第一章 6
「下僕ってどうしたらなるの?」
月の下、人形のようにあどけない貌で少女は言った。
月光色の髪も白い肌も、月の光に溶けそうに見える。
ドウマは眼を細めて小さく笑った。
「知らずに持ちかけるかな」
「だって」
「簡単に言えば、どちらが主人であるかを決めて下僕側が誓約すればいい」
「簡単すぎるよ」
「簡単なものだからさ。単純なものほど効力が強い。言っとくが、どちらかが死ぬまで契約は解約できない」
「死ぬまで……」
「死ぬまでおれはおまえのものだ」
「素敵――」
わあ、と子供のように声をあげると、少女は、にこり、と笑った。
ドウマは鼻を鳴らすと、少女に左手を差し出した。
「手を」
少女が右手を伸ばしてくる。その手首を掴み、自分の胸に導いた。少女の掌を心臓の上に押し当てる。
「名前は? シアと言っていたが?」
「シア・ラヴィア――」
「愛されそうな名前だな」
そう言うと、少女――シアは嬉しそうに無邪気に笑った。
その貌を見つめてから、
「始めるぞ」
宣言した。
われドウマオーマ
びぃん、と空気が震えた。
周囲の草がざあと動き、倒れ伏している影達の身体でばちばちと火花が散る。
シア・ラヴィアをわが主とし
下僕となることをここに誓約する
「返唱しろ。おれを下僕として宣言すればいい」
「え、えと……」
オーマはシアのものだよ
シアの下僕だよ
幼い宣言に苦笑したが、契約は成立したようだ。
シアの返唱が終了すると、シアの掌の下で心臓がどくりと動いた。