37,ボタン
あらすじ:植物人の過激派集団クラーレを退けた人類。深まった両者の溝はどうなるのか・・・
植物人によるディーゼル及び拠点襲撃の被害報告
民間人 死者71名 負傷者103名
戦闘員 死者98名(神鎌持ち24名)負傷者48名
計 169名(人口の約2,3%)
植物人 確認された九体の内、五体は死亡確認
他四体は逃走したとの予想
ゲルトナーの戦力は半減、軍の人員の損害は少なく新たな戦闘体勢の効果も確認。聖王会から派遣された使徒二名は死亡。大幅な戦力の低下が懸念される。
打開策
戦力となり得る”神の僕”が聖王会より各戦闘帰還に寄贈される予定。同時に新たな志願者を募集し戦闘班の班員補充。
最後にゲルトナーは軍と人員不足解消と神鎌不足の両面で合意したための共同戦線を張る。
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「せっかくゲルトナーのトップになれたと思ったら、軍との協力だなんて。これならパパが生きてた時のほうがましだぜ」
提出された報告書が一枚目しか読まれずに投げ捨てられる。
ワンフロアをぶち抜いた部屋の奥でふんぞり返る一人の男。清潔感のない容姿でスナック菓子を頬張っていた。彼は先の襲撃で殉した蔵餅元総司令官の一人息子蔵餅小金。
この街に来てから急に金持ちになり欲と贅の限りを尽くしてきた彼は亡き父の遺言によって、というか誰も後釜を引き受けなかったため、遂には権力者になったのだ。
とは言え学園にも行かずに金で繋がった不良達とある時まではやりたい放題していた彼にこのような重役は務められないのは目に見えていた。
今は軍の幹部との会議に向けて情報整理などの作業をしているのだが全く進んでいなかった。
「街の情勢など知るか。おい、お前もなんか会議を乗り越えれる知恵を出せよ。王様なんだろ」
ペンを投げ捨てフロア中央のソファーに転がる相棒に声をかける。
「俺様がいなければ何も出来ないのかまったく。王たる者堂々としていれば良いんだよ、心配など弱者のすることだ」
傲慢な態度で起き上ると、小金の机の回りに散らばった資料の中の一枚を拾い目を通し始めた。
小金の方は見下された物言いに、どうなるか分かっていながらも苛立ちに任せて言い返す。
「何が王だ、外壁の外で僕が見つけたときはボロイ身なりだったくせに。俺がいなかったら今頃野垂れ死んでんじゃねえのか」
ピクリと資料を持っていた手が動くと青筋を立てながら振り返る。
「そう言うお前こそ、あの時俺様がいなければ愚民共に半殺しの目に合わせられていただろうに。それを助けてやった報酬が衣食住だ、まあ王への税だと思え」
「ふ、そんなに偉そうにしていいのか? 僕が匿うのを止めて困るのは植物人のお前の方だろう、ボタン?」
人違いではない。アヤメたちの元仲間のボタンだ。
クラーレの一員として村を抜けたが、種魂の半分を星月に破壊され命からがら逃げてきた、二人の出会いはその直後だった。
せめて人間に一泡吹かせてやると思いながらも傷を負った体を休めていたとき、元仲間だった不良に追われる小金が助けを求めてきてた。逃げてきたとしても植物人、不良達を一蹴しそのまま小金の付き人になったのだ。
自分の方が上の立場であると思っているので、ボタンは小金の話を聞く耳も持たずに資料を読むことに戻って直ぐ資料に書かれたある内容にボタンの目が大きく見開かれる。
「これは……くく、まさかこんなに面白そうなことが起きるとは。おい、小金。俺の言うとおりに兵隊共を動かせ!」
「どどどどうしたんだ。 急に叫びやがって!」
「何をって! 今すぐ此奴らを指名手配しろ!」
万遍の笑みと共に顔を上げると大声で叫び、手の中にあった報告書は力のままに握りつぶされてしまう。文章だけ出ないそこに追記されていた写真。そこには少年達と一人の少女が写っていた。
しばらくは戦闘はないと思います。
次回
二人はこの世界の真実に迫る。乞うご期待!




