5話 港町スピネル
アビスの嫌な予感というのは的中した。
王都に着いた瞬間に、ライラックを探し回る兵士。
「ライラ...やっぱ行かねぇ方がいいんじゃねぇか?」
アビスが言う。
「どうしようかな...ここを搔い潜らないと...。」
「ライラ、聞いてるか?おーい。」
アビスが呼びかけても応答しない。意識は完全にトライヴに向いているようだ。
「ライラ!話を聞け!」
「!?ごめん...なに?」
「はぁ...先に言っておく。今後もおんなじ状況が続くようならオレはトライヴにお前を突き出す。」
ライラが驚いた表情でアビスの事を見る。
「なんで!?」
「オレが死にたくないからだ。死ぬならお前ひとりで死ね。前も言ったよな?今のオレにはライラが必要不可欠なんだ。仮にお前がここで死んだらオレは今後どうすればいいんだ?どこにも行けないし何もできないんだぞ?」
「アビス...ごめん。もっと冷静になるよ。」
「頼むぜ相棒。頼りにしてんだからさ。」
冷静さを取り戻すライラ。
「さすがにこのまま王都に乗り込むのはまずい。王都は後回しにしよう。さっき兵士達の話を小耳にはさんだんだが、この先に行けば港町スピネルという場所があるらしい。そこで休むのも手だぞ。」
「スピネルか...私の知り合いがスピネルにいるからそこで協力を仰いで見る?」
「いや、たぶんだけどあいつがスピネルにいるだろうから大丈夫。」
「あいつ?」
「んまぁついてくればわかるさ。居なかったらライラのほうの知り合いに頼もう。」
「了解。」
王都パシフィスから5分もしないとこに、港町はあった。
港町スピネル。武具と食料を中心に各地に物資が行き渡る為、要の港でもある。
「へぇ。結構近いんだねぇ。」
フェリスが言う。
「とりあえず宿を探すか。割と大事だし。」
「お、あった。さてさて、いるかなあいつは。」
そう言うとアビスはある人を探し始める。
「お、居た居た。久しぶりだな、フェリス。」
なぜフェリスがいることをアビスは知っていたのか。
それは、帰路へ向かう前に「困ったらスピネルって港町の宿屋にいるからそこに来なさい。」と言われたからである。
「よっす!アビス!...ってお前はァ!」
「ど、どうも。」
「なんでライラックがここにいるんだよォ!ふざけんな!」
フェリスがその場で声を荒げる。
「落ち着けフェリス。まずは話を聞いてくれ。」
「旅に出ようと誘われたのは聞いてたよな?」
「うん。で、私はそのまま帰った。」
「その後、ライラが生まれ育った町に行ってそのままパシフィスに向かおうとしたら、王様がライラを連れて行こうとしていたわけで。」
「それでなんやかんやで今ここにいると。」
アビスが説明した後、フェリスが少し考えてから言う。
「ライラック...だっけ。盗賊だけど、あんたはいいやつなのはわかった。あの時はごめんね。」
「い、いや!私こそあなたの物盗んだりして...ごめん。」
フェリスは馴染んだかのように見えるが、ライラがまだぎこちない。
「ライラ...お前ぎこちなさ過ぎな。もっと楽にいけ楽に。」
「そうは言われても...。」
「んじゃこれでどうだ。」
そう言うとアビスは、ライラの手とフェリスの手をつながせる。
「ほれ、これでどうだ。」
「ちょ...アビスッ!いきなりなにすんの!」
フェリスが顔を真っ赤にして言う。
「お、フェリスにもかわいいとこあんな。よしこれで二人とも仲良しだな。」
フェリスとライラ、それにアビス。この三人で王都パシフィスへ乗り込む作戦会議が始まる。




