57,世界樹の村
世界樹の村
名前にもある通り巨大な世界樹の根本に作られた小さな村である。
住民は五十人ほどで全員が植物人だということは言うまでもない。
植物人は人間側からすれば恐ろしい敵であるが、人間が出会っているのはこの五十人の中の一部の者達でしかない。
五十人のうちゲルトナーと戦っている者は十人にも満たない。ほかの者たちは戦闘を好まずいつか人間たちがこの村を訪れるときをただのんびりと待つだけだった。
そんな村の様子も今日は普段とは違い、ざわついた村人たちが各々の家から村の中央を歩く三人組の様子を窺っていた。
~~~~~~
「なあ、ほんとに村に案内してくれてるんだよな。さっきから霧も濃くなってきたし……道間違ってないか」
「心配すんな。もうすぐ着くって」
日々野は新たな友人?ロッジの先導のもと世界樹の村に向かっていた。
だが数分ほど前から深い霧が出てきて、今もそれは晴れるどころか一層濃くなっている。すでに後ろのカグヤは見えず、前を行くロッジの背中も白く包まれ始めて不安は募るばかり。
もし何かあった時のために全身を障壁で覆うかなど考え始めた時だった。
「着いたぞ」
その言葉と同時に前にいたはずのロッジの姿が消える。
とっさに立ち止まり、いったん後ろに戻ろうとするがその背中をカグヤが押し返す。
「大丈夫だって~、安心して飛び込んで」
「ちょ、何をって、あれ?」
突き飛ばすにも近い強さで押されたせいで躓きながらロッジが消えた霧の奥へと進み、とたんに霧が晴れる。
そこに広がっていたのは少し開けた土地にある小さな村と圧倒する程大きな樹がある光景だった。
後ろを振り返るがそこに霧などは存在しておらず、ニコニコとしたカグヤが立っているだけで、まるでキツネにつままれたような気分。
「ウフフ、驚いたでしょ~。これは今から会いに行く長老の能力なんだけど~、すごかったでしょ~」
「まあ確かに、というか今からその長老に会いに行くんですか!」
「ええ、言ってなかったかしら~?」
「言われてないです!え、アポとか大丈夫なんですか」
「バカかよ。お前、今の立場わかってんのかよ。お前は敵地に単身乗りこんできた敵で、俺とカグヤがいなかったら、そこらへんで窺ってる奴らともう戦ってるところだぞ。アポとか言ってる場合かよ」
「そうよ~どれだけ非常識なの~?」
(まったく、先が思いやられるわい)
カグヤだけでなくロッジに鎌の中のウロボロスまで呆れられる始末。
それを言われてようやく日々野は自分に向けられている気配に気づく。村からだけでなく森の方からもいくつかあるようだった。
もしもロッジが言うように戦闘になっていたら不意打ちを受けた上に集団で攻められていたであろう。
「まあ、カグヤだけで十分だと思うけど、俺も長老のところに行かなきゃなんねえし一緒に行ってやるよ」
「あろがと、カグヤさんだけじゃ心配だからな」
「ば、人間が敵に向かって感謝なんてすんなよ、ほら行くぞ!」
ロッジは恥ずかしかったのか嬉しかったのか顔を赤くしながら村に向かって歩き出す。
あからさまな態度につい、日々野はカグヤとにやけてしまう。
「それで、ロッジの用事って何なんだ?」
すぐに追いついた日々野が話の話題にもなればとロッジに聞いてみるがそれは地雷でしかなかった。
ここまでの出来事を考えたのなら、もしかしたら予想できたことなのだが、それも後の祭り。すでに言ってしまった後のことだ。
さっきとは一転してロッジが日々野の腕を掴んでくる。
「ああ?お前が俺の警備範囲に来た挙句、ぶっ飛ばしてくれたからその報告に行かなきゃなんねえんだろうが」
そういいながら離した腕には輪っか状になったあの爆弾の実が付けられていた。
「俺もこの村での立場ってもんがあるからなあ、捕虜という名目で長老のところまで行こうぜ。安心しろよ不審な動きさえしなかったら爆発させないからよお」
明らかに腹いせと見える行動だが、腕に爆弾を付けられた日々野としてはそんなことを軽くしてんじゃねとしか言いようがない。
だがロッジの意見も一理ある。
爆発も障壁を発動させていれば火傷くらいで済むとわかっているし、これでロッジの体裁もたつだろうからおとなしく従うしかない。
日々野は仕方ないと言ったようにロッジとカグヤに護衛するかのように前後を挟まれて行くのだった。
次回の更新予定は3月以降です。
待って頂ける方がいたら嬉しく思いながら出来るだけ速く更新したいと思います。




