第三記 仲間
デルトル爺さんに助けてもらい牢からの脱出を果たしたナユタ。彼はセリナという人物に出会い、少しづつ未来への希望を持ち始める
まずは出口を探そう。出口を探して脱出すれば糸口が見つかりそうだ。いや、待て、俺が居なくなったら誰が皆を救う?俺が助けなければまた今日も1人、また1人と死んでしまう。
その時、女性の泣きじゃくる声が聞こえた。
「やめてください!娘だけは!私を先に!」
「お前には用がない!そいつをよこせ!」
「お願い…この子は私の"希望"なの!」
その声は俺の心を掴んだ。あの爺さんも言っていたじゃないか、人間は希望を捨てた瞬間に、それで終わりだ。すると俺は、勝手に声を出していた。
「やめろ!お前たちは、何故そのようなことをするんだ!人の生きる希望を奪うやつは…許さない!」
言ってから後悔しても遅い。何せ俺は奴隷の身でここから脱走するために爺さんに…
いや違う、爺さんは俺に最後の"希望"を託したんだ。
「おい!早く仕事に…お前、脱走者か?」
「お前に言う義務はない。」
目を閉じて気の流れを意識する。すると目を閉じているのに相手の動きが読めるのだ。
壁を壊して大きな岩を創り出し道を塞ぐか、いやそれはだめだ、埋まってしまう。そうだ相手の武器を分解してこちら側で剣に再構築するイメージを浮かべるんだ。
気がつくと俺の手には剣が握られていた。
「お前が何をしようが勝手だが、もう誰も傷つけさせない!」
その瞬間剣を持った俺の体は動き出し、宙を舞う。剣は兵士の体を貫いた。
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「大丈夫か?」
「あ、あなたは?」
「俺の名前はナユタ!よろしくな!」
「いや、そうではなく……何故あなたはここに?というかあなた、誰?」
「あぁ、俺はただの奴隷だ。いや正確にはだったヤツだ。でもな、俺はある爺さんに出会ったんだ。そいつから希望があるうちは諦めちゃいけない、っていうことを習ったんだ、だから俺はちっとばかり足掻いてみよう、って決めたんだ」
「お母さん、私、助かったの?」
「そうよ、よかった、本当によかった……」
「って聞けー!結構カッコよく決まったと思ったんだけどなぁ……」
「でもお母さん、またあの人たち来ちゃうよ?」
「そ、それは…」
「じゃあ、俺と一緒に来ないか?俺とともに少しばかり足掻いてみないか?
どーせあいつらに捕まったら、殺されるんだ、せっかくだったら悔いのない生き方してみないか?」
「この子は死にません!だから、私の娘を危険な目に遭わせることは…」
「お母さん、私、この人を信じてみようと思う。」
「あなたまで……」
「だって、この人も奴隷の人でしょ?なのに私たちを助けてくれたのよ」
「でもあなたが傷ついたら……」
「大丈夫よ!私だって強いもん!」
「あなたねぇ……」
「私の名前はセリナ!よろしくね!お兄さん!」
守れるかわからないし、もしかしたら死ぬかもしれない、けれど希望のために戦ってみよう。