27,いざってなると動けない
あらすじ:タケから忠告を受ける日々野。そして過激派が動き出す・・・
今回はガッツリ戦闘ばかりの予定です。
四月十七日
ざわめく街に気を取られそうになるが視線をずらすことなく、列を乱さず俺達は門に向かって進む。
あの会議で星月先輩の案は採用された。
出撃のメンバーもその場で決まり、各隊の隊長と副隊長、二十四名と実力があると思われる六名の計三十人の部隊が構成され、その中には俺も含め十三番隊全員が組み込まれた。あと、響火はまだ高一と言うことでメンバーに入っていない。
人員が決まったら次は日程だが、これも即決だった。早い越したことはないということで翌日の十七日、つまり今日になった。
街の住民も何が起こるのか知らない人が多く、ゲートに集まったゲルトナー隊員達を少し離れたところから見守るような形であった。
昨日の今日だが、準備は出来ている。
決戦ということもあり装備は充分に配給されたが、俺が持っているのは武器と最低限の食料と医療品のみ。多いと動きがとれなくなると思ってのことだ。
竜胆の攻撃を受けた経験から半端な防具や医療品は無意味、一撃くらえば次の瞬間には勝負が着いている。防御力よりもどれだけ攻撃を受けずにかわせるか重要だろう。
集まった隊員の中にはそこまで必要か、と聞きたくなるぐらいの防具を身につけている者までいる。たぶん動けなくて一番に死ぬな。
開始時刻の正午を迎えようとしていた時、黒山隊長がメガホンを手に前にでてきた。
「皆、聞いてくれ。たぶんこれが最後の闘いになることだろう。今までで一番死者の数が多くなるはずだ。だが、これに負けてしまえばこの街が終わる、それをさせないため戦い抜くぞ!」
掛け声に返す声は何時もより少ない。
選ばれた隊員以外が叫んでいるだけだ。そりゃ、今まで死ぬ前提で戦いに行くことなんてなかった。だが、前の戦いで多くの死者がでて、命をかける事がどういうことなのか気付いたのだろう。
かく言う俺も竜胆を斬ったときの、あの肉を切る感触が今も手に残っている。ズブズブと沈む剣と生暖かい返り血、歪んだ表情。今までのような何の反応もない草や木を切る感覚とは全く違う、相手が命を持った生物だということを思い知らされた。
アヤメと関わって人と同じだと分かった今、何の抵抗もなく植物人を切っていた自分が恐ろしい。
「日々野、大丈夫か? 真っ青だぜ、無理すんなよ」
「星月先輩……」
後ろからかけられた声に振り返ると、普段のようなチャラけた感じだけじゃない、真剣さも宿しているのを感じた。
自分の顔がそんなに青かったのか気になったりもするが、取りあえず今は気にしないことが一番だ。
「今回の戦闘は確かにヤバメだけど、だいじょーぶ。お前はメチャ強いからな、先輩を信じなさいって」
「先輩だから信じられないんですけど……まあ励ましてくれて感謝しときます。
後、前も聞きましたけど本当に先輩は前回の神緑人戯で植物人と戦っていないんですか?」
「しつこい男は嫌われちゃうぞ、日々野。俺はそんなこと時間的に出来ないって分かったはずだろ」
「そうですよね。疑ってすみません」
「別に良いってことよ。ほれ、もう出撃の時間みたいだぜ」
聖王会の会員達が門の周りに集まり、両手を挙げ呪文みたいなのを唱え始めると、空間が揺れ向こう側が映ってくる。
魔法みたいだが、聖王会曰くモーテス神を信じる者のみが使える奇跡であって魔法ではないらしい。神の力が魔の力である訳がないという理由もあるとか。
それは置いといて、開門の準備が整ってきたようだ。この様子だと後一、二分で向こう側に行けるだろう。
「総員武器を構えておけ! 開門と同時にまとまり兎に角、森の奥に進むぞ!」
黒山隊長の合図で神鎌を呼ぶ声が聞こえ、それぞれの神鎌を具現化して手に握る。
「テールイーター、力を貸してくれ」
俺の手元にも神鎌が現れるが、何処かしっくりこない。違和感というのか何かが違う。鎌の中にある力のようなものを感じてくる。それによく見たら鎌の刃の内側に、まるで手で持つためなのか穴が空いていた。前回の時には気付かなかったが既に変わっていたのだろうか。
思考の海に沈みそうになったが無情にも、そんな時間取らせてくれないようだ。
開門は終わり全隊が突入の合図を待つばかり。
ゴ―――――――――――――――――ン
ゴ―――――――――――――――――ン
ゴ―――――――――――――――――ン
正午を知らせる聖王会の鐘が鳴り響く。
「総員出撃!!!!」
先頭に立ち先陣をきって走り出した黒山隊長に続きゲルトナーの隊員二十九人が走り出す。
残りの一人星月先輩だけが流れに残され誰かと話すように立ったままだった。
「どうしたんですか、先輩全員進み始めてますよ」
「日々野」
口調から感じる真剣さは変わらず、少しだけ笑いながら、
「・・・・・・・・」
何だって。
俺に向かって言われた言葉は叫び声と群衆の壁で塞がれ、最後までハッキリと聞こえなかった。
それより門に向かって走り出したはずの隊員が、反対に戻ってきている。何が起きたのか?
「て、敵襲! 敵襲! 皆戻っグハァ」
「どけ! お前も速く逃げろよ」
戻ってくる仲間達にぶつかられながらも門の方を見たとき声が聞こえた
「んー、ジャストだったねー。ほんと、思うように事が運んでよかったよかった。
んじゃ、後は全員暴れてこい」
ゆっくりと歩いて門の向こう側から出てきたのは仲間達じゃない。九つの人影に息が止まる。
―――――――――――――――――――――――
その少し前(黒山)
黒山の後ろには計二十九人の仲間達が着いてきていた。
俺は戦闘部隊の隊長選ばれた時から、ここに連れて来られた人々と元の世界に帰るため戦ってきた。
ゲルトナーは言わばこの街のヒーローであり、何もしない聖王会とは違うという考えも持っていて自分はそのトップにいると思っていた。
けれども、そんな素振りや態度を全く見せないように動き、おかげで周囲からは羨望のまなざしで見られていた。
今回の戦いで多くの植物人を殺し、自身の英雄伝の一つとなるだろうなどと妄想もしていた。
先頭に立ち、門をくぐり抜けた所で何者かがいるのに気付き武器を構えた時には、何かが腹に突き刺さる。
「キャッホー、まずは一人目ー」
笑い声が聞こえ、怒りによって剣を振るったが当たらない。
後ろから仲間達が続いて出てくるが助けてくれない。悲鳴を上げながら帰っていく。
「な、なんで、おえが。死ぬん、だよ」
「さあ? 一番に出ていたからじゃね。てか、そこ邪魔」
別の男がいつの間にかすぐ側にいて、蹴り飛ばされる。
最後に見えた景色、人影の中にいた一人の顔に見覚えがあった。
神緑人戯の夜、宣戦布告をしてきた集団のリーダー、たしかトリカブトと名乗っていた男だ。
何でなんだ。正義として戦う俺が死ぬなんて可笑しいだろ?
黒山は怒りは消えないまま、息が途絶えた。
―――――――――――――――――――――――
リーダーであろう中央にいる植物人の隣には竜胆がいた。つまり、あれは植物人の中の過激派、クラーレと考えて間違えない。
リーダーであろう男の一声で、他の八人がバラバラに散開する。その内二人は、逃げる隊員達を追ってこっちに向かって来る。
「何ボサッとしてる! 逃げるぞ」
すぐ耳元で聞こえた他我矢隊長の声で、はっとなる。霧立もいるようだが、星月先輩の姿が見えない。
「逃げるって、ここにいる一般人はどうなるんですか! せめて足止めぐらい」
「自分の力量を考えてものを言え! お前が戦える相手かどうか分かっているはずだぞ」
「っ!」
悔しいが確かにそうだ。
俺を思って怒ってくれている隊長は、竜胆と戦ってあれだけの傷を負ったこと知っているから。
けれども、俺達は神鎌の力を使えば街の壁の中に逃げ込めるが、民間人のほとんどは逃げ切れずここで死ぬことになるだろう。
タケ姉さんが言っていた真の力。それがなんなのかわかりさえすれば……。
それかアヤメにもう一度、俺と一つになって戦って貰えたら戦えだけの力は得られる。
思考はそこで中断された。服の端を霧立が引っ張ている。
「隊長、日々野……見つかった」
指さす方を向くと言葉通りに、ハンマーらしき武器を持った植物人が息を荒げながら立っている。明らかに戦闘は避けられないようなので、他我矢隊長も武器を構えた。
お久しぶりです。次はもう少し速く更新したいと思っています。
次回
突如現れたクラーレ。街はどうなるのか、そして日々野は戦えるのか!
次回も是非読んでみて下さい!




