第四章 14
眼を開けると、オーマの貌が見えた。
首をひねって後ろに眼を向けている。漆黒の眼は何を見ているのかわからない。
「オーマ――」
声をかけると、オーマの眼がシアの方に向いた。漆黒の眼に光は無かったけど、どこまでも深い暗闇のような眼だったけど、表情は一瞬で優しくなった。
「寝ていていいよ」
「寝ていて欲しい?」
オーマの眉が困ったように動いた。
寝ていて欲しいのかな。
眼は覚めたけど。オーマがそうしていて欲しいなら――
「じゃあ寝てる」
「ああ。おやすみ」
オーマの眼が細くなった。
笑ったのかな。ほっとしたようにも見える。
オーマが望む答えを返せたのなら。シアはうれしい。
くすり、と笑った。オーマが少し不思議そうな貌をする。
たぶんオーマはシアが何も考えていないと思っているのだと思う。
オーマはシアを子供あつかいするけど。
シアはオーマが思うよりもオーマのことを考えている。
オーマは何を好きだろうかとか。
どんな時に笑うのだろうかとか。
好きなひとのことを考えるように。
愛しいひとのことをおもうように。
自分のことよりも。オーマが大事。
初めて会った時から。もしかしたら会う前から。オーマが大事だった気がする――
どうしてかわからないけど。
でもそれ以上考えていられなかった。眠くなってきたから。
オーマの腕の中は温かくて――
眼を閉じると気持ちよくて――
眠りに落ちながらシアは思う。
シアはしあわせだよ――




