7,自宅で……
世界樹の村のはずれ
あの日から今日で数日、そろそろ頃合いかと思い作業を中断する。
私は、今村から少し離れたところでこれからに向けて準備をしています。
彼に仕掛けておいたあれが作動したときにいち早く行けるよう村へ帰ろうとした、そのとき、それまで何もいなかったはずの背後から突然、誰かが現れた気がした。
先手を取られる前に相手を打つべく剣を飛ばす。
「おいおい、元とはいえ、仲間にいきなり攻撃はなしだろぉう」
聞き覚えのある声と共にそこには、男が一人いた。
さらには飛ばしていたはずの花弁の剣が、溶けながら地に落ちている。
「何の用なのトリカブト、村にはもう来ないんじゃなかったの」
顔見知りの相手はかつて村から追放されたものの一人、このタイミングで会うのは運が悪いとしか言いようがありません。
村からは、距離がある上に私とこいつとの相性は最悪、逃げの一手をとるしかないと考えて逃げようと後ろへ飛ぼうとした。
「ちょいちょい待ちなってアヤメ、俺は喧嘩をしに来たわけじゃないんだって。ちょっと誰かいないかなーて思ってたらたまたまアヤメがいただけ。わかってくれたかな?」
腹立つような言葉遣い、やっぱりこいつは嫌いだ。
けれどわざわざこんなところに何しに来たのかは気になった。
「信じたわけじゃないけど、とりあえず何しに来たかだけは、聞いてあげる」
「ありがとー、とりあえず、まあ簡潔に言っちゃうと―――――――」
「え」
予想の遥か斜め上をいく回答に言葉が止まる。
「だからぁ人間どもにはもう堪忍ぶくろの緒が切れました、なので、今度はこっちがあっち側に痛い目見さすしかないでしょ。それ言いに来たのとそのことを村で言ってほしいんだよねぇ。仲間は、多い方がいいでしょ、同志たちよ集まれって感じでさあ」
へらへらとした調子で言っているけど目だけは、笑っていない。
それどころが、強い意志や狂気とか悪意みたいなのを感じます。
「どうしてそんなこと考えるの、やられたらやり返すなんてことしたらいつまでも変わらずおんなじことが繰りかえされるだけよ」
「ならどうしろってんだぁ。いつまでも専守防衛がポリシーてかぁ、ふざけんじゃねえよ。人間どもは、どんどん俺たちの森に近づいてきたんだぜ、その上バンバン森を壊してやがる。
それこそやるしかねえんだよ」
声を荒げながらそう言い返される。
「すでに、仲間も数人はいる、今回の勧誘でさらに増える予定だ。お前が知らない、考えてないだけで他の奴は俺と同じかもしれねえんだぜ。それじゃあ、頼んだからな。いや~何人同士が来るか楽しみだぜ」
言いたいことは、全部言ったのかそのまま森の方へ去っていく。
残された私は、どうすればいいかのわからない。
仲間にありのままのことを話すべきか止めておくか、あいつのせいで人間との戦いが激化するかもしれない。
悩んだ末に私は、村の皆にこのことを伝えようと決めた、まだ何も決まったわけじゃない、みんなは戦うなんて考えてないはずと思って村への道を駆けた。
ディーゼル
ゲルトナーの隊員たちには緊急時の時のためや統率をとりやすくするために、一人一部屋単位での寮が与えられている。
もちろん、マイホームを持ちたい人やいらないと思っている人もいるが、ほとんどの隊員たちはこの寮に住んでいるのが実状。
寮といっても八階建てのマンションであり、一人暮らしにはちょうど良い広さと部屋数、俺の家も例にもれずそこだった。
バスを降りゴリ男と別れた後、俺は自分の部屋である三〇六号室に帰る。
高校生にしては普通だろうと思う範囲で散らかったままのはずの我が家を思って家の鍵を開ける。だが、予想に反して目に入ってきた光景はちがっていた。
親切な泥棒が入ったか、それとも部屋間違えたか?
整った卓上や棚、たたまれた洗濯物、掃除機をかけたのかきれいになっているフローリング、数えたらきりがない。
それらの中で最も驚かされたのは、ベッドですやすやと眠っている少女、文目だった。
驚きのあまり突っ立っていると気配でも感じたのだろうかもぞもぞと布団から出てこようとする。
「ふわ~、おかえりー」
「ああ、ただいまー、じゃなくてどうしてここにいるんだ。てか、どうやって入ったんだよ」
つい、流れであいさつをしてしまったが疑問が満載だ。それに答えるつもりなのか、ん、と目をこすりながら窓の外を指さす。
指で指された方、窓のカーテンを開け、ベランダを見る。そこにあるのは物置と植木鉢、植木鉢の方にはあの夜、文目から渡されていた何かの種みたいなものを埋めていわれた通り世話をしていた。
「もしかしてだけど、あの種子ってなんか特別な力とか持ってたりすんのか?」
「そうよ、あの種子、種魂っていって実は私の魂の一部みたいなものなの。魔術というよりも体質的に私たち、自分の命を結晶化させることができるのよ。だからあなたたちは、コアを壊さなければ私たちを倒せないし、逆に結晶を一つだけでも残していれば力は弱まるけど、そこから復活できるの。簡単に言っちゃえばゲームのセーブポイントみたいなものだと考えてもらっていいわ」
「それでいいのかよ……」
「分かったらいいのよ。まあ、その一部を埋めてもらったから、こっちに現れれたってわけ」
いきなりのオカルトっぽいことを言われておかしくなりそうだ。まだ、はっきりと起きてないのか凄い重要なことを言ってるが、とりあえずうなずいて振り返った目の前に文目がいた。
前は森の中だったが、改めてはっきりと灯りの下で見てもきれいな顔立ちをしている。
上をむいた長い眉に特に高いわけでないが整った鼻、少しつり上がった眼尻は彼女の性格が出ているようで愛嬌もあるように思える。
こんなきれいな子と一緒にいることが知れたら大変だろうなと思う。そんな文目に少しドキッとして顔を逸らそうとして気づいた、
「て、お前どこからそれ見つけてきたんだ」
布団から出てきてすぐ後ろにいた文目に驚いてスルーしそうになったが、もう一つ、つい聞いてしまう。
「あー、この服の事? ここに来た時に服を借りようと思って探してたら見つけたの、これ家族のかと思ったんだけど見た感じ一人暮らしよね、ということは自分用とか……」
「いや違うからな、それは妹の。あいつ別のとこに住んでるけど、時々来るからいくつかおいてるんだよ、俺のじゃないからな」
「フーン、妹がいるんだ。でもあなたも案外似合うんじゃない」
見たことある女子向けのペンギンのシルエットがデザインされた服で、そんなことをいいながら布団を整えた後、食卓の椅子に座る。
「ほらほら私だって遊びに来てるんじゃないんだから早く座る。あの時の話の続きをしましょう」
いまだ窓の側にいた俺は、別の椅子を持ってきてから対面に座って向き合った。