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 森の中をかける二つの影。

 一つは淡い色の和装を着たカグヤ、もう一つは見慣れた隊服を着て背中には鎌を背負っている日々野だ。

 森に逃げ込んだときは植物人であるアヤメの速度に追いつくことができていなかったが、ウロボロスとの契約に成功した今の日々野にとってカグヤの後を追うことはそう厳しいことではない。

 ゆえに木々の間を駆け抜けながらも()()()と会話をすることも問題ないことだった。


「ところで聞けてなかったんだけど、俺と契約してくれた理由って何なんだよ。気まぐれってわけじゃあなさそうだし、面白そうってだけじゃないんだろ?」

(うむ、そうだな。暇つぶしに昔話でも話しておいてやるか)

「関係あるんだよな。今の話に」

(あるに決まっておるから話すのであろうが。

 うむ。その昔、一人の強き男が風の噂で世界の端に眠る竜の話を聞いた。山一つ分の巨体に天地を割る力を宿してるなどと恐れられている竜だと。ちなみに、これが若いころの我。

 その男は我に配下になるようにと言ってきたが、その頃は我も荒れていてなあ、即座に殺し合いになった。文字通り、山は砕かれ、天地は裂け、世界が終わるほどの戦いだった。しかし戦いの果てに我らは互いを認め合い契約を結んだのだ)

「ごめん。それ全部昔話というよりも、俺若いころはヤンチャしてたわー的な話に聞こえたんだけど」

(まだ重要なことは話しとらん。その男が我を配下に使用としていた理由がお前とは真逆だった、強者でありながら更なる高みを目指し、世界を救うために神を殺せる仲間が必要なのだと)

「はあ、お前とタイマン張れるだけの実力持ってて、神を殺すためね。確かに俺とは真逆だな」


 納得した様子でうなずく日々野。

 鎌の中にいるウロボロスとはすでにかなり打ち解けて話せる中になっていた。念話の感覚で意思疎通ができるので移動中、このようにたわいない話を続けていたおかげでもある。


「ねえ、いい加減ぶつぶつ話すのやめてくれないかしら~?気になってしょうがないのよ~」

「すみません、まだ慣れてなくて」

「も~、そろそろ村に着くから緊張感をもってよね~」


 風に負けないように大声でカグヤに注意されてしまう。

 会話の中にも出てきてのだが、彼らが向かっているのはディーゼルではなく植物人の本拠地、世界樹のもとにある村だった。


~~~~~~~~~~


 さかのぼること数時間、契約を終えた日々野を待っていたのは登り切った太陽と一面のキメラの山、そして少し驚いた様子のカグヤの姿だった。

 

「ただいま戻りました」

「あら、予想よりも早かったけど・・・あきらめたって顔じゃないわね。雰囲気もちょっと変わってるし」

「契約は完了しました。それと、これって守ってくれてたんですか?」


 日々野があたりを見渡しながら苦笑いとともに聞いてみる。

 最初に見たアリ型からハチ型やイヌ型、ほかにも見慣れない姿のものが散乱としているが一定の範囲から内側には誰も踏み込むことができずに絶命したようであった。

 カグヤは日々野が鎌の世界に行ってから一日以上の間これだけの数を相手にしていたはずにもかかわらず傷どころか疲労すらうかがえない。


「それもあるけど、鬱陶しかったからよ。木人(トレント)に任せてもよかったんだけど暇だったのよねえ」


 との回答に日々野は内心8割関心2割あきれた。

 だが今はそんな場合ではない。ウロボロスに宣言したように日々野はアヤメを助けるためにここ数日間過ごしてきたのだ。


「それじゃあ、カグヤさん。アヤメを助けに行きましょう」

「残念だけどそれはあなたの役目じゃないわ。今から私たちが行くべきなのは世界樹よ。そこでやることやってアヤメちゃんたちを待つのよ」

「え、でも俺は」

「あなたにはあなたの役割があるのよ。いいから言うことを聞きなさい」


 有無を言わせぬ強い口調と冷たい視線に日々野はしぶしぶ従うことにする。

 たった数日の間だけだが一種に過ごしたカグヤに対して、ある程度の信頼が生まれていてその判断を後押しをしたのだが本人はそのことに気づいていない。


 この後”お試し”という名のもとにカグヤ直々の暴力が小一時間ほど続いたのだが、それは省略カットで。


~~~~~~

 そんなこんなで世界樹の村に向かうことになった日々野達だが、人間である日々野がどのような対応をされるのかは考えるまでもない。


 遭遇➡戦闘➡死亡


 この一択に尽きる。


「カグヤさん、ほんとに大丈夫なんですよね。出会ってすぐに切りかかられるなんてことは勘弁ですよ」

「まあね~こう見えて私、一応村の仲間たちからは一目置かれてるし~」

「なら大丈夫なんですよね、信じますからね」


 もうすぐ村に着くらしく並んで歩き始めた二人の会話はこれだった。

 日々野もなぜか大丈夫と言わないカグヤに心配しかなく、鎌を手に持った状態でいつ襲われも防ぐことぐらいはできるようにしている。


 それに加え日々野は奇妙に思っていることが一つあった。

 頭上が森の木々でふさがれているとはいえ、ところどころに切れ目はある。そこから見えるのは青い空以外は何もない。試しに上ってあたりを見渡しても見えるのはどこまでも続く森だけ。

 そう、世界樹どころか集落の一つも見つからないのだ。

 カグヤとの距離感の違いかと思うが、終着点には世界樹があるらしい。それなら他とは違う木の頭くらいは見えてもおかしくないはず。

 気になったことは聞いてみるのが一番だと思い隣にいるカグヤの方を向いた時だった。

 突然カグヤが数歩後ろに下がり、立ち止まる日々野に一言。

 

「足元、気を付けてね」


 言うが早いか、足元の地面が爆発した。

微妙な所で終わってしまいました。スミマセン。

次回は遂に覚醒後初の戦闘!


いつも通りの土曜更新予定です。

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