46,選ばれし者と反逆者と迷い人
4月19日
「まさか、反逆罪に加えて植物人の野郎と手を組んでたんてな。日々野の奴何考えてたんだよ」
ゲルトナー本部にあるフリースぺースにある机に拳を叩きつけながらゴリ男は悔しそうに呟く。
円形上のテーブルに座っているのはゴリ男だけでない、日々野の義妹である響火とチームメイトであった霧立に加えて同じく指名手配されたアヤメの先輩である弥生の四人だった。
「お兄ちゃんは裏切ったんじゃなかったはずだよ。きっとあの植物人に誑かされただけだったんだよ、じゃなきゃ聖王会に歯向かうなんてことしない! 全部あの女が来たせいだよ」
「アヤメちゃんを悪者みたいに言わないでくれる。お兄さんにも何かあるはずだと思うけど」
「はぁ? なんでなの? だってお兄ちゃんはゲルトナーの一員だったし今までは何ともなかったもん。能力とかで騙したり洗脳したに決まってる! 植物人なんて私が全部殺してやる」
「あのねえ。子供だからって何でも言っていいと思ったら間違いだからね」
アヤメの話しの中で二人がどれだけの覚悟を決めて行動していたかを聴いた弥生にしたら、何も知らずに一方的にアヤメだけを責める響火の言いぐさは我慢ならなかった。
だが、響火もアヤメは見知らぬ女、ましてや敵であり滅ぼすべき存在である植物人、があり兄と関わっていたこと自体怒りの原因の一つであることに変わりない。
お互いに引くことは許されない一線があるため熱くなるばかり、終には弥生が立ち上がり響火の襟首を掴もうとしたところで仲介が入った。
「死んだのに……何言っても……無駄」
ぽつりと呟かれた一言に沸点まで達しそうだった二人が凍り付きおとなしく席に戻る。
傍観していたかのようにひっそりと座っていた霧立のその一言は彼女の神鎌である鉈以上に鋭く、底知れぬ怒りが込められていた。
霧立の言ったように今朝がた聖王会から反逆者日々野の死亡、そして植物人アヤメの捕縛が伝えられた。
森の奥に逃げ込んだようだったが神の僕達によって居場所を特定し襲撃。聖王会やゲルトナーの捜索隊が発見したときにはアヤメの方は川辺で気絶しており、日々野の方は大量の出血の跡とそれが滝の上で途切れていたことから何かとの戦闘の末、死亡したと判断したそうだ。
このことについてはゲルトナーの隊員は勿論、この街の人々に聖王会の権力と歯向かおうなどすればどうなるかを知らしめる意味も込めて放送された。因みに星月隊員については捜索中とされている。
「何言ってもお兄ちゃんが死んじゃったのが変わらないっていうのは分かってるよ。でも、その植物人も他のもまだ生きてるんだよ! そいつらにはなんだってできるもん!」
「その通り、素晴らしい心がけだ!」
高らかに叫ぶような聞き覚えのある声にその場にいた全員の視線が一点に集中する。
話に熱くなっていた四人はすぐそこに近づいていた声の主、この街の重役たちを従えた神モーテスに
に気づかなかった。
神が個人に話しかけてくるという事態に注目の的となってしまい霧立以外の三人、弥生は違う理由だが、は緊張のあまり心臓が縮こまるほどの緊張に襲われる。
「君のお兄さんについてはとても残念に思っている。捕まえた植物人が吐いた事なんだが、こんなことをしたのは人間を騙してこの街に忍び込むため。だから正体がばれてしまった後は用済みで森に逃げ込んだ後に始末したそうだ」
「そんな……」
聖王会がアヤメを捕まえたことは周知の事実、故にモーテスの言っていることは真実だと響火とゴリ男は思い、響火はつい言葉が出てしまう。
「悔しいと思うが今の我々には戦う力が足りていないことはゲルトナーの君たちなら理解していると思う」
「はい。俺は神鎌すら持つことができていません。だから防衛班の方に甘んじることしかできなくて」
「気にすることはない、何故ならここだけの話神鎌などもう必要ないからね!」
神鎌など必要ない。
その言葉に四人は驚き、付き従っていた重役たちは言ってしまったかと厭きれるように顔をしかめたり満足気にニヤケル者などバラバラの反応だが、これが事実であるという裏付けだと暗に感じ取れる。
「この前、ゲルトナーの隊員達に検査を受けてもらっただろう? その検査は新しい兵器に関する適合率を調べるものだったんだ。結果は勿論二人とも十分な数値だったから、こうして連れに来たんだよ。どうだい植物人を圧倒出来るだけの力、欲しくないか?」
堂々たる演説ッぷりは神の名を冠するのに相応しく、その誘いは響火とゴリ男にとって最も効果的な内容に違いなかった。
響火は復讐を実行出来る力、ゴリ男は復讐だけでなく植物人と戦える力が手にできる事に我先にと言ったように立ち上がり差し出されたその手を握る。
「ん? 二人は何か言っていたようだが、今回は何も聞かなかったことにしてあげよう、この二人に免じてね」
「……クズが」
傍観に徹していた霧立がモーテスの言葉に取って代わったように殺気立ちながら睨み付けるが、モーテスは蔑みを含んだ視線を向けるだけだった。
視線を合わせること数秒、モーテスが先に人間らしい行為をすることに飽きて他に何も言うことなく重役たちを引き連れてその場を後にした。
霧立と弥生も段々と増える周囲の何を話していたのかという好機の視線を避けるべく席を立った。
戦場を何度も経験した上に神に対して理由はともかく悪感情しかもっていない霧立は何ともない様子だが、弥生の方はあの場の張りつめた空気と日々野と同じように反逆罪で殺されるのではないかという不安のせいで顔を真っ青に染めている。
「ねえ、霧立さんはあんなことを言って怖くなかったの? 殺されるのかもしれないんだよ」
自分より年が下で外見も幼い霧立があまりにも変わらない態度でいることへの疑問と、少しでも話をして気持ちを紛らわしたいという思いから尋ねかける。
問いかけられたその言葉に立ち止まり弥生の方を振り向く霧立の表情はさっきまでと何も変わっていないはずだが、どこか暗さを感じさせる無表情。
「負けたく……ないから。あのクズにも……仲間にも。……貴女はどうなの? 何も言わないのは……死んでる……んじゃない?」
十三番隊の面々にも話さないほどの珍しい長い言葉で弥生の問いに答え、そのまま返事も聞かないというつもりなのか颯爽と小走りで去っていく。
残された弥生は一人、霧立が残していった言葉に立ち尽くしていた。
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