21,屋上で休息を
よくよく考えれば屋上に入れる高校なんて、無いのが当たり前。
けど、ここは異世界に常識なんて不要かのように誰でも入れる。
もちろん、屋上の鍵が開けっ放しなのには理由がある。異世界だからとか鍵を付ける金がないからではない。
理由はこの学園のとある生徒が屋上に入りたいというだけで鍵を壊しまくったから。
初めのうちは学園側も厳重注意のうえ新しいものを設置していたが、繰り返されること十数回、その生徒が成績優秀で、ある組織の一員だということで鍵を付けるのを諦めた。
その後ここで屋上をめぐる乱闘騒ぎが起き、その際にその生徒がここを勝ち取ったらしい。
だから今日もここにいるだろう。
日当たりも良く、その生徒を恐れてワル達が来ないこともあり、一般生徒には憩いの場になっている。
俺はその生徒と知り合いであることを知られたくないから、出来るだけここには来ていない。
だが、今は背に腹はかえられぬ状況。学園内で、安全で暇もつぶせる場所はここしかない。
ならその生徒は誰かって?
「先輩いますかー」
屋上のドアを開け外に出たがそこに姿はない。今日は休んでいるのかと思ったそのとき真上から声がした。
「お、日々野どうしたんだ。真面目なお前がサボりだなんて」
「サボりじゃなくて逃亡中です。原因は星月先輩にもあるんですよ」
かぎを壊し、乱闘騒ぎを勝ち抜き、それから頻繁にここでサボっている人。それは星月先輩だ。
扉のうえにある一段高くなった所から顔だけ出している。
ギリギリ校則にひっかからないラインで制服を着崩しているが、髪は染めて片耳だけ鈴のようなピアスを着けていた。そこら辺がチャラいんだよな。
「逃亡中? 俺が原因? 何があったんだよ、ちょっと昇って来いよ。下にいたら簡単に見つかるぞ」
それも確かだ。追跡隊だけでなく他の生徒が来たときも面倒なことになりそうだしな。
「それより、先輩もサボってばっかじゃ留年しますよ」
「大丈夫だって、単位は計算してるし、テストの点数も上位キープしてる。まあ、サボってんのは今の時間が道徳だってのもあるけどな」
「そう言うことですかっと」
そう言ってはしごを登り切る。
話に出た道徳の授業だが、地球にいたときのものとは全く違っている。
内容はマナーとかが二割、元の世界に帰るため植物人を倒せっていうのが二割、残りの六割がモーテス神への感謝だとかいうふざけた内容。
この学園も聖王会の助けをある程度受けているのからそういう内容も入ってくるのもわからなくはないが、洗脳教育じゃないのかと思う一面もあるんじゃないかと言われているのも確か。
先輩はモーテス神を信じていない。何でも神様だったらもう少しすごいはずだ、とかいう考えらしい。
かくいう俺も先輩の考えとは少し異なる面があるが信じていない。
乱闘騒ぎで勝ち残ったと言われているが、実際のところは神を否定する先輩に我慢ならなくなった聖王会に所属する生徒たちが起こした喧嘩だったのだ。
喧嘩とはいえ神鎌の力を使った者同士だったから、傍から見たらまるでサ〇ヤ人のぶつかり合いだったとか。
六対一にもかかわらず全員を病院送りにした先輩は、更に聖王会の本拠地へ連行されたと思いきやそこでも一暴れして元の隊から脱退を命じらた。その後色々あったらしく結果十三番隊に来たらしい。
そのせいでこのことを知っている生徒がつけたあだ名が悪魔のニーチェだとか。さすがに神は死んだとか言ってないがな。
「それで何があったんだよ」
「……先輩が文目にこの学園に来ることを進めたから追われる身になったんです」
「話がつかめねえなあ。自己紹介の時にでも文目ちゃんが、日々野君が好きです、とか言って男子に追われてるとかか?」
「当たらずしも遠からずですね」
「マジかよ!」
笑い転げる先輩が恨めしい。
竜胆との戦いもあとに見つかったあの時、先輩がした勘違いは、文目が新しくきた人間で俺は守るために戦っていたのだと思ったことだ。
街に戻った後、文目の住処や戸籍などを作ってくれた所まではよかった。
だが、学園をどこにするか決める時、俺と同じ所に行くことを文目に進め、文目はここまでしてもらったのだから学園も同じ方にすると言って聞かなかった。
仕方なく俺は文目と幾つかの約束をした。
すでにお互いを知っていることを隠すこと。
出来るだけ目立たないようにして欲しいこと。
当たり前のことをもしもの為に約束したのだが、そんなこと文目は忘れていたのだろうか。
一年の始まりからクラスメートには追われ、多分今日の終わりには学年そして学園中に広まっているだろう。
目立たず、ゲルトナーだということも知られずに過ごすはずだと思っていたのに……、なんか涙出てきた。
「イヤー、文目ちゃんって面白い子だったんだな。キチッとしてたから堅い子だなーッて思ってたのに、あれ日々野泣いてる?」
「泣いてませんよ。先輩怨みますよ?」
ようやく笑いが治まったのか文目の印象を話し始めた。
あと、俺は泣いてるわけでない。
テンションが高まっているのかそのままカノジョのことを口に出す。
「そんなマジになんなって、いっそつき合ってしまえばいいじゃんか。あの子に似て」
「それは言わないで下さい」
それだけは話題に出して欲しくなかった。俺の口調がつい冷たくなる。
空気が重く沈むようになる。
「そうだったな。悪い」
「いや、俺もスミマセン」
「ああ、そんなことない」
「スミマセン! ここに日々野という野郎が来ませんでしたか!」
「お前らよく来た! ナイスタイミングだ」
先輩はつい叫んだ。
扉を開いてやって来た奴ら、クラスメートたちに俺も叫びそうになっていた。
空気を破ってくれたクラスメートたちは逆に先輩の対応に飛び跳ねている。
どうも感謝の言葉が別の意味に聞こえたようだ。それ以上に恐怖が勝っていそうだが……
「ナ、ナナイスタイミングとはここに日々野がいるのですか!」
「いや、そう言うわけじゃなくって、ちょうど良い喧嘩相手が来たと思って」
「「「失礼しました!」」」
彼らも叫びながら颯爽と屋上を後にしていった。
確かに今の言葉は怖いな、それがサラッと出てきた先輩の思考も怖いが。
振り返った先輩と目が合う。
「なかなか怖かったですね」
「まあ、悪魔だからな」
そのまま俺たちは笑い出した。
話しにくい空気もなくなって彼らに感謝だ。
さっきまでの自然な感じで会話が出来る。
「あ、そうだった。日々野、伝えることがあった」
「ここから逃げられる方法ですか?」
学校から帰る口実があるということだろうか?
逃げるのはかっこ悪いが、クラスで尋問されるのと比べたらプライドなんて必要ない。
「いや違う。お前が入院してる間に会議があったんだけど、それについての会議内容説明。
前回の戦闘でかなりの被害が出て植物人からの宣戦布告もあった。だからもし、街で戦闘が起こったときはサイレンが鳴るからそんときゃ本気で戦えだと。詳しい事はまた後日」
やはり、鳥兜達は本気で戦うつもりのようだ。
街にまで被害が及ぶ可能性を考えているとは、上層部も植物人の本気に気づいたということなのだろう。
「了解しました。では、そろそろ教室に戻ります。次は中休みですし」
「そうだな。あと日々野」
「何ですか」
「面白そうなクラスだな」
「まあ、そうですかね」
そう返した後屋上から校舎内に戻る。そこでちょうどチャイムが鳴った。
考えてみると初対面の人にあれだけ事が出来るとは、慥かにある意味面白いクラスだ。
俺みたいな変わり者に良いかもしれない。
俺が話を出来る状況になっていたら良いのだが……。
警戒しながら教室までの道を進むことにした。
……いや、でもクラスメートを捕まえようとするクラスって良いクラスか?
次回
引き続き学園回をお楽しみ下さい! ぜひ読んでみてね。
一話を大きく改稿しました。




