第一記 抗う者
初めての投稿作品です。拙いところがあるかも知れませんが暖かい目で見てやってください。
連載予定です。
今度は俺が「消される」。俺の周りにいた人だってそうだ。使い物にならなくなった奴は消される、というのはここでの当たり前のルールだ。
「おいデルトル爺さん、明日は誰になるのかなぁ?ここにいるヤツら全員、やっぱ消されんのかな?」俺はよぼよぼの窶れた爺さんに聞く。耳が遠いのか、爺さんからの返事はない。「おい!爺さん!聞こえてんのか!」やはり返事がない。そしていつもの、まるで生気のない、静まり返った牢獄の空気に戻る。
「少年よ。」いきなり爺さんが口を開く。「変えたいのか?」
「は?」何を言ってるんだこの爺さんは、俺らは明日殺されるのかもしれないんだぞ。
「お前はどうしたいんじゃ?」
「お、俺は」
「どうせ死ぬんだったら、皆のために、希望のために動け。」
「い、いや俺はまだ死なないぞ!」
「そんな保証どこにある?人はいつ死ぬかわからないじゃろ?少しでも希望があるならば、そちらの道を選ぶ。人として、当たり前じゃろ?」
再び静寂が訪れた。確かに俺は死にたくない。でもただそれに抗えず、あるがままに"ソレ"を受け入れているだけだ。
「お前には素質がある。」
「何のことだ?」
「お前は魔法が使える素質がある。見えるんじゃ」
「は?いや、爺さんは目が見えないだろ?」
「いやいや、そうではない。わしは気の流れが見えるんじゃ。わしもなぁ、昔は凄い魔法使いだったんじゃぞ?」
「いや、待った待った、そもそも魔法ってなんだ?」そうだ、魔法魔法と当たり前のように言うが、そもそも魔法なんて存在するのか?
「魔法を知らないのか、今の者は。では少しこの石を持て。」
何をするつもりだ?魔法なんてあるはず……
あった。突如のして丸かった石がぐにゃりと曲がり、皿の形になった。
「久しぶりじゃのう、魔法というのは、私をいつでもわくわくさせてくれる」
いや、待て待て待て、これは夢だ、そうだ夢に違いない。
「そう、そして、お前にはその魔法を使う素質がある、ということじゃ。それも凄まじい程の才能がある」
「しかし魔法は魔法使いに教えてもらわなければ正しく扱うことができん。お前に少し魔法を教えようか」
よく分からないが、とりあえず従っておくか。
「まずは空気を大きく吸う。大地の息吹を感じ、自分の理想とする形を思い描くのじゃ」
そう爺さんは言うと俺の肩を優しく叩いた。
あれは俺がまだ小さかった頃、ここに来る前だ。俺には暖かい家族がいた。そして両親は俺を色々な場所に連れて行ってくれた。目を見張るような絶景、美しい花々が咲き乱れる庭園。そうだ、おれが理想とするのは……
ふと目を開けると目の前には石でできた花畑が広がっていた。
できた。本当に出来てしまった。目の前に広がる石でできた無機質な花畑を見ながら、俺は決心した。世の中の不条理な事に立ち向かうことを、そして自分の手で自分自身を、皆を救うことを。
そこは今まで俺が見ていた絶望しか無かった薄暗く生気のない、静かな牢獄では無かった。そこには少しばかりの「希望」があった。