第二記 確かな希望
「よく出来たな、さすがは私の認めたヤツじゃ。」
そうデルトル爺は言い、俺の頭を撫でる。
いや待て待て、仮にも爺さんは目が見えないんだ、どうして目が見えるかのような行動をするんだ、あんたは。
「それでは、私の魔法、創成術を教えよう」
「そうせいじゅつ?なんだそりゃ?」
「簡単に言えば物の組成を組み換え、物を再構築する技じゃ」
いや、全然簡単な説明じゃないが、要するにものを創り出せる技ってとこか
「今言った通り、現存している物からしか作れない。無から創り出すことはできないのじゃ。それだけは留意しておきなされ。」
「お前は無意識にエネルギーの流れを意識出来ていたが、それは危険だ。例えば石だったら、石の持っているエネルギーを他に渡すイメージをする。しっかりと意識した魔法ほど、良い魔法になる」
俺は目を閉じた。しっかりと意識するんだ、流れを意識して…
「おい!デルトル、という者はいるか?」
突然なんだ?うるさいな、あの爺は、
いや、違う。
あいつらだ。俺は忘れていた。いつもの「お迎え」がやってきたのだ。
いつもの俺なら、今日は自分じゃなかった、と安堵していた所だろう。しかし今は違う。俺は、俺の師を、守らなければならないんだ。でも、俺はやはり抗えない。強い者は強い、弱い者は弱い。それは運命だ。しかし遅かった。そう考えた時には既に気の流れを意識していた。
「こうすればいいんだろう!爺さん!気の流れをコントロールすればっ!」
目を開けると目の前で銃を持った兵士が倒れていた。
「お、おいお前、お前さんは今何を…」驚愕で倒れている爺を横目に倒れている兵士に言い放つ。
「強くても、弱くても、支配者でも、奴隷でも、常に希望を捨てないものが勝つ!俺は今から、この死のループを断ち切るんだ!」
「爺さん、ありがとうな、あんたのお陰で自信が持てたぜ!」
そう言った瞬間、手を掴まれた。そして爺は、その濁った目で俺を見た。
「お前の魔法は素晴らしい。今お前は創成術を応用し、兵士から私への気の流れを意識した。これは私にも出来ない、素晴らしい魔法じゃ。でもな、少年よ、大切なのはお前の仲間を思う心じゃ。大切な人を守りたいと思ったとき、人は強くなれる。希望と心を大切にするんじゃ。」
そうして爺は俺の背中を強く押し、一言、「生きろ」と言った。すると俺のいた牢獄の中に兵士たちが流れ込み、爺を取り押さえた。
気がつくと俺の体は宙を浮いていた。そして俺は泣いていた。大切なものを失う悲しさを俺は人生で初めて経験した。今まで「死」というものがあまりにも近くにあったせいなのか、俺は慣れていたんだ。俺はふと目を牢獄へ向けた。
しかし俺が元いた牢獄には、誰も居なかった。