つのは分かってるから心配ないか。七歳の子供じゃ、どうしようもないしな)
これから起こるであろう『浮野の戦い』を思い出し、
「無事だと知っていても心配だなー。この前の戦いじゃ脚を斬られてて動揺したからなー。怪我してこないといいなぁー」
と、呟く。
まあ、考えてもしょうがない。戦後の勧誘に向けて工作(手紙)をしないと。
俺に出来る事なんか、青田買いと金稼ぎくらいしかないのだから。
「堀尾と山内、取れないかなー。無理だろうなー。誘いだけはかけとこうか、顔を繋ぐだけでもいいから。蜂須賀も確かいたんだよなー」
と、ブツブツ呟きながら屋敷へと戻って行く。
今から6年前、目が覚めたら赤ん坊になっていた。パニックを起こして泣き喚き、ようやく落ち着いてから状況確認をした。
どうやら此処は戦国時代の美濃と尾張の国境らしい。
時折、斎藤山城守殿がとか、上総介様がとか、新九郎殿がなどと聞こえたりもしていた。
どうやら、織田信長の生きている時代で、美濃では斎藤道三がまだ生きているようだ。
家族は父、母、父の側室、祖父とその後妻、俺。
親父の名は、森三左衛門可成。
あの織田信長の家臣だ。
尾張統一前からの古参で信頼も厚く、子供も三人が小姓になっている。
はじめ、名前を知った時は、有名人に感動して喜んだが、その長男となると…
森可隆…
影の薄い長男。ものによっては、兄弟からハブられ、いなかったことにされてしまうほどの存在感のなさ。セット販売されてしまっている四男五男と同等か、それ以上の逸材。
あかんやん!19歳で討ち死にやん!
いや、長男だけやなくて、森家の男子、ほとんど討ち死にやけど!!
だが俺自身は、手筒山城の占領後に突っ込まなければ大丈夫か…
でも生き延びても、姉川、宇佐山と…
…大丈夫かなと、6年たった今でも不安になる。
あれから妹が3人も生まれ、今年ついに、あの弟も誕生してしまった。
この弟の成長を、面白おかしく見物する楽しみができた。
せっかく生まれ変わり、仲の良い家族に恵まれたのに、簡単に死んでやるものか。
家族みんなで生き延びてやる!
そのために力を溜め、この家も俺自身も強くなってやる!
まだ、あと十二年も時間はある。
討ち死になんて勘弁な!
幼名がわからないので、森氏でよくある小太郎にしておきました。