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19,決着、そして……



 腹部に鋭い痛みがして目が覚める。

 視線の先では禍禍しさを宿した日々野がリンドウと互角とまではいかないけど、何とか戦えているよう。


 私も加わらないとと思い立ち上がった時、日々野によってリンドウが飛ばされた。そしてリンドウが少し離れて()()構えを取った。


「避けて! それはダメ!」


 言葉は届かず、日々野の体を光の槍が貫きそのままゆっくりと倒れていく。

 そしてリンドウはとどめを刺すべく槍の投擲の構えを取った。


 気付いたら私は駆けだしていた。日々野が殺される事を防ごうと槍の軌道上に立つ。

 何でそんなことをするのかは自分でも分かっていない。

 槍が私の胸に突き刺さる。痛みが起き力が抜けて体がゆっくりと倒れる途中、日々野と目が合った。

 今の体で死んでしまったらいつものように蘇らない、その事ぐらい分かっている。


 でも、どうしてだろう、私は笑っていた。

 日々野を安心させたいのと、まだ何か出来るんじゃないかなと思うことが理由かも、もちろん何も出来ないのは分かってるけど。

 多分私は日々野を信じたかった、そして守ることをしたかったんだと思う。

 だから今二人で死んで、何も変えられなかった後悔はあるけど悲しくはない。


 何故かタケ姉が言っていたことを思い出した。


 閉じていくまぶたの隅で、日々野が必死に手を伸ばそうとしているのが見えた。私は日々野が諦めずに伸ばすその手に手を重ねようとする。


 もし、この今の気持ちがタケ姉の言う恋なら少しは悪くないかも。

 そうじゃなくても日々野になら私のすべてを託せるぐらい信じていられる!


 そうして互いの手が重なり、急に光に包まれた。


 





 光に包まれると何故だろう、心か通じるというか、なんとも言えない感覚が繋がった手から伝わってきた。

 その感覚は次第に掌から全身へ、鎌を持ったときに似ているような気もするけどなんだか温かさがある。それに従って傷が少しずつだが塞がっていき力も戻ってきた。


「これは一体? って文目、どうしたんだ!」


 ふらつきながらも立ち上がり隣を見たら、文目の姿が薄くなっている。ゲルトナー本部の前で現れた時の逆バージョンだ。出血は止まっているが動かないし反応もない。


「文目、文目!」

〔アヤメアヤメ、うるさいわよ! 私はここにいるでしょ!〕

「ここって何処に」


 返事は念話(テレパシー)で返ってきた。

 その発信源? は消えゆく文目からでない。説明が難しいのだが本当に、直接頭の中から声がする、まるで俺の中に文目がいるように。

 比喩ではない。それが感覚とかでない、別のもので感じとれているからこそ、言葉が途中で止まったのだ。


「えーとちょっと待って。今どうなってるか説明してくれないか?」

〔私も分からない。けどタケ姉、お姉さんがこのことを言ってた〕

「どんな風に?」

〔たしか、信じる心で一つになるとか、本当の力が出せるとか〕


 ふむ、一つになるとはつまりこういう(今の俺たちの)事だろう。

 本当の力が出せるって言うのはまだ分からないが、そのタケ姉っていう人が言うことは正しそうだ。

 実際に片方はなってるわけだし。


「他に何か知ってたり、しないか」

〔よく分かったわね。私自身こんなの初めてだし、聞いたこと以外何も知らないに決まってるでしょ〕


 これ以上は知らないか。

 けど、今の間に一つ分かったことがある。それは相手の気持ちが何となくだが分かってしまうこと。さっき、文目に聞こうとしたとき、他に知らないと聞く前に答えが分かってしまっていた。


〔それより、日々野も分かってるでしょ?〕

「まあ、一応なら」


 光の外側、竜胆が動き出しているのが気配で分かる。

 この現象は一旦置いておくとしよう。

 今の俺、いや俺たちになら倒せそうな気がしてくる。とは言え油断は禁物、さっきからそれで痛い目に在っている。


〔その通り、油断は禁物。でもほんとに倒せそうね〕

「勝手に心を読むなよ。それより武器が」


 神鎌は手元にない。多分光の外側に落ちているはずだ。

 ちなみにこの世界に出現している鎌を手元に呼び出すことは出来ない、つまり今俺は丸腰だということ。


 それ自体油断だった。竜胆がこっちへ迫ってくるのが分かる。今から鎌を拾えばその隙にやられる。

 まさかのいきなりデッドエンド?


〔我が花よ、剣となりて顕れよ〕


 文目の声でタイムラグ無しで手元にあの花の剣がこれまた浮かび上がるように虚空から顕れた。


〔日々野、それを使って!〕


 言われるまでも無い。俺たちを覆っていた光が消え、槍を突き出す竜胆の姿が目に映る。

 握った花の剣は想像以上に軽く、堅いのだが何処かしなやかさもあった。


 剣で槍を弾いて本当の力の意味に気づいた。

 さっきまでとは比べものにならない位の力が出せる。

 槍を弾いた腕も全くと言ってもいいほど痺れていない。

 弾かれた方は驚きを隠せないよう。


〔言っとくけど、私も戦えるからね〕


 更に剣が顕れ、空を舞う。さっきよりも速度が増しているが他は同じだ。


 やっと驚きから戻ってきた竜胆に、悪いが次の手を打たせてもらう。今度はこっちの番だ。

 この剣を使うのは初めてだが、これも一体化している恩恵か思ったように使える。


 剣筋は一撃を当てるわけじゃない。少しずつ腕や肩、足や腹を狙っていく。

 剣を振るい、槍を弾き、時折下がって様子を見る。空からは文目が操る五本の剣が襲いかかっている。文目がどうするのか分かる、だからおれがどう動くべきか分かるため連携も出来ていた。このまま押し切れる。


「急に強くなって、何をした」

「秘密、とだけ言っとく」

「そうか。ならば勝って聞くまで!」


 竜胆は無理に距離を取る。文目の剣が幾つもの切り傷を作ったが、全く動ぜずあの構えを取った。

 二度目の今回は何が来るか分かっている。

 だがあえて、文目が()()()()()()()()正面から突撃する。

 一体化しているせいなのか、信頼しすぎだとも思うが気にしない。


「咲き乱れろ、龍槍の息吹(ドラゴ・ブレス)!」

〔剣華よ守りたまえ、五星の舞い!〕


 花の剣によって現れた障壁に光の槍がぶつかり弾かれた光の槍は霧散していく。

 爆発に近い風に押されながらも竜胆を間合いに踏み込めた。竜胆は大技の所為か動きが鈍くなっている。


「うぉおおおおお!」


 右肩から斜めに剣を振り切るつもりだった。

 しかしそれは途中で止まってしまう。

 竜胆が何かしたわけでない、手に伝わる感触と返り血に覚悟が揺らぎ、自ら止めてしまった。

 その隙に無理矢理剣を引き抜かれ逃げられる。


 文目にもこの気持ちが伝わったのだろうか何も言ってこない。

 深傷を負わせたのに変わりはない、今度こそと思い踏み出した、足がふらつき視界がボヤついた。

 そのまま手足の力が抜けていき、文目が離れていく感じがする。


「これって、時間切れって事か?」

「多分、そうかも……」


 俺の傷は一体化する前より少しましだが戻っていく。文目の方は傷は治っているようだ、体力的なダメージは残っているよう、何とか立てているといって感じ。

 動けない俺と戦いは厳しそうな文目に対し、竜胆は立ち上がって槍を構えた。傷は深いはずだがそんな様子を一切見せていない。


「とどめを刺したいところだが、どうやらここまでのようだ。これ以上ここにいれば()()()()危うくなりそうだ。また会う時を楽しみにしているぞ」


 その言葉通り、槍をしまいすぐにもと来た方へ帰って行く。とりあえず勝ったのか?

 でも、あいつに文目の事を知られてしまった。


「……あいつが村に帰れば文目が内通していることが仲間にバレてしまうかもしれない、ゴメン」

「そんな心配事はしなくていいの、それよりも日々野の方が大変でしょ! 誰か呼ばないと!」


 余り気にしていなさそうな様子、何か手があるのかもしれない。


 助けを呼ぶと言っても通信の圏内に誰かいるとも限らない。今は何処も戦闘中かもしれないし。そんなこと考えていると森の中で何かが動いた。

 過激派の十一人残りの一人かもしれない、そうだったら終わりだ。

 文目も剣は出せないのかそっちを向いて構えだけをとる。


「おーい、日々野ーどこにいるんだー」


 だが、森の中から出てきたのは星月先輩だった。

 味方で良かったと安堵し、その様子を見た文目も少しだけ警戒を解く。


「全くどこに行ってんだよ。途中にいた十一番隊の奴らが居たから、何となくの方向が分かったからいいものをって怪我してんじゃねえか! 生きてるか!」

「生きてますよ、何とか。速く治療して欲しいですけど……」

「そうか、なら急がなきゃならないけど、それよりこの子誰だ?」


 文目をどう言うか考えてなかった。というか今気づいたのか。

 ヤバい、この返答にミスったら先輩が第三の脅威に成りかねない。

 先輩の中で考えがまとまったのか口を開く。もしものタメに俺は心づもりをし、文目はもう一度構えを整え直した。


「日々野、もしかしてこの子……」

次回

文目はどうなる? 

とりあえず第2章終了とです。

次からは少し日常系の内容です。

明日で投稿してから一ヶ月。早かったなあ……

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