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15,開幕式

PV数、四百人突破しました!

これも読者の皆様のおかげです、これからもよろしくお願いします!

「これで終わりだ!」

 

 巨大何かが胴を貫く。痛みのようなものは感じるが何か違う、不思議な感覚だ。

 俺は死ぬのか? 


 周囲は薄暗く自分の部屋ではない事は確か。

 よく考えるとここは文目と初めて会った森の中だった。

 けれどもその場にいるのは傷ついた文目と知らない誰か、何故ここにいるのかわからない。

 その誰かが何か喋っているようだが分からない。

 そして、再び槍が投げられるのに何故か焦りはない。

 赤い血が舞い顔にかかった。


「え、なんで」


 文目が俺の前で槍に刺されている。

 胸からは人と変わりない赤い血が流れている。そのまま地面に倒れ、目が合う。

 そして、そして、そして……


「文目!」


 叫びと共に感覚が戻る。

 今俺は、森の中でない自分の部屋のベットの上、心臓は走り呼吸も荒く、手の震えが止まらない。胸に空いた穴がないことで、夢だったとようやく理解した。

 普段見ているあの夢とは全く違うだけに混乱が大きい。


 汗でじっとりと体にはり付く服を脱ぎ捨て、カーテンを開けると、朝日が体に当たり、さっきの悪夢への震えが少し収まってきた。

 何故あんな夢を見たのか分からないが、たぶん何処かで今日のことを怖がっているのかもしれない。


 今日は四月四日、ついに来た神緑人戯の日。

 開会式の時刻まで、まだ余裕があったが俺はさっきの夢を忘れたくて早めに家を出ることにした。


 





四月四日 ディーゼル


 街はお祭り気分、沿道には食べ物の屋台なんかも出ている。

 開始までもう数分だが、実際に出撃するゲルトナーの戦闘部隊は異様な空気をかもし出していた。


「おお、神よ。我を救いたまえ」

「墓の用意よし、遺書よし、ドッグタグよしと」

「もし俺が帰ってこれたら結婚式を挙げよう!」


 一部の人など青くなって神さまに祈ったり、死んでしまったときのことを考えていたり、しっかりと死亡フラグを立てたりしてる。

 俺? 俺はさっきのこと以外は特に気にせずに始まりを待っていた。


 予定だと開幕式はゲルトナーの司令官、蔵餅の話から始まりその後、神モーテスの降臨だとか。時間でいうとそんなに長くないはずだ。

 隊員はその間隊ごとに通りに並んだおくのだが、案の定、星月先輩はまだ来ない。

 

「日野、何も聞いていないよな」

「聞いてないんで、もうすぐギリギリの時間になるんでくるとは思うんですが……」

「残り……二分だけど……?」


 こういう集まりには来て欲しいのだが、前回はサボり、その前は開幕式が終わる頃に来たかと思えばもう一つ前の時は開始時刻の一時間前にはもう来ていた。

 結論言うと勝手な行動ばかりしているのでいつ来るのか全く分からないのだ。

 時間も迫ってきたので他の隊同様に並び始めたところでようやく声が聞こえた。


「おーい、今回は間に合ったよー」

「ほぼ遅刻ですけどって、何持ってきてるんですか!」


 手を振りながらこっちへ来るが反対の手にはそこら辺の屋台で売られていたのかアイスクリームのような何か、更にポケットは食べ物で膨れている。その香りと態度で周りにいた人は先輩を見ていた。


「イヤー、話いっつも長いじゃん。だからそこら辺の屋台で買ってきたものでも食べながらすごそうかと思ってな」


 言い訳は聞いてもムダだった。今回は時間には間に合ったが、予想外の態度で俺たちを呆れさせてくれた。

 この人の考えはいつまで経っても理解できないだろう。


 だからといっても開幕式が始まらないわけではない。時間が来たので蔵餅司令官が前方にある舞台の上に上がり始めた。


「えー、諸君。我々ゲルトナーは汗と血を流してこの街にため日々努力している。その中で身も心も鍛えられていることだろう。

 今日はその成果を発揮してくれたまえ」


 相変わらず偉そうなことを言っている。身も心も鍛えられているだと? 悪いがそういうお前が太っていると何も分からないぞ?


 まだ話している司令官から目を離してそのまま横にある、来賓席だろうか、を見ると驚いた。

 この前、文目をナンパしていた連中と一緒にいたあのポッチャリが座っている。よく見ると今演説をしている指揮官と似て無くもない。

 もし、あの二人が親子だとすると色々とつじつまがあう。

 あんな雑魚共が汎用性とはいえ上級の鎌を持っていたことや、やけに自信がありそうな態度をとっていたこと。全てあのポッチャリが入っている隊だったから優遇されていたのかもしれない。

 そう思うあのポッチャリに無性に腹が立ってきた。


ひひほ、ほうひた?(ひびの、どうした?)

「いや何でも無いです。というか喋るのは食べ終わってからにして下さい」


 何言ってるのかわかりにくいし、汚いから。

 そうこうしている内に指揮官の話は終わったみたいだ。恰幅の良い体を揺らしながらポッチャリの隣へ座った、やはり親子のようだ。


 しばらくすると次のプログラムをするために聖王会のトップである聖王がマイクを手に檀上へ上がってきた。

 その行為だけで沿道にいる一部の人は喜んでいるかのような声を出している。


「それでは、皆様お待たせいたしました。ついに我らの街、ディーゼルを作り与えて下さった、モーテス神の御降臨です!!!」


 聖王自身も熱くなっているのかマイクの音が割れるほど大きな声をだした。

 叫び声や名前を呼ぶ声が更に大きくなる。列をなしているゲルトナーの隊員の中には膝をつけて泣いている人までいるようだ。

 元の世界で見た覚えのあるアイドルグループのライヴ会場のような盛り上がりを見せる中、遂に彼奴が姿を見せる。


 見た目は二十後半、清廉潔白かのような顔で白い布をまとっている。

 金色の髪をなびかせて舞台の中央まで来ると恭しそうに差し出されたマイクを手に取った。


「皆待たせたね。今日は彼らゲルトナーに頑張ってもらうことになっている。そして一日でも早く世界樹の力を僕に献上して欲しい、皆が元の世界に戻れるように!」

 

 手短にそれだけ言うとモーテスは舞台を降り、自家用車に乗り込んで一足先に門まで行くようだ。

 モーテスの言葉に大半の人が拍手喝采、感謝の言葉を叫んでいる。だが、そのほかの一部の人は余り乗り気ではなさそうだ。


 ゲルトナーの隊員は死地に向かうのだから聖王会の人以外は、死んでこいと言われているのと同じこと。残りの人はここの暮らしがいいのか、それともまえの世界に未練が無いかのどちらかだろうか。

 それとも俺たちのように神さまのことを信じない無神論、汎神論的な考え方の人なのかもしれない。


「それでは全員、門の処までバスに乗って行くぞ。モーテス様をお待たせせぬよう、急いで動け!」


 気づけば蔵餅司令官が出てきて仕切り始める。

 従っているようで気に入らないが用意されていたバスに乗り込んだ。


「日々野、お前なんか今日いやなことでもあったのか?」

「まあ、なかなかな悪夢を見てしまって、正夢にならないか心配です。」

「そうか。夢の内容は知らんが正夢にはならないだろうな、いま言ったからな」


 他我矢隊長が何か気づいたのか聞いてきたので素直に答える。確かに、それに応えたら誰かに言ったと言うことで正夢にはならないだろう。

 少しだけだが俺の気が楽になったが、このバスには聖王会の人はいないらしくドンヨリと空気が鉛のように重い。

 それからは、門に着くまで特に何も無く過ぎていった。









 門の周りには一般人は今日は近づけないことになっている。そのため普段のように活気ある観光地がなかった。


 バスから降り、各隊ごとに指定された範囲を索敵して見つけしだい倒す。

 それが今回の作戦らしく、いつものような単独行動は許されない。

 今はまだ日もあるが、いつ終わるかも分からないため通信機はもちろん、暗視スコープや保温効果のある服などをあらかじめ着ておく。

 

「皆ソロソロいいかな? 門を開くよ」


 モーテスが門の前に立って両手をかざすといつものように、波紋が現れた後に向こう側に別の場所の景色が現れてくる。

 どの隊も準備は出来ているが、まだ心の準備の方は出来ていないところがありそうだ


 文目が村の住民たちを説得できていれば、戦闘による死者がでる確率はほとんどないだろう。もしかすると植物人(プライオルガ)の代わりに、木人(トレント)が増えているかもしれないかが心配なだけだ。


「それじゃあ、神緑人戯、どうなるか楽しみにしているよ」


 その言葉が合図だった。

 モーテスの体がゆっくりと虚空に消えていく、それに併せてゲルトナーの隊員達は門に向かって走り出す。


 

「今回こそ楽しみにしてるよ、人間共」


 誰かが言ったその言葉は誰も聞くことなく共に消えていった。

次回

怪しくなってきた神緑人戯、どうなるのか。読んでみてね。

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