18,目覚めの兆候
今回は戦闘シーンです。
初めてではないと言えほぼ初めて、読みにくいかもしれませんが読んでもらえたらと思います。
戦闘が始まってすぐにこっちの方が負けていることに気づいた。
後方からは文目の剣が竜胆を狙い、俺が接近戦を仕掛けているのだがすべて見切られ、かわすか受け流されている。
油断なんてする暇もない。これまでに戦ってきた奴の誰よりも強さと存在感が違っている。
「そこまで強いわけではなさそうだな、この程度で何ができるというんだ?」
「くそ!」
俺たちの攻撃をかわしながら喋る余裕すらあることを示してくる。明らかな挑発だがそれに乗ってしまい更に踏み込む。
「そんなに前のめりになるな、連携がなっていない。今の戦い方だと、お前は文目の邪魔になっている、ただの役立たずだ」
大振りの横薙ぎを真上に飛んでかわされたが、そのまま着地するタイミングで鎌を引こうとした。だが、竜胆は空中で落ちはじめる前に瞬時に体勢を変え、槍の狙いを頭部に定めて突き出す。
首を曲げたが側頭部を斬られた。血が流れ出し視界の半分が塞がれた。
攻撃に転じた竜胆は止まらない、次々と繰り出してくる突きに、俺は下がることでしかかわせない。鎌の通常攻撃は面と線、槍の攻撃は凸、剣であれば受け流すことも可能だが鎌は当てることすら難しい。
俺が下がりながらかわしていたそこに、文目の剣が四本、風を斬るように竜胆に襲いかかり攻撃の対象が移った。文目が作ってくれたその隙に距離を取って血を拭う。
さっきよりも俺がいなくなった今の方が、文目の剣で傷を負わせれている。これは、つまり俺は竜胆の言ったとおり役立たずだ。
「大丈夫?」
「大丈夫よ言いたいところだけど結構ヤバい。さっきの文目の剣もだけど、こいつ強すぎないか?」
「そりゃそうよ、いつもあなたたちが戦っているのは私たちの一部だけなんだから」
ということは今まで俺たちは苦戦していたのに、植物人は本気じゃなかったてことか。自分達がどれだけ無力であることを突きつけられ、勝てるなどと考えていた自分が恥ずかしい。
「もう、このまま文目だけで倒せるんじゃないのか?」
「私もそう言いたいけどリンドウは村の中でもトップクラスの強さ、悔しいけど私より強い。だから日々野、協力して戦うかここから逃げて援軍を呼ぶか、速く選んで」
そんなの答えは決まっている。上手く連携が出来るよう心がけてもう一度竜胆に突撃する。
「gann apeiron起動、尾喰龍鎌!!」
「懲りない奴だ、俺も飽きてくる」
略式だが本気の攻撃だったが、竜胆にとってそれは刃を交えることもない程度であったよう、竜胆の槍が鎌の柄を破壊しそのまま肩を貫いてくる。
声にならないほどの痛みが電流のように奔る。自分の弱さが嫌になる。
「日々野!」
「お前も油断するな!」
そのまま後方にいた文目に迫り剣と槍がぶつかる。地面を這う俺とは違う、文目も竜胆も宙を舞うように何度もぶつかっては離れてを繰り返す。俺は痛みで転がるしかないただの戦力外だ。
「力が欲しい、あいつを、倒す力が……」
(力が欲しいのか?)
「黙れ」
(ならば我を使え、お前の中に眠る、怒り恨み嫉妬悔しさ辛み憎しみ嫌悪、すべての負の感情を解放しろ。我ならば与えれる、奴を消せるだけの力を)
「黙れ!お前の力は借りるか!」
本体である鎌の刃の中から語りかけてくるこいつを俺は知っている、だからこそ今まで心に蓋をしてこいつが出られないようにしていた。だがこいつは今、俺に見えている、それは危険な状態になりつつある兆候だ。
文目と竜胆の戦いも檄を増していた。繰り返される攻防に、文目の剣が保たなくなったのかガラス細工のように砕け散り、そのまま木に叩きつけられた。気を失ったのかグタリと倒れ込む。その姿にカッと頭に血がのぼった。
「文目!」
(御主は甘い奴だ、隙が有り過ぎる)
とっさに刃のみとなった鎌に手を伸ばして立ち上がる。
鎌に触れた手から意識が乗っ取られるようにあいつの力が流れ込んでくる。肩の傷は異状な再生の所為で、さっきよりも酷い激痛が起きるが動かせるようになった。
「竜胆、お前を消し去ってやる! La borrar 起動 喰らい尽くせ、そしてすべてを消し去れ尾喰龍鎌」
(そうだ! 御主は我に従えばよい!)
「さっきよりは、ましになっていそうだな。相手をしてやる」
声が脳内で大きくなるが気にしない。
鎌の刃に持ち手はないが、柄と連結するためのへこみに手を入れ異型の大剣のようにして使う。この鎌の二つ目の固有機能、それは斬檄の投擲という表現が一番近いだろう。向かってくる竜胆に向けいくつもの斬檄を撃つ。
黒い半月状の斬檄と槍がぶつかり火花が散る、弾かれた斬檄は残っていた木々を切り倒すと消えていった。
そして三度目の衝突。鎌本来の力が出せているのと武器の形状の違いで今度は今までとは違う、竜胆の攻撃をかわすだけでなくいなすことも出来ている。だが、刃の面でうけるたびにその衝撃で腕が痛む。
長くは戦えないと思い無理にでも防御から攻撃に転じて刃を振る。鎌の能力は肉体強化だけだが竜胆の槍で防がれてばかりではない。何度か打ち合って一発ヒットしたのか後ろに飛んだ。他の攻撃も服と一緒に竜胆の体を浅くだが斬っている。これならいけるかもしれない。
「少しは楽しめたが悪いな、楽しみに来たわけじゃない。終わらせてもらう」
飛ばされた位置からさらに自ら距離を取り、何かの技の構えを取る。隙が有るうえに槍の穂先で攻撃がどこに来るかもバレバレだ。
「まだまだ終わらせないに決まってるだろ!」
「避けて! それは」
「これで終わりだ! 咲き乱れろ、竜槍の息吹!」
意識が戻ったのだろう文目の声がする、その時から視界だけがコマ送りのように世界を捕らえた。
竜胆の持っていた槍が言葉通り、花が咲くように中央から割れていく。その中から黄色い巨大な何かが光線のように飛び出し、俺は真っ正面から胴にそれを受け、そのまま倒れ込んだ。
やけに腹の辺りがヒンヤリとする。血の量は肩に受けた傷など比べものにならない。痛みのようなものは感じるが、不思議な感覚だ。
地面に倒れたそこからみた景色で気付いた、これは今朝に夢と同じだ。この場所も竜胆もそしてこの薄暗さも。そしてこの後どうなるのか思い出した。
「所詮お前はここで死ぬ程度、最後の一撃は良かったがそれ以外はまるで駄目だ。その一撃分として、後でアヤメから名前ぐらい聞いといてやるよ。じゃあな」
やめろ。竜胆が離れたところから槍を投げる。やめろ。この後に、起こることは分かっている。やめろ。そして赤い血が舞い顔にかかった。
「何で、何でだよ」
夢で見たのと同じ光景。文目が槍に貫かれ傷口の胸から人と同じ、深紅の血が流れ出している。垂れてくる血には温もりさえ感じる。そのまま地面に崩れ落ち、すぐ傍で目が合った。目は真っ直ぐで頬はまだ赤く、そして口元は苦しそうな表情を浮かべながらも笑っていた。
俺の心臓が強く脈打ち生きろと言ってくる。
俺の肺もまだ言葉を発せよと息を吸い込もうとしている。
俺の唇が意地でも言葉を伝えろと動いている。
俺もまだ文目に伝えきれていない思いがある、この世界も誰も変えていない。だから、まだこんな所で死ぬわけにはいかない!
手の届くところにいる文目の手にせめて触れようと腕を伸ばす。文目も震えながら手を伸ばしてくる。
そして手が重なり合った時、光に包まれた。
何か至らぬ点がありましたら、感想欄やツイッターで御指摘頂けたらと思っております。
次回
二人の運命は!? そしてアヤメが伝えられた真の力とは!?
第一部完結なるか! 乞うご期待!!




