冷血漢
「親切にありがとうねぇ」
「当たり前のことですから」
老婆に荷物を返して、軽く会釈をして立ち去った。
駅前では国を悪くするのは云々と騒がしい。チラシを断り、待ち合わせより10分早くに着いた。
「孝之くんって、素敵な人よね」
友達が目の前でコーヒー2つとジュースを頼んだ。
「やっぱり麻里もそう思う!?誠実だし……」
ガラスに語りかけ、彼女は1人で笑う。
僕をめぐって何かあったらしいけど、詮索するほど気にはならない。
「……興味がないだけだよ。君たちの苦痛にも」
そろそろ刺激は失せたし、面白みはない。
でも、責任なら最後まで果たすよ。
「冷たいって誤解されるんじゃない?」
「実際冷たいよ、僕は。当たり前のことをしてるだけだし」
人の幸福にも、口出しなんかしないさ。
君が幸せなら幸せなんだろう。きっとね。