20,新学期と転校生
あらすじ:強敵リンドウを新たな力で退けた二人、しかし運悪く星月に見つかってしまったが・・・
学園編スタート、しばらくは戦闘はないつもりです。
四月十日 学園
あの戦いから今日で六日。
こうして生きてることからわかると思うが、あの後、色々あったが戦いにはならなかった。
怪我は治るまでに四日しかかからなかった。
文目が前と同じ薬を使ってくれたのと、一体化によって少しは怪我の具合がましになっていたからだ。
四日とはいえ春休みはすべて消え去ったも同じ。
唯一の救いは宿題がなかったことぐらいだ。
そうして今日、新学期を迎えた学園に登校したというわけだ。
学年は一つ上がって二年、クラスについては見知った名前がいくつかあるがその中にゴリ男はなかった。
すでに始業式も終わり、自分のクラスに戻って担任を待っているところ。クラスの中では、すでに仲良くなった人や前と同じクラスの人と話したりしているのがほとんど。
だが、俺はそんなことをする余裕はない。
何故なら星月先輩があんなことを言ったせいだ。
あの場を切り抜けるにあの勘違いは良かった。
その代わりに現在進行形で不味いことになっている……、新しいクラスを楽しむ余裕はなく、胃が痛くなるくらい緊張するほどにだ。
前の扉が開き担任が入ってくる。
確か名前は小倉だったか、国語の担当だったと思う。既婚者で歳は三十後半。
「皆さん静かに。知ってると思うけど一年間皆さんの担任の小倉です。それよりも皆には嬉しいことがあるぞ、転校生が来ている」
「「「うぉおおおおお!」」」
男子が特にうるさい。
それに担任のその言葉は聞きたくなかった……。
「せんせー、女子ですか! 可愛いですか!」
「男、美形の男子!」
「カモン、カモン、カモン!」
「はいはい、静かにして下さい! とりあえず自己紹介して貰いましょう。花道さんお願いします」
開いていた扉から入ってきた人の性別は女子、それも珍しい白髪で驚くほどの美人。
そして俺は彼女の名前を知っている。
「えっと、花道文目です。分からないことがたくさんありますが、どうぞよろしくお願いします!」
「キターー、美少女だぁああ」
「彼氏は、彼氏はいますか!」
「俺とつき合って下さぁい!」
おい。男子、うるさすぎるぞ。
いくら文目が綺麗だからといっても、異常なまでの盛り上がりを見せるな。
女子も、嫉妬でもしてるのか悔しそうに見ている人もいるが、大半が周りの仲良し人と喋り出した。
少しは俺も気になったから、前を見ていると黒板の前に立っていた文目と目が合い、どうしようとでも言いたげに笑ってきた。一応俺も笑って返す。
「皆さん静かに! 話が進みません。いいですか、彼女は春休みの間にこの街に来たと言えば分かりますよね? あと男子うるさすぎる、モテないよ。質問は手を上げて」
男子共が黙り、その代わりにシャッキリと手を上げたまま微動だにしなくなる。担任の言葉が効き過ぎだろ。
変わりまくる状況に戸惑う文目も耳打ちされてこの状況を理解したらしい。案外、理解が早いようだ。
「それじゃあ前の人から、どうぞ」
「好きなタイプはどんな人ですか?」
「タイプ? 静かな人かな」
「出身はどこか覚えてますか」
「分からないですね」
始まった質問に文目がドンドン答えていく。
内容がどれも恋愛に繋がりそうな内容と接点を探そうとすることばかり。
その気持ち少しは分かるぞ。あんな美人に誰が好きかなんてハッキリは聞けないもんな……。
事実、俺も正直気になることもあったが、どこ吹く風かのように外を見て、耳だけ話を聞いていた。
「俺は城山聡、一応カノジョ募集中。君は彼氏とか好きな人っている?」
そこにストレートな質問、誰が言ったのかとその人を見るが城山か。クラスの王子は流石見上げた度胸だ。
他の男子も気になっていた事なのだろう、文目の答えを気にしている。
「えっと、好きとかそういうのは分からないというか……」
「好きってのは、心が通じ合ったり相手に何でも出来るような気持ちのことかな」
「あ、それなら日々野かも」
……は?
クラスの視線が振り向いてくる。一部の奴は誰か分かっていなかったようだが雰囲気で分かったようだ。
いや待て待て、確かにこの前のあれは心が一つになったけど、どちらかと言えば一体化、でもそっちの方が語感的にヤバいな。
別に好きと勘違いされるのは嫌という訳ではないけど、この場でそれを言われるのはクラスメートからの俺の印象が驚くことになってしまう。
すでにクラスメート全員の視線が怖い。
特に城山はクールな表情を浮かべているからもっと怖い、今にも襲ってきそうなほどだ。
「でも、あれは心だけじゃなくて全部だったけど、それに仕方なかったし……」
「絶対分かって言ってるだろ! これは誤解というか文目の冗談だから、皆そんなに怖い目で見るなよ……」
火に油を注ぐかの如く、更に大変なことを言ってしまう文目。
そのせいで、男子は全員立ち上がってジリジリと近づいて来て、女子の一部は文目の方に集まっていく。
「花道さん、今の本当!? 心じゃなくひとつになったて」
「なんか違うような気もするけど、大体あってると思うわ」
「ということは、二人はもう一つになったことのある関係だってことよね!」
話の内容は分からないが女子側は盛り上がってるよう。まだ好意的な感じで安心だ。
「おい、日々野だったか? 初対面で悪いがちょっと校舎裏こいや」
「一つになったって、本当か? なあ、おい!」
「何でこんなに世界は理不尽なんだ! 俺にもカノジョをヨコセェ!」
「これは、説得は無理そうだな……」
男子は囲むように窓際へ俺を追い詰めてくる。いや、皆欲望のまま動きすぎだろ。
このままでは俺はたこ殴りにされるか、つるし上げられるか、最悪埋められるのも考えた方がいいかもな。まあ、そんなことされる前に逃げるがな。
「あの皆さん、知らないようだから言っておきますけど、日野君は花道さんを助けたゲルトナーの隊員ですよ?」
ようやく担任が口を挟んだかと思いきや、俺の秘密を言ってしまった。
クラスメートは担任の方を向く。この隙に逃げ出すとしよう。
ゲルトナーの隊員であることは出来る限り隠しておきたかったのだが、言われてしまっては仕方ない。
「限定解除、皆に言っとくけど全部違うからな」
もしものために窓の方に逃げていてよかった。
二階からだと少し頑張って受け身さえ取れば、鎌を使わずとも飛び降りられると思っていたのだ。
つまり神鎌の力を使えば、すんなり飛び降りれる高さだということ。
授業は始まってしまうが仕方ない。
初日からサボるのに罪悪感があるが、今あのクラスに帰れば授業どころではなくなってしまう。
「逃げるな、諦めて戻ってこい! 今なら公平な学級裁判を開いてやるぞ!」
「公平なわけないだろ! しばらくは戻らないからな」
「ええい、追跡部隊を組め! ゲルトナーとはいえ数の力で捕まえるぞ」
「誰だよさっきから指揮取ってんのは」
よし、俺の捕獲の音頭を取ってる奴をしめるか。
いや、教室に戻ればいると思うがやめておこう。今はほとぼりが冷めるのを待つべきだ。
中休みぐらいに戻れば、話が出来るだけの時間があるかもしれない。
それまではあそこに隠れておくか。
行き先を決めた矢先、追跡部隊とやらが昇降口から出てきた。
お前ら授業はどうしたんだよ。
足の速い奴を集めたのだろうが今の俺には追いつけまい。
捕まってしまい諦めるのも手だが、面倒そうだから別の階段に向かう。
目指すは屋上、隠れるついでに愚痴でも言わせてもらうか。
階段を全て一跳びで上りきり屋上のドアノブを回した。
次回
屋上で話し合います。 読んで見てね。




