9,十三番隊メンバー集合
4月2日 ゲルトナー本部
「だから、我々は神の使途、いや天使として戦っているのだぞ。それを忘れるな」
「ふざけるな、確かに我々は神に救われたがそればかりに気を使っていられるか。命令はまだだが、今すぐにでも森を切り開き、元の世界に帰るため世界樹へ行くべきだ!」
机を挟んで両班が怒鳴り合っている。
本当なら今日は短い春休みの一日だったのに、ゲルトナーの隊員であるためにこうやって集められている。
これからの活動方針についての会議、ということで会議室に集められたのがだいたい一時間前だった。今のように言い合いになったのはそれから半時間位後。
おそろいの白いスーツを着て、丁寧な口調で意見を言ってるの方が二番隊。
聖王会から選ばれた適合者達で構成されているからかこういう話題には、よく副隊長が熱くなっている。
対する強硬派的な意見を言ってるのは五番隊。
こっちはミリタリーっぽい服装のから分かるが軍隊からの適合者で構成されている。軍とは言っても街の治安維持や防犯など警察と同じことをしている。
一方はこの街の発展のため、もう一方はこの街の頂点に立っている方のため。普段の会議でもよくぶつかっている。
二つの派閥みたいになっているが、それに関係のない隊はあきれていたり寝かけている人までいる。そっちのほうが賢い気がするのもいつも通りの光景だ。
ちなみに今俺は、隣の席にいる星月先輩とコソコソしゃべっていた。
「おい、日々野そのブレスレット、誰からの贈り物か教えろよ。彼女か、彼女が出来たのか!?」
「いや、これは彼女とかじゃなくて、まあ色々ありまして……」
「おいおい、ますます怪しいぞ。やっぱし彼女だろ?」
しつこく追求してくる星月先輩。俺は右腕に花のブレスレットをつけていた。
誰からの贈り物かって? もちろん、文目からだ。何でも文目の力の一部から創られているらしく、通信機能とか通り道だとか言ってたがよく覚えていない。
一つ言えることは、おしゃれ感覚でそうしたんだろう白いアヤメの花はかなり目立っていた。
「先輩に言ってみろよお、秘密にしとくからさあ」
粘り強く言い続けながら肘でつついてくる。
少し周りから目立つからやめて欲しい。
ただでさえ変わり者揃い、堅物の隊長にチャラ男の副隊長、俺は普通だと思うけど残りのの一人も、喋らない同級生の女子が隊員の十三番隊は目立つせいか周りからよく目をつけられている。
まあ目立ってるのは、変わり者揃いってだけじゃなく前にイロイロあったのもあるけど。
そんなことを考えていると、前の席に座っていた他我矢隊長が急に立ち上がった。
「済まないが、これ以上無駄な時間を過ごすのは不要だと判断させてもらった。悪いが十三番隊は、帰らせてもらう。いくぞ」
ガタリといわせた椅子の音で言い合いも止まり、周囲の視線を集めている。けど、ほかの三人も立ち上がる。
「了解です」
「りょーかい、やっと終わったぜ」
「……了」
それぞれが独自の答え方をしてから、隊長に続いて会議室を出る。部屋の中にいる人たちを少し振り返ってみると、俺達をにらむ人が数人いた。
これでさらに周りからの目がきつくなりそうだな、そう考えつつあえてドアを丁寧に閉めて部屋を後にした。
「いやー、隊長。あの空気の中で言えちゃうなんて尊敬しますよ」
会議室を出てしばらく、廊下を歩きながら星月先輩が喋り始める。
世間では春休みの期間だが、真面目な人が多いのか廊下には人影はまあまああった。
ちなみにこの街での春休み期間は四月の中頃、十日ぐらいまでだ。
「確かに。あのままいても無駄でしたし正直に言うとありがたかったです。それと先輩、敬語使いましょうよ」
「……同意」
「お前らテンション低くね? もっと上げてこうぜ、いや張ってこうぜ、隊長この後どーします?」
俺たちの言うことを聞かず、別の話題に変えてしまった。
テンションは上げる、でなく張るの方が正しいと言うことを知っていたり、無駄なところで賢い人だ。
「ふむ、今日は訓練も会議もないから解散だな。二日後、門が開く忘れずにな」
「りょーかいです。それじゃあまた明後日ってことでさよならー」
自分から質問しといて、返事を最後まで聞かないうちにどこかへ走り去っていった。
「なら……私も……帰る」
もう一人の霧立さんも帰宅発言。まあ、俺も帰るつもりだがな。
「それじゃあ俺もちょっと用があるので帰らせてもらいます」
「気をつけて帰れよ、じゃあな」
隊長に挨拶をしてから本部を出るために霧立さんと一階まで降りる。会議室は四階だ。
隣には、ゲルトナーの中で数少ない同級生で同じ学園に通ってる霧立 咲がついてきている。
いつもフードをかぶっていて、あまり喋ることもない。本人曰く、めんどくさいそうだ。
俺も出会った頃は話す必要のない人に分類されていた。あまり話さない、そういう理由で静かに階段を降りきって、そのまま分かれた。
ここから自宅に帰るまではバス停二つ分の距離。まあ時間もあるし散歩がてら歩いて帰るか、そう思い歩きだそうとした時だった。
急に頭の中に声が聞こえて、いや響いてきた。
〔おーい、今大丈夫?〕
〔あ、文目? てことは、これが言ってた意識会話か。しゃべってないのに声がするのって変な感じだな〕
〔まあ、はじめのうちは誰でも思うわよ。それより今周りに人っていない?〕
〔何で? もしかして俺、独り言言ってるやつになってるとかじゃないよな〕
少し心配になって周囲を見渡したが、こちらを気にする人はいないよう。
だって、今いるのはゲルトナー本部の前。
顔見知りも多いから、後々言われたときに困ると思ったからだ。
〔違うわよ。ボーッと立ってるように周りから見えてるだけ、っていうか周りに人はいるの、いないの?〕
〔こっちを見てる人はいないけど〕
〔なら大丈夫ね〕
そう聞こえた瞬間、腕輪がチカリと光ったかと思うと、少し前の空中から光とともに文目が現れた。ふわっと地面に降りてきた彼女は、淡い紫色のワンピースっぽい服を着ていた。
「待った?」
「待ってないけど、あれ本当に出来るんだなと思っただけ」
文目から聞いていた瞬間移動かと少し考えて思い出した。
何でも魂だけを移動させるとか空間を縮めるとか言ったが、そっちはよく覚えていない。
姿は同じでも、人間と植物人はやっぱり別の生物なんだと実感させられる。けれど、こうして普通にいたら十人中十人全員が彼女が植物人だと気づかないだろう。
まあ、髪や瞳の色に違いはあるけどそれだけの違いだ。
「それで、急に出てきて何かあったの?」
「んーと、街案内でもしてもらおうかなーて思って来てみたの。それで今から大丈夫?」
少し上目遣いで頼んでくる。うん、今まではハッキリとしてた分かわいい。
ちょうど散歩でもしようとしてたし時間もあることだ、友好関係を築くという点でも一緒に町を歩くのも悪くないと思う。
「ああ、予定もないし俺も何しようか考えてたとこだったから街案内でもするよ。ようこそ人の街へ、て感じかな」
「フフフ、面白いこと言えるのね。それじゃあ案内よろしくガイドさん!」
そう言いながら笑いながら俺のジョークに返してくれた。どうやら楽しい街案内になりそうだ。
次回
アヤメと日々野がデート!不穏な影も・・・ 乞うご期待!




