49,鎌の中へ
「それじゃあ明日に迫った訓練終了日に向けて最終訓練を行うけど準備は良いかしら?」
「昨日の期日が二日間って本当のことだったんですね。でも、最終訓練って言っても俺何にもしてないと思うんですけど。昨日は鎌を使った防御法だけで最後は倒れてたみたいですし……」
「そうね。特に強くはなってないでしょうね。でも大丈夫、重要なのは今からだから」
一夜明けた二日目。
昨日と同じ森の中の開けた場所に俺とカグヤさんは来ていた。
あれだけ厳しい動きをしたというのに体のどこにも不調はない、むしろ体の奥底から力が湧き出てきている気すらする。
まあ、それらは置いておくとして問題なのは今からされることについてだろう。
「質問良いですか」
「構わないけど、何かしら」
「俺って今から何されるんですか? なんか着々と準備進めてますけど」
そう、既に場は整ってきている感じがしているのだ。
カグヤさんが書いた魔法陣のようなものの中央に座らされて、その外側に色々と付け加えているようなのだが予想通りと言っては何だが全く読めない幾何学な模様のようなものばかりだった。
「ああ、まだ説明してなかったわね。これは私の能力を強化させる特殊な陣、そうねそろそろ出来上がるから、そしたらまとめて説明してあげる」
「サイですか」
座ったままの体勢でカグヤさんが便利な竹槍をつかって全てを書き上げるまで待つこと暫く、全体の確認を終えると俺の真正面に立って話し始めた。
「今からあなたには鎌の内側にある世界に行ってもらいます」
「鎌の中?」
それは別世界的的な所だろうか?
異世界に来てまで別の世界に行くことになるとは考えていなかった。
「そう鎌の中よ。そこですることは二つ、一つ目は鎌に封じられている力を開放してくること。二つ目は解放した力の持ち主と契約すること。どんな相手なのかは教えられないけど覚悟はしておきなさい」
「武器はどうなるんですか? 鎌の中の世界ってことは鎌がないわけで、外にあるのを呼んだら俺が……ややこしくなりませんか?」
「使えるはずよ。鎌の中の世界と言っても喩えに近いから。それよりも注意することが一つ、鎌の世界とこっちの世界では流れる時間に差があるわ。この陣で出来るだけ調節するけど、二日で終わらせてきなさい」
二日か。結構あるように思うが実際にどんな世界なのか行ってみないと短いのか長いのか判断できない。
それと鎌の力の持ち主というのも時折、頭の中に響いてきた声の主のことだろう。
なぜカグヤさんが鎌の中の世界なんてものを知っているのか不思議で仕方ないが、今はそれを信じていくしかない。
「それじゃあ、始めるわよ」
覚悟を決めた俺にカグヤさんが合図を掛けたのと同時に視界が回り始めた。それに加えて全身の重さというのか肉感が薄れていく。
「死なないでとは言わないわ。むしろ、死ぬ気でやってきなさい」
そんなことをカグヤさんが言っていたような気がしながら俺の意識は鎌の内側の世界へと旅立った。
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「入ったみたいね」
陣の中心に倒れこんだ姿を見ながら呟いた。
「(日々野君の鎌にいるあれは半分とはいえヤヌスの眷属であることに変わりない)」
カグヤは日々野が全てのことを成功して帰ってこられる確率は良いとこ二割だと思っていた。
だが、どれだけ確率が低かろうとカグヤはこの試練を受けさせなければならなかった。
今のままの日々野ではこの先弾除けにすらならない。
「これだけしてあげてるんだから、ちゃんと帰ってきてほしいわ。……アヤメちゃんのためにも」
今は捕らわれの身となっている妹のような存在を思いながらも陣へ送る力の調整も怠らない。
因みに今カグヤが使っている能力は“泡沫”。一定範囲内の時間を操ることができるようになるというもの。
本来ならば鎌の中で過ぎる一時間に対して現実世界で過ぎていくのは約一日、それを遅らせまくって二日間という期限を得ることができたのだ。
契約には一般的に四日から長い場合十日もかかることもあるほど難しいことだと聞いている。それを考えると二日というのはかなり無茶なものだという事が分かる。
だが、能力的にも時間的にもこれが限界だったのだ。
「さてと、何時来てもいいように私も準備しておこうかしら」
そんなことを言いながら陣の周りをゆっくりと歩き始める。
一体カグヤが何をしようとしているのか、だれも知る由などなかった。




