表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花鬼  作者: KATSUKI
32/132

第三章   2

 

「オーマ」

 シアが呼んだ。

 シャワーは終わったらしく、下着のようなナイトウェアを着ている。濡れた髪が人魚の髪のような艶やかな光を放っているが、残念ながら半分以上がバスタオルの中だ。

 シアはリビングを素通りして寝室に入った。

 マンションの全室がそうなのか知らないが、シアの部屋は部屋を区切る壁は存在するが、ドアが無かった。

 ソファから腰を上げ、ドウマはシアの後を追った。寝室に通じる矩形の入口で足を止める。寝室は暗く、リビングの明かりが矩形の形に寝室に差し込んでいるが、奥に置かれたベッドにまでは届いていない。

 シアはベッドの端に腰掛けていた。

 バスタオルはベッドの下に落ちている。

 白い腕。白い足。普通なら誘っていると見るが、シアの場合は微妙だ。

「キスがしたい」

 子供のように言う。

「モデルの契約で禁止されたんじゃなかったかな」

「人前では、と言ってたよ」

 くすくす、と無邪気に笑う。

「ああ。そう言っていたな」

「こっち来て――」

 言われるままにベッドに近づいた。

 透明な眼が幼い子供のように見上げてくる。

 ドウマは腰の位置で身体を折り、シアの唇に軽くキスをした。そのまま離れようとしたが、シアの手が上着の裾を掴んでいた。

「もっと」

 子供が飴をねだるように言う。

 あどけない貌はどこまで理解しているかわからない。

 苦笑しながら、シアの細い顎に指をかけた。

 シアの唇が、もっと――とねだった時の母音の形に開いている。

 その唇に今度は本気で唇を重ねた。

「ん――」

 シアが小さく声を洩らした。

 口づけたまま軽く体重をかけると、シアの身体がベッドに倒れていく。ドウマもベッドに乗った。左膝と左肘で身体を支える。

 シアの舌を捕え誘うように舌を動かすと、柔らかな舌が応えて動き始めた。

 甘い匂いが鼻腔を満たす。

 シアの吐息とシアの髪の匂い。シャワーの後なのに、シアの髪は蜜の匂いを放っている。

 シアの舌がついてこられなくなった。

 唇を離し、ドウマは身体を起こした。

「子供にはここまでだ」

「子供じゃないよ」

 ベッドに倒れたままシアが言う。月光色の髪がシーツの上に広がっている。

 放心したような幼い貌を見つめてから、ドウマはベッドから降りた。

「どこに行くの?」

 背後でシアが言う。

「屋上で寝る。――おやすみ」


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ