10話 殺意溢れる女
そんな心配とは裏腹に、別の心配も過っていた。
フェリス達裏から潜入側の不安。
(あいつらならミスはしないだろうが...やはり不安だな...。)
と、思いながら進むアビス。
そんな事を考えていたら兵士達が見えた。
「一回止まるぞ。恐らくはここがパシフィスの居るとこだ。」
「まだフェリス達が着いてない。一回待つぞ。」
「了解。」
(あいつら...大丈夫なのか...?)
と思うアビス。
「意外とこっちってきついねぇアズ。」
「そうだなぁ。んまぁなんとかなってるうちはいいけど...。」
「正直言ってジリ貧だよね。」
アビスの不安は的中していた。
「来るぞ...!フェリス!」
「アズ...近接出来たんだ!?」
「どっかのバカのせいで近接やる羽目になったの。別に出来るからいいけどさ!っとぉ。」
そんな事を言いながら兵士をなぎ倒していくアズラエル。
「うわぁ...。アズつっよ...。」
「女の子に対してその言葉はどうかと思うぜ?フェリス。」
「その言葉しか思いつかなくてね。ごめんよ。」
「んまぁいいけどさ。さっさと倒してアビス達に連絡しないと。」
そう言いながら走り抜けていくアズラエル。
アズラエルを追うフェリス。
「見えてきたな。さて、そろそろ片付けるかこの兵士共。フェリス、ちょっと離れてな。」
「何する気よ。」
「ンまぁ見てなって。」
そう言った瞬間、アズラエル足元に模様が出てくる。
「第一エンチャント...パトリオットアルカード...!解放!」
大地が揺れ、地割れが発生する。
「行くぜェ...!」
一瞬でアズラエルが消え、その場を囲んでいた兵士達が消える。
「え...?何が起きたの...?」
「ん?オレが一瞬で消した。」
「...ん?それ本気で言ってる...?」
「そうだが?」
それ以上は何も聞かない素振りをするフェリス。
「さて、アビスに連絡をするか。片付いたし。」
そう言いながら狼煙の準備をするアズラエル。
「アズラエル...魔法より近接のが強いんじゃない...?」
「オレ強いって言われるのが嫌でバフメインの魔法になったのよ。正直近接のが得意なのは間違ってないけどね。」
「そうなんだ~...。」
「よし、狼煙を。」
「了解。」
アビス側から狼煙が確認できた。
「行くぞ、ライラ。」
既にライラはいなかった。
「あいつ...あんだけ言ったのに...!」
ライラを追いかけて本気で走りだすアビス。
(どこへ行ったんだ...ライラ...!)
「待たせたね。トライヴ。」
「おや?ボディガードの彼はどうしたんだい?」
「アビスはボディガードじゃない!私の大事な仲間だァ!」
(まさかアイツ...!一人でトライブの元に...!?)
「その殺意を隠しきれればまだキミにも勝ち目はあったのかもしれないな。」
「うるさい!!お前だけは殺す!」
「正直、キミ程度の力じゃ私には勝てない。」
手を振った瞬間、ライラが吹っ飛ぶ。
「ぐぁっ...くぅ...。」
「だから言っただろう。キミ程度じゃ勝てないんだ。」
「う...うるさい...!お前だけは...!私が殺さないとダメなんだァ!」
ライラが走りだすと、一瞬で消える。
「ほぉ。少しは強くなったみたいだねぇ。だが。」
「ぐぅ...!まだまだァ!」
(やっぱりだ...!あいつなんで一人で...!)
フェリスとアズラエルが合流する。
「アビス、まだ行っちゃだめだ。」
「なんでだよ!!このまま放置してたらライラが死んじまうだろ!!」
「あのライラの目を見てみろ。アレは周りが見えてないんだ。アビスが行ったら逆に殺られる。」
「だけど...!このまま見てるだけじゃ...!」
「ンまぁ落ち着けっての。何のために魔法を教えたんだお前に。」
「...!」
アビスが落ち着きを取り戻し、ライラのサポートとしてバフをかけようとする。