10,街の外側“土の街”へ
いちおう書いておきますが、作中に出てくる人物や組織、宗教に関して現実社会とは関係ないことを、いちおう書いておきます。
「すごいすごい! 動いてないのに景色が変わってる! 人間ってこんなもの作れるんだね」
街案内をしようと思ったが、あそこらへんだと知り合いに会うかもしれないと思った。
なので、バスに乗って少し遠い所に行くことにしたんだが少し困っている。
「文目、少し落ち着こ。ちょっと目立ってるからさあ」
初めて見るバスに興奮気味の文目は、乗客からなかなかに注目されていた。
この街にいたらバスに乗ることは日常茶飯事。それを珍しがることも目立つ理由の一つだと思うが、それ以上の理由がある。
それは文目自身。絹のような白髪と淡い紫のワンピース、そして何よりも本人の可憐な容姿。
これが普通の女子だったら、変人かブリッコぐらいの印象だったろうが、見た目が見た目なだけに、似合ってると言うかギャップようなもので乗客の視線を独り占めしている。
「ねえねえ、後どれくらい乗っとくの? さっき言ってた街の外まで後どれくらい!」
「十分、二十分ぐらいかな。あともう少し静かにしよ、目立ってるって……」
全然言うこと聞いてくれない。まるで、星月先輩みたいだ。
文目のことが広まったら、後々面倒だと思ったから離れたところに行くのに本末転倒な気がしてきた。けれども、バスに乗ってこれだけ楽しそうならこれだけでいいかと思ってしまう。
「あ、みてみて日々野、あれ何!」
楽しそうだけど、これだと俺が緊張で持たない。早く目的地に着かないかなあ、そう思いながら文目の質問に答えた。
同日 街の外側、土の町
この街をぐるりと囲む壁の外側にも多くの人が暮らしている。別に街の内側に住むところがないわけじゃない。
コンクリートで地面を覆い緑を無くした内側よりも、土を踏み自然とともに暮らしを送ろうとする人たちがここに集まってきたのが始まりだった。
そのまま人が増えて行くに連れて土の町と呼ばれるようになり、門周辺は特に観光地となった訳だ。
「うわー、こんなにたくさん人間っていたのね。 そっか、だからいくら倒しても戦う相手が減らなかったんだ」
「ここにいる人全員が戦ってるわけじゃないけどな」
そんなに珍しいのかバスを降りてここに来てからずっとキョロキョロして元気にウロウロしていたのだが。
クウ、と小さな音が鳴ったのが聞こえる。
隣にいる文目が少し赤くなって照れながら、おなかを押さえていた。
「えへへ。そ、それよりも、美味しそうな匂いがたくさんするね。なにか食べたいな~」
照れ笑いを浮かべ、素直に空腹を認める。
勝手な想像だが、そういうことを自分ではないと認めないタイプかと思っていたが違うようだ。
「ここら辺は観光地なだけあっていろんな食べ物があるけど、何か希望はある?」
「んーとね、人間の食べ物についてはキャラメルぐらいしか知らないから、とりあえずあの人の食べてるのが良い!」
文目が指さしたのは他の観光客が食べ歩いていたドーナツ、材料も手に入りやすい方もので出来ているからお手頃価格。ていうか、何でキャラメルを知ってるんだと思ったがスルーしておく。
「オッケー、なら売ってるお店まで行こっか」
そう言って進もうとした俺の服の袖を文目がつかむ。
「これなら、はぐれないよね?」
確かに人も多いしはぐれたら大変だろう。
けど、これは恥ずかしい。というか、まるで付き合っているようだから、
「ダメ、かな?」
「いや、全然大丈夫だよ。それじゃあ、今度
こそ行こっか」
何かっこつけてんだよ俺!
内心、冷や汗ダラダラでバレにようにするのが精一杯のはずだろ! 人混みを進みながらそんなことを考えていたら、あっという間に目的のドーナツ屋に着いていた。
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賑わう通りに面したビルの上に何者かが多くの人の中で、日々野と文目の二人だけを見ていた。
「ああ、問題ないようだ。店に入っていったが、え、中の様子もか?」
黒いコートを羽織った男は通信機でも使っているのだろうか誰かと会話をしている。
「あー分かったよ。やりゃいいんだろ、じゃあな」
話を終えると通りとは反対の路地裏に飛び降りた。
ビルの高さは三階、だがそんなことは気にしていないようだ。
地面に降り立つと変わりなく、監視をするために人混みに紛れるように歩いていった。
次回
ドーナツ屋さんのあと鬼ごっこ!? 読んでみてね。




