41,クエスチョンタイム
「それなら、これについて何か知りませんか?」
ゴトンと鈍い音を鳴らしながら具現化させた喰尾龍鎌を机の上に置く。
ほかにも聞きたいことはあるがなぜこれについて聞こうと思ったのかは、植物人の中にモーテスのことを知っている人がいるのか気になったからだ。まあ、武器を見せることについて多少の抵抗はあったのだがリンドウの出方をうかがうのにも良いだろう。
「人間の武器か。……これは」
「どうしたのよ、別に普通の鎌じゃない」
リンドウがこちらの様子をうかがいながら鎌に触れるとすぐに、何か感じたのか目を見開く。アヤメに関しては今まで何も感じていなかったのだろうからそれを疑うような目つきになっている。
「アヤメ、お前は今まで何も感じなかったのか?」
「やっぱり、何か分かったんですか」
「ああ。今まで人間が俺たちを殺せることに疑問を抱いていたが、これで納得した。この武器から俺たち、植物人に近い力を感じる」
どこか予想はついていたのだろう落ち着いた口ぶりでリンドウはそう言う。まさかとは思いながらもアヤメの方を見るが信じられないといった顔をしていた。
「アヤメは今まで気づかなかったの?」
「べ、べ、別に気づかなかったわけがないんじゃなくて鎌に触ったことがなかったからだし。っていうかリンドウの言っていることが嘘なだけかもしれないでしょ!」
「これを見てもか?」
疑心の意を持つアヤメに対して確信を得たような口ぶりでリンドウが再度鎌に触れたかと思うと、鎌の内側から何モノかの強烈な気配と衝撃が発せられた。立ち上がっていた俺とアヤメは咄嗟に身構えたので何とかその場でふら付きかけただけだったが、リンドウの隣にいた鈴は椅子ごと後ろにひっくり返っている。
「確かに、いまのはリンドウの力じゃないわね」
「俺の言うことが嘘ではないと分かってもらえたか?」
リンドウが転んだままの姿勢で固まって動かない鈴の手を引き起こす。
アヤメもリンドウも植物人特有の力か感覚でそれついて理解したようだが、俺は少し違っていた。確かに気配は感じたしそれがリンドウのでないことのも分かっていた。ただ、それがなんなのかはわかっていない様子だが俺は違う。今の気配は何度か感じた鎌の中にいるあいつので間違いなかった。
「つまり、この武器を作る材料に……かもしれないってことですか」
「それは違うはずだ。武器の数と比べていなくなった仲間の数が少なすぎるのが第一の理由、もし材料として使われているならば誰なのかまでわかる。それに加えて俺たちの力に近いとはいえ、どこか歪なせいではっきりとは分からない」
「なんでリンドウはそこまでわかるのよ」
「経験と集中力、あとはセンスだ」
あえて同郷の者が使われているかもしれないという発言を避けたのにストレートに言ってしまうリンドウ。あまり気にしていないのところを見ると可能性は低いと考えているのだろう。
にしても歪な力か。あいつと会話したのは片手で足りる程しかないが狂気の持ち主といった印象があるからそのことを言っているのかもしれない。神から与えられたこの鎌と植物人の力は似たようなもの。神様はこの異世界の住民という可能性が出てきたが、それなら俺たちを連れてきた理由は何なのだろう。
「他はないのか」
「ずっと思ってたんだけど、なんでリンドウはそんなに強いのよ」
「タケから何も聞かされていないのなら何も言えない」
「別に良いじゃない。最近はタケ姉、何にも教えてくれないんだし」
「そんなこと俺が知るか……おい日野少し来い。鈴はアヤメと仲良く話でもしていてくれ」
何を思ったのかアヤメの相手を鈴に任せて俺を店の外に連れ出し二人には聞かれたくないのか、裏口から出て少し歩いたところで立ち止まる。ここで話合うってことか。
「急にどうしたんですか? 二人には聞かせたくはないことなんですよね」
「ああ。だが、とりあえずはその敬語をやめろ。本音でしゃべれ」
ぎろりと睨みつけてきたから何事かと思ったら、この話し方が気に入らなかったのか。年上で貴重な情報提供者、それに普段から気が知れた人以外には敬語を使っているから意識せずとも出てしまっていたらしい。それを溜め口にしろって言われてもこっちに違和感がすごいんだが……仕方ない、さもなくば喋らないみたいな雰囲気だし努力するか。
「わかった。で、それはどんな内容で?」
「アヤメが聞いていた力の差についてだ。彼奴もソロソロ気づいているかと思ったんだが、まだ見たいだったんでな。お前にだけ先に教えておく」
力の差。別に個人の力量なだけじゃないかと思うんだけど、流石にあの一撃をそれだけで済ませることは出来ないか。だけれども、俺にだけ教えておくとはどういうことなのだろうか。
「最近、お前が戦った植物人の名前を言ってみろ」
「なんでそんなこと」
「いいから言え」
敬語をやめろと言ったにしては上からな態度。我慢しようとしたがわざと舌打ちをしてから答える。
「何週間か前にタケとアヤメ、それからお前と戦って昨日の戦いでアジサイって奴と戦ったな」
「ならその中で気づいた事、強さの差についてはどうだ」
「種魂の差もあると思うけど、タケには勝ててアヤメとは引き分けた。アジサイは仲間と協力して結果的には勝てたけど、俺一人だと負けてた。ていうか隊長がいなかったら負けてた。お前は………わかってんだろ」
「俺の圧勝だったな。ふむ、その中だとアジサイが丁度良いか。戦いの中で何か変化はなかったか?」
変化か……、そう言えば霧立の溜め攻撃を受けた後に倒れたかと思ったら口調がおかしくなって急激に再生していた。今思えば確かにおかしい。あれだけの再生能力があるのなら初めから使えばいいし、能力に回数制限があるのだとも思えない。あと、妙に攻撃が通らなかったことぐらいだな。
「とどめを刺したと思った後にパワーアップしていた。具体的には口調がおかしくなって再生してた」
「再生は植物人の持つ力が強化されたんだろう。他にはないのか? 特殊な攻撃をし始めたり、あいつだと確か……防御が硬くなったりしなかったか」
「ああ、それならあったけどなんで分かったんだよ。俺と霧立っていうの仲間の鎌と剣が全く通らなかった。切れないけど潰れる感じになってグロかったな」
「それだな。いいか、俺たちの力には二段階、細かく言うならば三段階ある。それが今から話そうと思う大きな力の差だ」
心の準備も兼ねているのかもしれない、何の話の確認は十分だ。
「種魂についてはアヤメから聞いているな」
「力の元でそれが具現化したのだよな。あとセーブポイント?」
「多少分からないところはあるが大方理解しているようだな、手間が省けてよかった。まず種魂は力の塊と言ったが、その力とはいったいなんだと思う」
種魂はいわば魂ってアヤメは言ってたけど、その力が何かなんてのは聞いてない。
なんだと思うって言われても、あのファンタジー感ある攻撃を出すんだから魔力か?魔力っていう言葉があるのかどうか知らないけど。
「魔力とか?」
「……魔力とは少し違う。まあ答えは異世界の生物の力らしい」
「異世界!」
「残念だがお前たちの居た世界ではないから考えても無駄だぞ。とにかく、俺たちはそれが変化して世界樹から生まれ、根本的な性格や能力の違い、個体差はこれの影響だ。そしてこの事に気づくかが決定的な力の差になる。ある奴はこの事を"覚醒‴と呼んでいたんで俺もそう呼ぶことにしているが、ここまでは大丈夫か」
「ああ、一応は」
力の元はここでも俺たちの所でもない、また別の異世界の生物だったとは。てか、異世界いくつあるんだよ。
「覚醒した者は複数の能力が使えるようになり、身体的にも他とは一線を期す存在になる。だが、このことは自分で気づかなければ意味がない。だから、お前にだけ話した」
「絶対に話さないし、アヤメだったらすぐに気づけるって信じてるから。話すかもしれない心配はしなくても大丈夫だ」
「心配は無用か。仲がよさそうで安心した」
安心しただなんて、親みたいな発言をしているがお前達の年齢はいったい幾つ何だと心底思う。
茶化されたような言葉にも捉えれるし。だが、ここは相手のペースに乗らないようスルーだ。
「で、もう一つの段階は何なんだ」
「もう一つは中間に位置する半覚醒の者だ。戦いや些細な切欠で覚醒することが多いのだが、稀に力だけが中途半端に覚醒する奴がいる。アジサイは戦いの中で目覚めていたが、最後まで真実に気づけなかったのだろう。不断の能力と再生強化と言った所か」
「不断の能力か、だから攻撃が効かなかったのか」
アジサイで半覚醒だったとなると、どうなんだ? 今回は勝てたが他の相手と戦ったら怪しいし、覚醒していた場合リンドウの時のように奇跡を起こすしかないのだろうか。
リンドウに言われたことに対して、何か思い出しかけた事があったが、もう一つ気になったことが出てきた。
「ならさあ、アヤメはどうなんだ? 剣の能力に加えて、お前との戦いの時に一体化しただろ。二つの能力を使えてるから半覚醒者って割り振りで良いのか?」
「アヤメが覚醒するのはそう遠くない。初めて出会った時に、植物人が人間との戦いを望まないなんておかしいと思わなかったか?」
「別に個人の考え方が」
「さっき話しただろ、俺達の性格や行動理念はベースになった異世界の生物に影響されていると。つまり、アヤメは自分でも気づかない内に本来の力と魂を引き出してきている例外だと思っておけ」
これで終わりなのか二人が待つ店の方に向かおうとして、ふと立ち止まりどこか意地の悪い笑みを浮かべながら振り返ってくる。その笑みは星月先輩がよく俺をからかってくるときのに似ていて頬が引くついてしまう。
「もう一つ話しておくが、人間と俺たち植物人の間でも子を為せるから気を付けておけよ」
「ちょ、何言ってんだ!」
「真面目な話だ。言っておくが前例のある確かな事で、交際しても将来的に問題はない」
「将来的って、そんなところまで行けるなんて限らないし」
周りに人がいないとは言え屋外でなんてことを言うのか。そんなこと言ったらお前のイメージが丸崩れなんだよって叫ぼうとしたが、それよりも早くすぐ傍まで来て肩に手を乗せてきて、
「頑張れよ」
ポンポンと肩をたたく動作付きで。キャラに似合わないけど気になりますって表情と口調で。それだけ言うと呆然とする俺を置いて颯爽と去って行った。
ぽつり残された俺は決めた。彼奴いつか一発殴ってやる、と。
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