プロローグのプロローグ
魔法使い
――…神から魔法という力を与えられた選ばれし者達。
彼彼女らは200年前に誕生して以来様々な形でこの世界に貢献してきた。
魔法使い達は日々鍛錬し成長することで様々な魔法を覚えることができる。
けれど彼らには生まれつきその身に宿す魔法がある。
この生まれ持っての魔法を、人々はこう呼ぶ。
神からの贈り物―――…
「ギフト」……と。
‐‐‐
小さい頃は魔法を練習するのが楽しかったです。
魔法の才能がない僕にとっては正直練習はとてもきついものでした。
自分が自分に課したものなので途中で投げ出したい気持ちに何度もなりました。
けれど、遠くにいて僕に背を向けている魔法がある日突然僕に振り向いてくれるのです。
そして、練習を重ねれば重ねる程、徐々にこちらに近付いてきてくれるのです。
そして、ある日魔法が僕の目の前に来て僕の手を握ってくれるのです。
その瞬間、僕は魔法と友達になったような気持ちになります。
それが小さな僕にとって魔法を覚えた瞬間でした。
魔法を覚えていくことは友達が増えていく事と同義なのです。
だから、練習して魔法を覚えるのがすごく楽しかったのです。
新しい魔法を覚える度に両親に報告すると、彼らはとても嬉しそうに僕の頭を撫でてくれました。
母の細くて長い手は僕を慈しむように柔らかく
父の太くてゴツゴツとした手は僕を労うように力強く
僕の頭を撫でてくれたのです。
「すごいわ!とっても頑張ってたものね」
「お前は将来良い魔法使いになるぞ~!」
自慢の息子だと優しい笑みを向けてくれました。
それは僕にとって最大のご褒美でした。
しかしある日から…その優しい笑みが僕に向けられることはなくなりました。
あの細くて長い手が…
あの太くてゴツゴツとした手が…
僕の頭を撫でることはなくなりました。
その代わり、僕の頭の上に乗せられたのは知らない男性の手。
父と同じ性別なのにその手は母のように細い手でした。
けれども、妙に骨ばっていて子どもの僕は不思議な手だと思いました。
その人はまだ小さな僕にこう告げたのです。
「君はもう、強くならなくていいよ」
それは許しの言葉のようで…僕にはどこか脅迫じみた言葉のように聞こえました。
「……どうして…ですか?」
強くなれば、魔法をたくさん覚えれば、両親は褒めてくれました。
強くなることは良い事のはずなのに、と僕は男性が言う言葉の意味が分かりませんでした。
男性はただただ冷たい笑みを僕に向けます。
「君は弱くなくてはいけないんだ。…それが君の強さにつながる。人のためになる」
やはり男性の言っている事は分かりませんでした。
何故、弱い事が強い事につながるのでしょう。
けれども、その頃の僕は、誰にも必要とされない存在でした。
だから男性が言った、「人のためになる」という言葉は、僕にわずかな希望を与えてくれました。
それ以来僕は、強くなることを……放棄しました。