8,第一回作戦会議
「それじゃあ第一回どうやったら戦いが終わるか会議を始めます、何か案ありますか、ハイ日々野君」
まさかのいきなりかよ。
「えっと、前提としてこっちサイド、人間は植物たちとはやっていけないと思っていると思う。俺みたいな思想を持った人は皆捕まってる、反国家的思想とか言われてさ。
だからまず、味方はいないと思っといたほうがいいってことと、やるならこの都市の人全員の考えを変える方法ぐらいしかないってことかな。でもこの方法結構無理があると思うんだけど」
三年と少しの間いろんな考えがあったがそれを実行できなかった。それは、同じような人が全員捕まっていったから、実際は怖かったのもある。
いつの間にか俺が間違ったことをしているんじゃないかと思ってもいた。けれどこのことを諦めることは、不思議と出来なかった。
「私はこの町のことを全くと言って程知らないから、そういう考えを変えることは同じ人間のあなたに頼みます。もちろんできることは協力するけど。こっちの方は、一応聞いてきたけど大変としか言えないことになってるの」
「というと?」
合いの手のように一声かけると、ため息を吐きながら続きを話す。
「簡単に説明すると、勢力が二つに分かれちゃったの。今までと同じように森を守るためだけに戦おうっていう保守派と、これ以上人間の好き勝手にさせないためにこちらから攻めてしまえっていう過激派。
もちろん、私は前者の保守派だからそっちの意見しか言えないんだけど、こっちに戦う意志はないってことは確かだと思ってる。だから人間側の考えを変えるところから始めるべきっていうその案でとりあえず行くわ!」
「その案って無理があるって言ったよなあ、俺の負担が大きいというかどんなことを調べてきたらいいんだよ!」
決まったかのような強めの口調でビシッと指をさしてくる文目につい反論してしまう。
まったくふざけたような意見だ。今この都市にいる人の中心は聖王会であり、皆がそれに従っているような状況。
それに対して、真っ向から否定する意見を受け入れさせるなんてことができる人は、いないだろう。
「ていうか、そんな全員の考えを変えるようなことがこんな街にあるわけないだろう。歴史なんてものも四年しかないし、俺に説得するなんて役が向いてない」
「何馬鹿なこと言ってるの?」
「いや、だから説得すること自体難しいんじゃないかって」
「だから四年っておかしいんじゃない。少なくとも十五年ほど前から私たちは戦ってるけど。いくらこの街を知らないって言ってもこれくらいは知ってるわよ。もしかして騙そうとしてる?」
何を言ってるのかわからないのはこっちの方だ。確かに四年前、俺たちがここに来たとき、ビルやライフラインなども含めて街が出来上がっていた。
その時に誰が言っていたのかのかわからないが、神によってつくられた、というのでなぜかみんな納得していた。
だが、もし彼女の言うように俺たちの前にこの街に人がいて、ここで過ごしていたとしたら……。今までの常識が変わってしまうようなことを言われて判断が鈍る。
それこそ、何が本当かわからず唯一の協力者を疑ってしまいそうなほどに。
「そうは言ったけど、その反応を見る限りほんとに知んなかったみたいね。疑ってごめん」
考え込んでいたせいか、文目の言葉にビクッと体が跳ね、反対側に座る文目は少し心配そうにこっちを見ている。
今の俺の表情はそこまで暗かったのだろうか。それとも、文目が嘘を言っているのかもと疑った俺が出ていたのかもしれないと思い恥ずかしくもなる。
「いや、俺の方こそごめん。大丈夫だから」
自分自身を落ち着けるために机の上のコップの中身を飲んでから説明する。
「一応言っとくと、俺の周りの人とか学校の教科書とかには四年前にこの街にいる以前の記憶はもちろん資料なんかもない。けど、文目の言うことが本当ならこの街の中の誰かが俺たちに何か隠してるんだよな」
「そういうことになるから、明日そのことを調べてきたらいいんじゃない?」
先ほどまでの心配そうな顔からもう切り替えたのかはっきりとした口調に戻っている。
安心感と少しの不満から俺も調子が戻ってきて言い返す。
「だから、そういう重要なことを秘密にしているのを暴く的なことが必要なんだろ。それをどこで探せばいいんだよ」
文目はそれに対しての返答はせずに急に席を立ち、窓のカーテンを開ける。
外は、すでに夕焼けが差し込む時刻。太陽が壁の向こうに沈んでいくのが見えている。
「今日この街に来るのは初めてだけどある程度の事は知ってるって言ったでしょ。それに加えて日々野が帰ってくるまでの間にこの街を見てたら分かったんだけど、あの大きな建物がこの街をまとめてる聖王会でしょ。案外近いじゃん」
ベランダから街を一望すると、全体の中央、要ともいえる場所に位置しているひときわ目立っている巨大な建物。神殿や教会というよりも中世の城を思わせる外観であり、この街の政治や司法などのありとあらゆるものを取り仕切る中枢機関。
だいたい、いや確実に文目の考えていることが分かってしまった気がする。
「あー、確かにあそこだとどんなことでも隠せるし、正しいことにしてしまえるけど、簡単に入れな上に聖王会のメンバー以外は奥までいけないことになってんだけど」
「なら仕方ないわね、勝手に忍び込むしかない!」
夕日に照らされながらニヤリといたずらを思いついたかのような笑みを浮かべて、さも当たり前のように言って見せた文目とにため息を一つつく。
「無理って言っても無駄なんだろうしコツコツやってこうか。こうやって同じ想いを持ってた相手が文目でよかったと思うよ。改めてだけど、これからよろしくな」
すこし照れくさいけど自分自身へのけじめも込めて背を向けて街を見ている文目に言っておく。
言われた文目の方は、街を向いたままで少し間を開けてそれに答える。
「私の方こそ待ちに待ってた協力者が日々野みたいにちょこっと抜けてる人でよかったと思ってるよ。まあ、こちらこそよろしくね」
日々野は少しふざけたように言われながらも大体は同じおもいだったことを嬉しく思った。
文目の方も夕焼けのせいかほんのり朱に染まった頬に微笑を浮かべていた。
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どこかの地下室なのだろうか。
小さなランプの灯のみが薄暗い部屋を照らしていた。かすかに照らされた壁の棚には、生き物のホルマリン漬けや黒々とした何かの頭蓋骨らしきものが見える。奥の暗闇からは、あきらかに人の物でないうめき声がしている。
秘密の実験室とでも言えるその部屋で、唯一まともに光がある一角の机に人影が一つ。
「くそ、何でどれも成功しないんだ。 何がダメなんだ、俺は選ばれた天才だぞ‼」
いらだった声と共に机の上にあった物を払い落とし、ペン立てや写し書きのある資料が床に散らばり音がなる。何日間も睡眠や休息を取ったりしていないのだろう、目は血走り荒れた頬を赤く染めて憤怒の色を表していた。
とある建物の地下室、どれだけ叫んでも気づいた人は、気にかけることなくいつものことと通り過ぎて行くだけ。
この男が他人と関わること嫌っていることを、ここの住民は、皆知っており大事な用があるとき以外は立ち入ったり関わったりしない、そのはずだった。
「やあ、困っているようだね。 手を貸してやろうか?」
どこか馬鹿にした口調でかけられた言葉にさらに男の顔が朱に染まる。
「誰かは知らないけどなあ、困ってるか、だと俺を馬鹿にしてんのか」
手に握られたペンを振り上げながら侵入者の方へ振り替えった。だが、侵入者の顔を見てヒヤリとなる。
「みんなの中で君が一番進んでそうだからボーナス持ってきたのに、いらないのそれ」
ドサリと重そうな何かが入ったクーラーボックスが足元に投げられた。
怒りは収まっていないが、態度を少しマシにしてクーラーボックスのふたを開ける。
「ほう、これは使えそうだ」
感想を一つ言い顔を上げたそこにはもう、侵入者の姿はなかった。まるで白昼夢のような不思議な感覚だが、その箱がこれは、現実だと物語っている。
男は立ち上がると笑みを浮かべながら、荷物とともに奥の暗闇へと消えて行った。
残り二十六日
次回
ゲルトナー戦闘班第十三番隊を紹介。一応二人、名前が初登場!
読んでもらえたら嬉しいです。




