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59,真実

「さて、理解はできたかの。説明のため場所を移りたいのじゃが」

「ちょっと待てよ………今暮らしてるのが俺たちのいた世界? いやいやそんなわけないだろ。それにこれが記憶だとは限らないだろ。あの俺だって幻を見せているだけかもしれないし。そうだよ、ほかに証拠はないのかよ!」


 子供の言い訳のようにしか聞こえないその言葉はボケを呆れさせるのには十分だった。

 もう少し冷静に考えるかと期待していたボケからすれば、今の日々野の姿は残念極まりないもの。

 まったく、所詮は人間のガキにしか過ぎないのか。


「証拠じゃと? そんなものありすぎじゃろうが。第一、なぜお主ら人間と儂らの言葉が通じるのじゃ、それに今まで見てきたものを思い出せぬのか? 家も乗り物も食料もヒナゲシが持っておったハリセンも、お主が知っておるものばかりじゃろうが」

「それは、なんか、あの神様とやらがしたんじゃなかったのかよ!」

「お主こそ、踊らされておるだけではないか。自分で少しでもここが異世界と思う理由を見つけたのか? 探したのか? 儂らのことも知らんでおっただけかもしれぬだろうが」


 ボケの正論に日々野は黙るしかなかった。


「まあ、言い過ぎたかのぉ。とりあえずは最後まで見てみんか、ほれ」


 ボケが手を振ったとたん、チャンネルでも変わるかのように景色が一変する。

 さっきまでの場所とは別の小さな町、一般的に想像できる住宅が建ちながらも、自然の緑があり、すぐそこまで山が迫て来ている。

 それを見た日々野の頭に鈍い痛みが走り、顔をしかめたがそれ以上に重要なことが浮かんできた。


「ここは、俺の住んでた街?」


 頭に手をやったまま日々野の口からぼそりと言葉が出た。

 確証があるわけではない。

 だが、ところどころに懐かしい雰囲気を感じるのだ。


「正解じゃ。うっすらとじゃが覚えておったか。この街にはわしらもよくお邪魔しとったから感慨深いわ」

「お邪魔してたって、どういうことなんだ」

「言葉通りじゃい。この街は村からも近くてのぉ、何か欲しいものがあったりしては散歩がてらに出かけとった。……そのせいでまさかあんなことなるとは思わんかったわ」

「あんなことって」


 日々野の質問に答えることなく先ほどと同じように手を振るった、が、浮かび上がった光景は全く異なるものだった。

 何があったのかわからないが、建物は半分以上が全壊してかろうじて残っている建物も無事とはいいがたい。

 何か所で火の手が上がっており、付近の山にも飛び火して収集のつかない事態になっている。

 未曽有の天災か世界大戦でも起こったのだろうかと思ったが、違う。

 頭の中で何かが引っ掛かり、知っているはずのこの大惨事の原因が思い出せない。


「何が起きたかまだ思い出せぬか? ならば、もう一押し導こうかのぉ」


 今度は手を振るのではなく、空中を歩いて燃え盛る街の中に進んでいく。

 それに引っ張られるように日々野と周囲の風景も移動していき、気づけば地面に足がつくところまで下りてきた。

 そのままボケは歩いてゆき、日々野は炎に包まれた通りや倒れている人を見るたびに激しくなる頭痛をこらえながら後をついていく。

 しばらく歩き続け、ボケが足を止めた。


「これが真実、そして最後のお主の記憶のぴーすとやらかのぉ」


 今は業火に包まれて見る影もないが、記憶のなかでこの場所は街の中で特ににぎやかな公園の一角の噴水広場。

 だがそれだけではない、ごく最近もこの光景を見た、あの夢と同じ光景だ。

 そこまで思い出したところで、なにかが脇の茂みから飛び出してきた。

 バウンドしながら転がって、ようやく止まったそれは二人の男女のよう。

 女の方を守るように抱きしめている男の方は全身血まみれで、医療にかかわりのない日々野でも助からないであろう量の出血だと予測できるほど。

 反対に少女の方は一見血まみれだが、よく見ると男の血が付いているだけで怪我の方は()()ましなよう。

 だが、日々野はそれ以上に重要なことに気づいてしまった。

 この二人は自分(ひびの)とアヤメだ。


「あ」


 瞬間、何とか耐えていたはずの頭痛が消え去り、同時にすべてを思い出した。


「そうだ、この後あいつが」


 二人を追ってきたのだろう、茂みだった木々が見えない何かに根こそぎ(えぐ)り飛ばされながらそいつが現れた。


「……まったく、ようやく見つけたというのに……面倒な奴が一緒にいたようだ。おかげでこいつが働かない」


 これは記憶を見ているだけのはずだとわかっている。なのにその男からはあの時感じた圧倒的な存在感を感じた。

 手には身の丈ほどの大きな黒鎌を持ち、まるで死神のよう。

 そして、黒鎌はこの距離でも今の自分が使っているものと同じ物だとわかる。


「……モーテス!」

「ようやく思い出したようじゃのぉ、じゃが最後まで見てもらうぞ。お主の知らぬこともあるじゃろうし」


 ボケが何か言っているが日々野の耳には入ってこない。

 蓋をされていた記憶が一気に流れ出したせいで混乱している状態に近いが、それ以上にあの時抱いていた怒りで頭の中は埋め尽くされていたのだ。

 

「日々野、日々野起きて!」

「なかなかどうして殺すには勿体ない奴だ、がしかたないか」


 目を覚ましたアヤメにモーテスが鎌を振り上げた。

 あの時は薄れゆく意識の中で見た光景がはっきりと見せつけられる。

 

「やめろーー!

「ほい、もういいかの?」


 ひょうきんな声とともに世界の時が止まった。

 振り下ろされた鎌はアヤメに届く前に止まり、周囲の炎も動きを止めている。

 何が起こったのか一瞬わからなかったが、すぐに自分がいるこの世界のことを思い出した。


「わしもこの先は見せたくないからのぉ。誰かが斬られるのをそう何度も見る趣味はもっておらんし」

「……そうか。感謝するよ、長老。俺も全部思い出した。確認だけど記憶を封じてたのはモーテスだよな」

「うむ。そうじゃ、モーテスの仕業じゃ。すべて思い出したのなら、後はあっちで話してよいじゃろう。それでは戻るぞい」


 止まっていたすべての記憶の映像が白く薄れていき、すぐに日々野の意識も暗転した。




~~~~~~~~~~~~


 パチっと木に燃え移った炎によって音が鳴った。

 周囲はすでに炎に包まれていたが、その中心にはまだ三つの人影が残っていた。


「ふむ、浅かった? いや、喰尾龍のわずかな抵抗といった所か」


 振るわれた鎌はアヤメごと日々野を突き殺すはずだったのだが、アヤメを貫き、日々野に切っ先が届いたところでモーテスの意志に反して、まるで空間に固定されたかのように動かなくなった。


「使えない駒だ。あの堕神の使い魔というだけある」


 モーテスが鎌から手を離すと鎌は姿を消してしまい、アヤメは日々野に重なるように崩れこんでしまう。

 刃が抜けたことによってアヤメの胸からは血が大量に流れ出るが、そんなことを気にする様子もなくアヤメに手を伸ばした。


「まあいい、虹の姫神は見つけた、ことだ、と、ん?」

「悪いが思い通りにさせるつもりはない」


 モーテスさえ気が付かないうちに、白い霧のようなものがあたりに充満していた。

 その霧のせいなのかモーテスの視界は不均等に揺れ、全身の感覚が痺れ始める。


(まさか、この世界にこれほどの者がいるとは!)


 モーテスは自分が油断していたこと、そして敵対者への怒りを抱きながら伸ばしていた手を引いて距離を取る。

 周囲は炎に囲まれているが、この程度ならばどうにでもなる。

 問題はすでに内側には濃霧が立ち込めている、つまり敵の舞台が出来上がっているということだ。


「誰かは知らないが、神が、この私が少し遊んでやろう」

「残念だが、遠慮させてもらいたい。悔しいが真っ向から戦って勝てる自身がないのでな」

「ほう、分をわきまえる者は嫌いではない。だが、我の誘いを断ることは許されん!」


 どこから聞こえているのかはっきりとしない声に対してモーテスは神威を放つ。

 それによりあたりを囲んでいた炎は消え去り、麻痺していた感覚も八割方戻ってくる。

 だが、肝心の濃霧は殆ど変わりないまま。

 いまだモーテスからは敵の位置がつかめない。

 ヒュン、

 何かがモーテスの背後から飛来する。

 それを神気ではじくも間髪入れずに今度は前方から、そして続けて右から三連。

 休む間もなくモーテスに飛来してくるそれは、ほとんどが神威をまとった状態の腕で簡単に払えるのけれる程度の攻撃力だが、いかんせん数が多い。

 そのうえ時折、薄い神威では破られてしまう程の威力の高いものを混ぜられており、明らかに足止めをするものだと分析しながらも気配のつかめない敵に話しかける。


「ほう、この霧を硬質化させての攻撃か。芸が混んでいる」

「それは結構なことだな」

「うぐぁ」


 突然の肝臓撃ち(レバーブロー)がノーガードだったモーテスに入る。

 視界を下げるとそこには白髪の初老の男が、拳を打ち抜いた体勢のままでいた。

 霧の弾幕に紛れながらとはいえ、この超近距離まで気づかせずに接近してきた。かなりの強者だ。

 反撃に神威を放つも、確かに当たったはずなのだが手ごたえが薄い。


「ククク、まさかこれほどとは。甘く見ていたようだ。全力で潰してやろう!」


 モーテスが全力で神威を放つ。

 戦いに敗れてこの世界に逃げてきたとはいえ、すでに怪我も癒え、回復も済ませたうえでの全力。

 先程までとはけた違いに圧倒的な威力で放たれた神威は周囲の建物ごと濃霧を吹き飛ばした。


「フハハハハハ、どうだこれが我の、神の力……だ?」


 濃霧は晴れ、荒れた街並みの景色が見えるようになった。

 だが、そこに敵の姿はなかった。

 それだけではない、倒れていたはずの二人の姿がなくなっているのだ。

 そこから導かれる結論は一つしかないだろう。


「逃げたのか、それも虹の姫神を連れて……! 許さん、許さんぞ! 見つけしだい神に背いた罪で処してやろう!」


 モーテスが叫ぶように笑いながら、()()()()()と言葉を叫ぶ。


「神兵召喚!」


 呼び声に答えるように影が蠢き、次々と純白の甲冑に身を包んだ羽根の生えた兵立ちが現れる。その数、三百。

 それらは一斉に飛び立つと急加速して、探索を開始した。

 圧倒的な数の神兵を召喚した事へ自負、そして罪人をすぐに捕獲できるだろうという余裕からモーテスは高らかに声を上げた。


「この数の我が神兵に逃れれる訳がない、今に無様な姿を見せるがいい! フハハハ!」


 召喚者(モーテス)の感情の高ぶりに答えるように新兵達の動きにキレが一層増した。


 だがしかし、神兵達によって二日間捜索されたがモーテスに拳を当てた敵と虹の姫神を見つける事は出来なかった。

 見つかったのは傷がなかったかのように癒やされた少年だけだった。

波線以降の部分は記憶の再現が打ち切られた後に本来起きていた日々野の知らない出来事です。

記憶の再現と言っても、日々野のものではありませんので。

さて、モーテスと戦った男は誰でしょうか?

分かにくいかと思いますが、ボケです。

百数年前の事なのにボケは今よりほんの少し若いくらいの容姿でした。

実は結構強いんですよね。このお爺さん。


以上、突然の内容説明でした。


次回の更新はいつも通り次の土曜日です。

読んで頂きありがとうございました!

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