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13,観光

「文目結構歩いたけど大丈夫?」

「それより、日々野の方が派手に喧嘩してたんだから心配なんだけど……」


 文目とさっきの話をしながら歩く。遠いとこまで行けないから徒歩で散歩だ。

 チンピラたちに時間をとられたのが大きかった。

 すでに日は暮れかかっており、空気も少し冷たさを伴っている。


 今は観光地の中心地から離れた農業地区へ来ていた。街に住む人達全員分の食料を作るだけあって果てが見えないぐらい広大だ。


 時期もあるのだろうが、夕方のあぜ道を歩く人の姿は遠くの方でポツポツあるだけだ。

 歩き疲れた俺と文目は土手に並んで座り込んでいた。

 右には街の壁、反対側に森が見えている。


「街の中だと土が一つも無かったから、なんかここが遠い別の場所みたい」


 遠くを見ていた文目がふと、喋り出した。


「確かにな。

 街の中と外じゃ考え方が正反対、って言うくらいだから、別の国といってもあながち間違いじゃないかもな」


 内側に住む人達は植物人(プライオルガ)を脅威として土も緑も嫌悪する人が多い。

 外に住む土の町(ネイチャード)の住民は、あまり危機感を感じずに壁の外で暮らしている。


 俺の家にあるベランダの草花も許可を取って飼育している。緑がないと息が詰まりそうになるだろ?


 本当ならここみたいな外に住みたいが学生の身では無理だし、何より生活が大変だ。

 欲を言えば、この街から離れたとこへ行ってそこでひっそり暮らしたりもしてみたい。


「そういえば日々野達って別の世界から来たんだっけ? どんなとこだったの?」

「そーだなあ、地球っていう星にある日本っていう国に住んでたっけな。

 思い出は何も覚えてないんだけど、確か住んでいた街は高いビルもあったけど自然が多くて山もすぐそこにあったなあ。

 そうそう、街の真ん中に大きな川が一つ流れてたような気がするな」


 四年前にここに来たときはもっと覚えていたが、今はもううっすらとしか覚えていない。

 いつも遊んでいた友人がいた気もするが思い出せない。


「家族は何人くらいいたの?」

「家族のことは何一つ覚えてないかな」

「え、ごめん変なこと聞いちゃって」

「いや全然気にしてないよ。

 ちょっと覚えてるよりも、きれいさっぱり忘れてる方が前に住んでいた世界への未練も無いしね。そういうことだから気にしなくていいよ」

「うん……」


 どこか暗い感じになってしまった。冷たい風が肌をなでていく。

 正直なことを言ったのだがやはり気にしているのか、あの考えが出てくる。


「俺ってやっぱり冷たい奴なのかな……」


 街の中でもそうだ。家族のことを気にして必死に帰ろうとしている人もいるのに、俺は悲しいともなんとも思わない。


 学校でも、誰かが怪我して、かわいそうだとかお見舞いに行こうとかなったときがあった。

 俺は、その行動の意味が分からなかった。

 怪我ならいつか治る。入院なら安静が一番だ。ましてや人間のすることは自業自得なことが多い。


 そんなことを考える俺はそんな奴だと思ってた。


「そ、そんなこと無いはずよ! だって日々野は私を助けに来てくれたし、戦いを止めようとしている。

 考え方が周りと違うだけよ、確かに容赦がなかったりするけど、日々野は別に冷たくなんか無いわよ」


 うれしいことを言ってくれる。もしそれが慰めだったとしても、彼女の言葉は忘れない。

 言葉とは発せられたそのときにはもう、不思議な力を持っている。そう誰かが言っていた気がする。


「ありがとう、文目」

「別にほんとのこと言っただけだから」


 照れ隠しかそっぽを向いてしまう。

 あ、あれを伝えるのを忘れるところだった。


「明後日、聖王会からの命令で()()()()を行うことになったんだ」

「しんりょくじんぎ? 何時もみたいに森に攻めてくるだけじゃないの?」

「違う所は神が来ること。俺はあいつが神とは思ってないけどな。

 普段だと商人なんかも門をくぐって森を切り開いたり、門の周りを開発するけど明日は禁止されている。

 命じられていることは一つだけ、戦えそして命を燃やせ。

 人間でも植物人でもどちらかが一人でも死ぬか、神が飽きるまで終わらない、それが本当の神緑人戯なんだ……」


 文目はそれを聞いて驚きで固まっている。

 それほどに衝撃的なことだ、言い方は儀式だが実際は殺し合いをさせようとしているだけ。

 相変わらず狂っている奴だとしか、感想が出てこない。


「まあそういうことだから、仲間に伝えておいてくれないか?」

「分かってるわよ。誰かが倒れるのは見たくないものね、教えてくれてありがと」

「お互い様だろ、こんなふざけたことはやく止めさせなくちゃな」

「そのためにも、聖王会への侵入頑張ろう!」

「く、忘れてなかったか」


 まだおぼえていたか、一番後回しにしようと思っていたのに……


「さてと、ソロソロ帰りましょ。寒くなってきたわ」


 スカートについた汚れを叩きつつ立ち上がり道に戻る。

 

 文目が言ったように、もう日も落ちきろうとして空が赤から紫へと、段々にグラデーションをだしている。

 それに伴って寒さも増していた。


「そうだな、今日は大変な目に遭わせてごめん。また機会があれば今度こそ素晴らしいツアーをするよ」

「ふふ、そんな気にしなくて良いからね。

 そうだ、さっき言ってた日々野の昔住んでた街、それみたいにいつかこの街も人も草花も一緒に仲良く暮らせるようにしようね!」


 振り返る動作につられてツインテールが回る。文目はあの街を目指すつもりらしい。

 記憶にある街の風景もあやふやだ、けれどもこの街があのようになる。ヴィジョンがハッキリした。


 楽しい時間も終わる。

 

 そしてその日がやって来る。


         残り二十三日 

 気づいた方がいるかもしれませんが、作中の神緑人戯の文字は間違いではありません。ややこしいけど、題名の神緑神戯とは、別物です。


次回

アヤメ目線 世界樹の村に亀裂が? 読んでみてね。

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